ナッジ理論ってなんだ?人々の行動を促す力(1)
公開日:2021.07.29 更新日:2021.08.30
夏休みの宿題はギリギリタイプ?
皆さんは夏休みの宿題を早めに終わらせる人でしたか。それとも、夏休みの終わりギリギリまで終わらなかった人ですか。私は、「やらなければ」と思いつつ、ギリギリになってしまう怠け者でした。
皆さんもそうだったという方も多いかもしれません。実は、これは単純に怠け者ではなく、人は未来の大きな利益より、目の前の小さな利益を重視するという心理傾向になりやすく、行動経済では「心理的バイアス」といいます。わかりやすい例は、お酒やスイーツ、たばこは健康のためによくないとわかっていてもやめられないということです。
このように、人は常に合理的な判断に基づいて行動をするわけではないということです。(合理的に判断すれば、健康に良くないものはやらない)この性質を理解したうえで、好ましい行動へ促す「ナッジ理論」が健康づくり分野で注目を集めています。今回はこのナッジ理論についての解説とリハビリでの応用について考えてみたいと思います。
ナッジ理論とは
ナッジには「肘で軽くつつく」という意味があり、ナッジ理論は「人々に選択する余地を残しながら、よい方向に行動を誘導しようとする手法」、「知らず知らずのうちに人々に行動を促す仕組み」と説明されています。2017年に行動経済学者のリチャード・セイラー氏が「ナッジ理論」を提唱し、ノーベル経済学賞を受賞したところから注目を集めています。わかりやすい例で、ナッジ理論を説明します。
皆さん、スーパーや駅のホームで列に並ぶ際に、足跡のような足形のマークが床に書いてあるのを見かけたことがありませんか。特に、コロナ感染症が流行し、ソーシャルディスタンスを保つために、様々なところで見かけるようになりました。この足形は、特に「ここに並んでください」、「距離を保ってください」と説明をしなくても、無意識に人はそこに並ぶようになります。これがナッジ理論の一例です。
もう一つ有名なのが、男子トイレの小便器に描かれたハエです。オランダのスキポール空港では、男子トイレの小便器にハエを描くことで、「ついそのハエをめがけて用を足したくなる」ようになり便器周辺の汚れが8割減少し、清掃費を抑制できたとのことです。このように、ついついそれを選んでしまう、やってしまうというような促しがナッジ理論です。
ここで注意しないといけないのが、個人の選択を残すこと、強制してはいけないということです。あくまで、選択の自由は個人に委ねられることが重要です。
もう少しナッジ理論について、理解を深めるために、実際の現場で使いやすい手法のフレームワークとして有名な「EAST」をご紹介します。EASTとは、Easy(簡単)、Attractive(魅力的)、Social(社会的)、Timely(時間的)の略です。一つずつ見ていきましょう。
「ナッジ理論ってなんだ?人々の行動を促す力(2)」に続きます。
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参考
受診率向上施策ハンドブック「明日から使えるナッジ理論」.厚生労働省
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