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インフルエンザ(成人)の治療法2019.10.29

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セラピストプラス編集部からのコメント

インフルエンザの治療法について、小林治 杏林大学保健学部臨床検査技術学科教授・医学部付属病院病院管理部副部長が解説します。欧米各国では自宅安静が推奨されるインフル治療ですが、日本国内では、早期の社会復帰を目指すお国柄からも迅速診断と抗インフル療法が一般的です。小林先生は流行期の診療において、ワクチン接種歴、インフル患者との接触歴有無、咽頭所見で化膿性咽頭炎や急性鼻副鼻腔炎の所見に有無にかかわらず、上下気道症状の例には、インフル迅速診断キットの活用を積極的に推奨(※ただしノイラミニダーゼ阻害薬が有効とされる発症48時間以内であれば)しています。また「待合室感染予防」の観点から検査陰性であっても、偽陰性の可能性を疑いつつ、翌日検査の再受診を促すことは慎むべきだと明言しています。

インフルエンザは高熱,上気道症状,全身症状をきたし,時に生命予後に関連する脳症や呼吸不全の契機となりうることから,早期診断および対応が重要な呼吸器系ウイルス感染症である。近年は,インフルエンザの一部でも高熱をきたさない例が少なからず検出されており,インフルエンザ診療のgold timeを逃す可能性があるので注意したい。

▶診断のポイント
インフルエンザの診療について,欧米では軽快まで自宅安静を促すが,わが国では迅速診断と抗インフルエンザ療法により早期の社会復帰を目標とする点が異なる。背景には,わが国の経済性と平等性に優れた医療保険制度により,欧米に比較して受診アクセスが良好な点が挙げられる。さらに,学校保健安全法規則に定められたインフルエンザ出席停止期間の基準は,会社をはじめ出勤停止等の基準として広く認知されている。結果,診断と迅速な回復への社会的要求は高まり,特に担当医によるインフルエンザ診断には客観性が要求される。

現在,インフルエンザ迅速検査キットはイムノクロマト法を用いており,概ねインフルエンザ発症から6時間以上経過した時点で十分なウイルス量を有するが,当該検査(D 012・23 インフルエンザウイルス抗原定性)は発症後48時間以内に実施した場合に限って算定できるので,診療録の病歴にその旨を記載する必要がある。

▶私の治療方針・処方の組み立て方

インフルエンザの典型的な臨床像は,突然発症する高熱,咽頭痛や咳などの上気道症状や呼吸器症状,多関節痛などの全身症状とされてきた。近年,高齢者のB型インフルエンザに加え,A型インフルエンザでも腋窩37.5℃以下の症例が少なくないことが判明した1)。また,迅速診断キットの普及に伴い,インフルエンザ患者との接触歴の有無にかかわらず,化膿性咽頭炎や急性鼻副鼻腔炎,その他の呼吸器系ウイルス感染症に合併したインフルエンザもあることが判明した。そこで,インフルエンザ流行期のインフルエンザ診療においてはワクチン接種歴,インフルエンザ患者との接触歴の有無,咽頭所見で化膿性咽頭炎や急性鼻副鼻腔炎の所見の有無にかかわらず,上下気道症状の例にはノイラミニダーゼ阻害薬が有効とされる発症48時間以内であれば,インフルエンザ迅速診断キットの活用を積極的に推奨したい。ただし,検査結果の判断にあたっては迅速診断の結果によらず担当医が初診の時点でインフルエンザか否かを判断し,検査陰性であっても偽陰性の可能性があるから翌日検査のために再受診を促すようなことは「待合室感染予防」の観点から厳に慎みたい。

治療は,患者に対して安静と十分な飲水を指示するほか,自身のマスク着用による感染拡大阻止は完全ではないことを説明したい。また,担当医の判断により抗インフルエンザ療法,そのほか,必要とあれば消炎鎮痛薬を併せて処方するが,細菌感染合併の所見が見当たらないのに安易に抗菌薬療法を併用するのは慎むべきである。

▶治療の実際
抗インフルエンザ療法としてノイラミニダーゼ阻害薬のほか,キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬が選択できる。

一手目 :担当医がインフルエンザと判断した症例に対し,抗インフルエンザ療法として以下のノイラミニダーゼ阻害薬のいずれかを状況を考慮して選択する。つまり,吸入デバイスの自己管理が困難,また,呼吸器症状が強く換気不十分が推察されれば内服療法を,薬剤師管理下での吸入が可能であれば単回吸入の治療薬を選択する
タミフル®75mgカプセル(オセルタミビル)1回1カプセル1日2回5日間,またはリレンザ®吸入5mg(ザナミビル)1回2吸入1日2回5日間,またはイナビル®吸入粉末剤20 mg(ラニナミビル)1回2個1日1回(単回吸入)

インフルエンザ予防の基本はワクチンであり,予防使用は原則インフルエンザを発症している患者の同居家族等のうち65歳以上の高齢者,慢性呼吸器疾患または慢性心疾患患者,糖尿病等の代謝性疾患患者,腎機能障害患者等としたい。

二手目 :〈処方変更〉ゾフルーザ®20mg錠(バロキサビル マルボキシル)1回2錠1日1回(単回投与),または〈体重80kg以上の例〉ゾフルーザ®20mg錠(バロキサビル マルボキシル)1回4錠1日1回(単回投与)

腎排泄の寄与は少なく,また,Child-Pugh分類Bの該当する中等度肝障害でも薬物動態への影響は少ないことから,添付文書には腎障害や肝障害の例に対する用量調節に関する記載はない。ただし,本薬剤市販後にA型インフルエンザでPA蛋白質の38番目のアミノ酸変異(I38T)が発見され,特に小児における罹病期間短縮効果が低下することが報告されている2)3)。このような薬剤耐性の発現はB型インフルエンザではみられない。いずれ関係学会から何らかの提言があるかと思われるが,担当医はこのような報告をふまえた治療薬選択を行いたい。

三手目 :〈経口内服および吸入療法が不可能な場合,処方変更〉ラピアクタ®注(ペラミビル)1回300mg1日1回(15分以上かけて単回点滴静注)症状に応じて反復投与可

重症化のおそれがある例では1回量の上限600mgまで認められている。ただし,腎機能障害例ではCcr 50mL/分未満で200mg,30mL/分未満で100mgが上限である。

【二次感染が疑われた場合】
抗菌薬を併用するが,肺炎球菌,インフルエンザ桿菌以外にアスペルギルス等の真菌類を治療前に検査し,必ず検査結果をふまえた抗菌薬選択を行うことが重要である。

【文献】

1) Kawai N, et al:Influenza Other Respir Viruses. 2013;7 (3):448–55.

2) Omoto S, et al:Sci Rep. 2018;8(1):9633.

3) Hayden FG, et al:N Engl J Med. 2018;379(10):913-23.

小林 治(杏林大学保健学部臨床検査技術学科教授・医学部付属病院病院管理部副部長)

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出典:Web医事新報

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