半月板損傷でやってはいけないこととは?リハビリの内容や気をつけるべきことを解説
公開日:2024.02.04
文:伊東浩樹(理学療法士)
半月板損傷は、スポーツをする人に多く見られる傾向があります。しかし、スポーツを頻回にされていない人でも、日常生活を行うなかで膝の痛みを訴えて病院を受診すると、半月板損傷と診断される場合があります。
この記事では、半月板損傷の症状やリハビリの内容などについて詳しく解説します。半月板損傷と診断されたときにやってはいけないことを理解し、早期回復を目指しましょう。
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半月板損傷とは?
半月板とは、足の大腿骨と脛骨と呼ぼれる骨の間にある膝関節に存在する、クッションのような役割を持つ三日月型の形をした組織です。その半月板が、何らかの要因で徐々にすり減ったり、傷ついたりすることで周囲の組織に炎症が発生し、痛みを生じることを半月板損傷といいます。
スポーツをする人に多く見られますが、日常生活のなかで、階段の上り下りや、立ち座りなど普段から自然と行っている動作によっても生じることがあります。
半月板損傷の自覚症状は?
半月板損傷と診断される前から、自覚できる症状があります。
例えば、膝の曲げ伸ばしをした際に痛みが出る、それに伴って引っかかりを生じるなどの症状が代表的です。悪化すると膝に水が溜まり、強い痛みを生じることもあります。膝の可動に違和感を覚えた場合は、早めに整形外科を受診しましょう。
半月板損傷の治療
一般的に半月板は、血流が乏しく再生しないといわれています。基本的には半月板損傷は保存療法か、切除や縫合などの手術療法によって治療を行うことが多いでしょう。
切除であれば3ヵ月ほど、縫合であれば半年ほどの加療が必要とされています。また、その後はリハビリを痛みに応じて実施して本来の生活に戻れるよう治療を行います。
自宅でできる半月板損傷のリハビリ方法
半月板損傷と診断された場合、保存か手術か、いずれかの治療を行い、経過に合わせたリハビリが実施されます。一般的に行われるリハビリ内容を紹介しましょう。
筋力トレーニング
保存療法でも、手術療法でも、膝関節に痛みが生じないように、膝関節周囲筋のトレーニングは重要なリハビリの1つです。筋力トレーニングによって強化された筋肉が、膝関節を守ってくれます。
具体的には、大腿四頭筋という膝を伸ばすための大きな筋肉や、ハムストリングスという膝を曲げるための筋肉、それらに合わせて動く下腿についている下腿三頭筋など、膝関節周囲にある筋肉を動かします。単純に、イスなどに座って膝の曲げ伸ばしを行ったり、つま先とかかとを上げ下げしたりするだけでも、筋力トレーニングになります。
イスに座ったまま行えるため痛みが生じにくく、自宅でも気軽に実践できるでしょう。また、仰向けになった状態で膝裏に柔らかいボールを入れ、膝を伸ばしながらボールを押しつぶすような動きをする方法もあります。
本来であれば歩くだけでも筋力トレーニングになるのですが、半月板損傷の治療を妨げ、かえって痛みを招くおそれがあるため注意が必要です。歩行によるトレーニングを行いたい場合には、水中での浮力を利用するなど、膝関節に負担のない方法を選びましょう。
関節運動
どのような治療方法であっても、痛みがあれば、関節を動かすと苦痛に感じるかもしれません。しかし、痛みを回避するために動かさないようにしていると、動かさなかった筋肉や筋がだんだんと硬くなり「拘縮(こうしゅく)」という状態になることがあります。
基本的には日常生活に支障がない範囲で、膝関節を動かしていくことが大切です。どうしても痛みが強く、動かすのが難しい場合には、仰向けになり、かかとを地面につけた状態で膝の曲げ伸ばしをするだけでもリハビリとして行ってみましょう。また、その際には、かかとの下にタオルなどを敷いて摩擦を軽減すると、足が滑りやすくなり、関節運動が行いやすくなります。
その他の対処法
半月板損傷時は、立ち座りや歩行など、日常的な動作においても支障が生じます。そのため、痛みや違和感がある場合には、装具やサポーターなどを活用するのも一案です。
道具を使用することで、半月板損傷で悪くなったバランスが整いやすく、下半身の安定をもたらし、痛みの軽減に役立ちます。ただし、装具やサポーターをつけ続けると、それに頼りがちになり膝関節周囲の筋力低下を起こすおそれがあるので注意しましょう。
また、基本的に半月板損傷は、スポーツをしている方や肥満傾向にある方に多く見られます。肥満が原因で半月板損傷になっている場合には、食事に注意し、適正体重にすることにも取り組みつつ、膝関節の負担を軽減させて、変形性膝関節症への移行を予防することが大切です。
半月板損傷でやってはいけないこと
半月板損傷と診断され、手術を行わずに保存療法で経過を見ていく場合、日常生活でやってはいけないことがあります。
急な方向転換
保存療法と診断された際には、まだ改善しているわけではないので痛みが出現していることが予測されます。その際に、急な方向転換をすると痛みを助長させる可能性がありますのでやってはいけません。膝に負荷をかけすぎないように、方向転換はゆっくり行いましょう。
階段の上り下り
階段の上り下りも、自重を支えた動作になるため、それだけ膝関節に負担がかかります。運動に良いようなイメージがありますが、半月板損傷時には向きません。
可能であれば階段は避けて、エレベーターやエスカレーターを利用しましょう。歩く際に痛みがあれば手すりや杖などを利用するのも良いでしょう。
長時間の歩行や正座
長時間の歩行は、半月板損傷を悪化させるおそれがあるため避けましょう。また、正座のように膝を曲げた状態を、長時間続けることも、痛みを助長する場合があります。
できるだけ膝に負担をかけないよう、歩行や正座は短時間で済ませる、もしくはそうした機会をできるだけ減らすように注意が必要です。
半月板損傷は、病院での診察が必須
半月板損傷が悪化すると、膝関節のクッション性が失われて骨が削れることがあり、結果として、変形性膝関節症に発展するおそれがあります。セルフトレーニングとして膝関節周囲を鍛えると同時に、適切な疼痛コントロールが必要です。
アイシングやサポーターなどを活用していても、膝の痛みが続く場合には、早期に病院を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。また、「やってはいけないこと」にも注意しながら、無理のない動作を行いながら、早期回復を目指しましょう。
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参考

伊東浩樹(理学療法士)
理学療法士として総合病院で経験を積んだ後、予防医療の知識等を広めていくためにNPO法人を設立。その後、社会福祉法人にて障がい部門の責任者や特別養護ホームの施設長として勤務。医療機関や行政から依頼を受けての講演、大学、専門学校等での講師なども勤める。
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