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【識者の眼】「新型コロナワクチンによるアナフィラキシーの症例定義」倉原 優2021.03.17

セラピストプラス編集部からのコメント

今回の日本医事新報【識者の眼】には倉原優氏(国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)が「新型コロナワクチンによるアナフィラキシーの症例定義」と題して寄稿。

ファイザー社とBioNTech社が共同開発した新型コロナワクチンが医療従事者に先行接種され始めた矢先、「医師がアナフィラキシーの疑いがあると診断した事例」の報告が相次いでいます。

これからワクチン接種を控える一般人の間でも、報道により不安が渦巻く状況に陥っています。今一度、アナフィラキシーの定義をおさらいする意味でも、ぜひお読みください。

ファイザー社とBioNTech社が共同開発した新型コロナワクチンが医療従事者に先行接種され始めた矢先、「医師がアナフィラキシーの疑いがあると診断した事例」の報告が相次いだ。欧米に比べて多いなと思っていたが、中には両手のしびれや呼吸困難という過換気症候群のような事例もあった。

さて、アナフィラキシーの症例定義には、国際的にブライトン分類1)が使用されており、Level1〜3がアナフィラキシーであると判定される(後にこれと照合されて日本の先行接種におけるアナフィラキシー認定は6割減った)。疑い例を報告してもらって、調査した上でアナフィラキシーと認定されれば、その時点で公表すればよいのだが、日本では疑い例が発生した時点でテレビ局が我先に「アナフィラキシー発生」と速報ニュースを流してしまった。

これでは、「新型コロナワクチンは危険なワクチン」という印象を国民に植え付けてしまう。過去1年のコロナ禍の経験から、マスコミの過熱報道が起こるのは必至なので、このあたりのリスクコミュニケーションは政府が厳格に主導してもらいたかった。

ブライトン分類でアナフィラキシーと認定された国内の割合は、3月14日時点において接種回数100万回当たり約65件で、既に報告されている米国疾病予防管理センター(CDC)のまとめ2)における100万回当たり4.7件と比較すると多いように見える。

しかし、医療従事者におけるワクチン接種において急性アレルギー反応があった頻度は一般集団よりも高い水準にあり3)、日本における先行接種の急性アレルギー反応の報告は他国より際立って高い数値ではない。

これまで接種したのは一般人ではなく医療従事者だったことから、様々な医薬品に使用されているポリエチレングリコールに感作されている人が多かった可能性もある4)。

現時点ではこの真相は不明であるが、かといって、接種を大いにためらうような頻度とは思えない。

BioNTech社のプレスリリース5)によれば、新型コロナワクチンは「無症状感染の予防」にも有効とのことである。これが本当ならパンデミック収束の真のゲームチェンジャーとして、極めて期待が持てるワクチンということになる。

変異株が今後国内でも主流となっていくと思われるが、南アフリカ型の変異であっても、現時点ではその効果が著しく毀損されるものではなさそうだ6)。

【文献】
1)Rüggeberg JU, et al:Vaccine. 2007;25(31):5675-84.
2)Shimabukuro TT, et al:JAMA. 2021;doi:10.1001/jama.2021.1967.
3)Blumenthal KG, et al:JAMA. 2021;doi:10.1001/jama.2021.3976
4)Turner PJ, et al:World Allergy Organ J. 2021;14(2):100517.
5)BioNTech社プレスリリース
https://investors.biontech.de/news-releases/news-release-details/real-world-evidence-confirms-high-effectiveness-pfizer-biontech
6)Liu Y, et al:N Engl J Med. 2021;doi:10.1056/NEJMc2102017.

倉原 優(国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)[医療SNS]

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出典:Web医事新報

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