第7回スランプの抜け出し方&ステップアップの方法
公開日:2017.07.17 更新日:2017.07.28
病院やリハビリ施設などで、日々、目の前の患者さんと向き合っているとき、行き詰まりを感じたことはありませんか? 「あれ? 思うようによくなっていかないな」「なぜもっと前向きにリハビリに取り組んでくれないんだろう?」と。
ときには、「これが自分の限界なのかもしれない」などと、スランプに陥ってしまうこともあるかもしれませんね。そんなとき、どうやって抜け出せばよいのでしょうか。
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- Profile
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羽山恵里夏さん(37歳)
作業療法士、整体師、アロマセラピスト。
15歳の誕生日に阪神大震災が起こり、強い衝撃を受ける。子どもの頃から福祉施設でボランティア活動をしていたこともあり、「将来は人のためになるようなことをしたい」と医療の道を志す。専門学校を卒業後、作業療法士として病院や老人施設などに勤務し、その後、独立。現在はフリーのセラピストとして活動。
スクールに通わなくても学べるところはたくさんある
「『勉強以外にももっともっと色々な経験をしたほうがいい』と、お世話になった方から言われたことがあるんです。『医学の勉強だけでなく、自分自身が楽しめることや満たされることをやっていかないと、人にゆとりをもって接することができなくなるよ』と。医学だけ突き詰めようするとしんどくなるし、患者さんのこともその枠にはめようとしてしまうんですよね」
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行き詰まりを感じたときには本格的に何かを学ぶだけでなく、趣味や余暇の過ごし方にも解消法のヒントが詰まっています。
例えば、エステサロンに足を運んでみるのも一つの方法。身体にタオルをかけてもらうときの所作や、足湯で濡れた肌を拭き取るときの動作などでも、「こういう風にやってもらうと気持ちがいいんだな」といった発見があります。
その他、高級なヘアサロンやホテルのティールームのようにワンランク上の場所へ足を踏み入れるのもオススメだそう。
「上質な接客に触れることで、言葉遣いや接遇など多くのことを学べます。病院には若い人からお年寄り、学生から社長クラスの方まで患者としていらっしゃいます。多様な立場の患者さんに対応しなければならないんですよね。そういうときに、“接客の引き出し”を多く持っていることが活きてきます。自分の経験に無駄なことはありません。私は昔、実習中に『動くアクティビティ辞典になれ』と言われたことがあります。心と身体を癒す方法を知るには、勉強だけでなく、遊んだり、自分自身が癒されたりすることも大切です」
余暇の過ごし方を変え、学習の機会が増えたことで、“コミュニケーション力”があるからこその強みに気づいたこともありました。
「脳科学のセミナーに足を運んだとき、コーチングをしている方に出会い、お話をしているうちに『言葉がけを変えるだけで、人の受け止め方って変わるんだな』と気づいたんです。例えば背骨を怪我した患者さんに、『お背中痛くないですか?』と尋ねると、人は自然と背中の痛みにフォーカスしてしまいます。でも『お背中の調子いかがですか? 今日はどういう風になりたいですか?』という聞き方にすると、これからの変化やよりよい未来に意識をフォーカスできるんです。
このように言葉がけを変えただけで、目覚ましくリハビリの効果が上がったこともありました。脳のメカニズムをうまく利用することも施術に含まれるんだなと強く実感しましたね」
さまざまなことを学べばそれだけ治療の引き出しが増え、活躍の機会も増えていきます。多くの場面で、“心と身体のつながり”を意識させられた羽山さんに、“作業療法士としておすすめしたい勉強”について聞いてみました。
病気と健康の狭間の人を、より健康に導くための学びとは?
「作業療法士は、いわば健康と病気の狭間の職業。回復期をサポートする役割を担っています。手術は成功したけど治らない、医療でやれることはやったけれど社会復帰できない……。こういった方のつらい気持ちを上手にサポートできるようなことを学ぶと、仕事に結びつきやすいのではないでしょうか。『施術をしたから治った』というよりも、『話をしっかり聞くことで信頼関係が築け、リハビリの効果も上がった』ということも治療の中ではよくあります。このようなケアができる治療家が増えたらいいなといつも思っています」
そんな治療家になるための選択肢として、下記のようなことを学んでみてもいいかもしれません。
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●自然療法/東洋医学
「アロマテラピーや気功、リフレクソロジーなどがあります。1DAYセミナーのように気軽な教室に通ってみるだけでも、違いますよ」
●ホリスティック医療
「今後ますますホリスティックの“身体を全体的なものととらえる”考え方が医療の世界に根づいていくと思います。すぐに実践に活かせる知識です」
●ビジネスセミナー
「自己啓発セミナーや経営セミナーにも、さまざまな種類があります。税金や投資に関するセミナーなどは、『医療とは違うジャンルだから仕事には活かせない』と思われるかもしれません。ですが、医療とは異なる分野の場所に行ってみると今まで出会ったことのない人たちと触れ合うことができます。新しい考え方や視野に触れられることが、一番大きな収穫になります」
●これまでの生活で触れてこなかったこと
「茶道やボクシングジムへ通うことなど、これまでやってみたかったけれどやってこなかったことに思い切ってチャレンジするのもおすすめです。一人焼き肉にチャレンジとか、ハードルが高いと感じて入ったことがないお店に行ってみるくらいのことでもいいと思います。“学び”って、資格取得などの目標に向かうものだけではないんですよね。世の中の多くの場所に学べることがあるということに気づけるのが、趣味の醍醐味だと思います」
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