地域包括ケアってなんだ?(2)地域包括ケアシステムでのセラピストの役割とは?
公開日:2018.01.19 更新日:2021.04.09
文:吉倉 孝則
理学療法士/保健学修士/認定理学療法士
前回、地域包括ケアシステムの概要について書きました。
それらを理解した上で、今回は地域包括ケアシステムにおけるリハビリセラピストの役割とは何か考えてみましょう。
現在も多くのセラピストが活躍している医療・介護分野が主戦場となることは変わらないでしょうが、その役割は変化しています。また医療・介護現場以外での活躍も求められています。
今回は、介護予防・日常生活支援総合事業(以下、総合事業)でのセラピストの役割について書いてみたいと思います。
介護予防・日常生活支援総合事業とは?
総合事業とは、平成27年4月に施行された新しいサービスで、「介護予防・生活支援サービス事業」と「一般介護予防事業」とで構成されています。従来、要支援者(要支援1~2)に対しておこなわれていた全国一律の予防給付(介護予防訪問介護・介護予防通所介護)を市町村が取り組む地域支援事業に移行します。(図1)
図1 介護予防・日常生活支援総合事業の構成 (厚生労働省 介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン概要より)
これが決まった当初は、介護保険から要支援1~2の対象者を切り捨てるようなイメージをもたれる人が多かったです。私もその一人でした。
しかし、実際には介護保険制度内のサービス提供であり、財源構成も変わりません。
違うのは、今までは介護事業者のみのサービス提供だったものが、NPO、民間企業、住民ボランティア等による多様なサービスの提供が可能となることです。
つまり、今まではすべてプロフェッショナルによるサービスであったが、その担い手を地域の住民にも担ってもらい、元気な高齢者には支える側にまわってもらうことが想定されています。(図2)これにより、地域活力の向上も期待されています。
図2 総合事業と生活支援サービスの充実 (厚生労働省 介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン概要より)
また全国一律ではなく、市町村ごとに実施するため、地域の実情に応じた対応や取り組みが可能となります。(前回までに書いたように地域ごとに高齢化率やサービス提供者の量などは地域によって違うため、地域ごとに進めるのが地域包括ケアシステム)市町村ごとに、サービスを類型化し、それに併せた基準や単価等を定めています。
介護予防・日常生活支援総合事業でのセラピストの役割とは?
総合事業でリハビリセラピストが関与するものはいくつかありますが、その一つとして、「介護予防・生活支援サービス事業」のなかの「訪問型サービスC」「通所型サービスC」があります。これは行政または行政から委託を受けたセラピストがADLやIADL(手段的日常生活動作:ADLに関連した買い物や料理、掃除といった幅広い動作のこと)の改善に向けた支援が必要な対象者に3~6か月の短期集中的な介入をするサービスです。
これは、単なる機能回復訓練だけではなく、具体的な生活の困りごとを解決することを目指すものです。そのため、短期集中で生活行為障害の課題を解決し、地域の通いの場や社会参加に繋ぎ、元気な高齢者を増やすために「卒業」が前提のサービスです。
セラピストがこれらにうまく関与するためには、低下しているADL・IADLに着眼し、低下の要因や改善の見通し、有する能力の見極めなどセラピストとして当たり前のアセスメント能力が必要とされます。また病院のように毎日関与できるわけではなく、短期的に効果を上げるためには、本人、家族、支援者に具体的なアドバイスが求められます。
さらに、「卒業」を前提としているため、住民主体の通いの場や総合事業の他のサービスなど地域資源にどのようなものがあるのか、セラピストが把握しておく必要があるでしょう。
自分の住んでいる市町村では、どのようなサービスがあるのか、どのように総合事業が進められるのか市町村のホームページや介護事業計画に目を通すのも重要です。
総合事業は、市町村が中心となって、地域の事情に応じて、住民などのさまざまな担い手による、さまざまなサービスを充実させることにより、地域の支え合い体制づくりや介護予防の推進、要支援者等に対する効果的かつ効率的な支援を目指しています。
そのなかで、「訪問型サービスC」「通所型サービスC」ではセラピストも「卒業」を前提とした短期間での効率的かつ効果的な関与が求められています。
次回は、総合事業でのセラピストのもう一つの活躍の場である、「地域リハビリテーション活動支援事業」について書きたいと思います。
参考:平成28年度「地域保健総合推進事業」行政リハビリ専門職のための手引き(日本公衆衛生協会)
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