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管理栄養士の情報収集のコツ

公開日:2022.08.03

管理栄養士の情報収集のコツ

文:前田朋子(管理栄養士)

昨今、インターネットなどで情報が得やすくなって便利な半面、「〇〇が効く」「□□は食べないほうがいい」など、多種多様な情報を耳にすることが多くなり、どれが正しいのかわからなくなっている現実があると思います。

栄養指導を行っているときも、患者さんから初めて聞く健康方法もあり、その度に「それ本当?」「本当だったらいいけれど……でも根拠はあるの?」と思うことがありました。

栄養のプロとしては、自信を持って情報を発信していきたいところですね。
そこでここでは、管理栄養士として必要な情報収集の方法と視点をご紹介したいと思います。

今自分に必要な情報を見極める

大学を卒業したてのころ、「管理栄養士さんって食べ物のことをなんでも知ってるよね!」と周りから言われてうれしく思いましたが、一方で、まだまだ知らなければいけないことの多さに自信をなくすこともありました。

自信をつけるためには、今携わっていることに必要な情報や知識を、真摯に1つひとつひも解いて吸収していくことで力になっていきます。
さらに、5年で変わるといわれる情報を更新していくことが大切です。

情報を得る方法

確かな情報を得る方法はさまざまなものがありますが、主に次のものがあると思います。

学会、栄養士会などへの参加・所属

医療機関の学会や、栄養士会などに所属することで、学会誌を読むことができたり、講習会に参加できたりします。それにより、定期的に情報を更新できるのです。

私の場合、娘が食物アレルギーを持っていたこともあり、食物アレルギーに関しては常に高くアンテナを張り、アレルギー学会や小児科学会の情報も必ず目を通すようにしていました。話題になることも毎年少しずつ変化があるため、常に最新の情報を得ることができていました。

学会の情報は、それぞれの学会における現在の方針や課題を把握できるので、多職種での連携が必要な栄養サポートチーム(NST)で活かせる情報も多く得ることができます。

ちなみに、公益社団法人日本栄養士会は、栄養士、管理栄養士の資質向上を目的としているため、スキルアップ、ステップアップのためにも所属したほうがいいと思います。
地域に根ざした活動のほか、管理栄養士同士のリアルな声の交換ができ、学会誌だけでは得られない現場の生の情報にも出合うことができます。

インターネットを使って得る情報

学会などの情報も有益ですが、新しい情報を手軽にいつでも得られる便利さから、実際にはインターネットで検索する人が多いと思います。

権威者や専門家の発言を動画などで見たり、ブログやSNSで発信されているものを読んだりすることもあるでしょう。

「なるほど!」と思う情報に巡り合うことも多いのですが、「そのままうのみにしても良いのか?」「十分な根拠があるか?」という不安がつきまといます。そこで確かめたいのが信頼性です。

情報の信頼度を意識する

信頼性で意識するべきポイントは以下の2点です。
① その情報がエビデンスに基づいて書かれているか
② 資料などは出典、引用、参考がしっかり明記されているか

人の命や健康に関わる栄養学において、情報のエビデンスは特に重要です。エビデンスとは「証拠」「証明」の意味で、医学や保健医療の分野では、一定の方法により導き出された、病気やけが、症状に対して効果があることを示す検証結果や臨床結果のことを指します。
その信頼の度合いをエビデンスピラミッドというレベル分けで表現され、信頼度が高いものから順にいうと次のようになります。
1. システマティックレビュー、メタアナリシス(複数の研究を分析する統計研究)
2. ランダム化比較試験(二重盲検法による比較試験、前向き治療研究)
3. 比較臨床試験(オープン比較試験、クロスオーバー試験など)
4. コホート研究(疫学研究、症例横断研究)
5. 症例報告
6. 専門家の意見 体験談 動物実験 試験管実験

システマティックレビューとは、大量の文献を調査し、データの偏りをできるだけ排除して分析を行うことをいいます。
ランダム化比較試験とは、研究の対象者を2つ以上のグループに分け(ランダム化)、治療効果を客観的に評価することです。

また、順位が低くつけられているものの、動物実験や試験管実験が信用できないわけではありません。
エビデンスの判定は、「人間の体でどんな影響があるか」「再現性が高いか」に焦点が当てられています。その部分が弱い動物実験や試験管実験は、エビデンスレベルも低くなってしまいますが、大きな可能性を秘めているともいえるのです。

論文を検索してみよう

情報には信頼度の高低があるということを踏まえたうえで、さっそく検索してみることをおすすめします。

一番有名で使われている検索サイトは「PubMed」でしょう。PubMedとは、アメリカ国立医学図書館(NLM)が提供する、無料の医学関連分野の文献データベースです。5,000誌を超える世界の医療関連雑誌を検索でき、3,000万件以上の文献情報が得られます。

医療雑誌すべてを網羅しているわけではありません。ただ医療雑誌にもそれぞれ信頼度のレベルがあり、PubMedでは信頼度が高いとされている査読付きなど、精査された論文が中心に集められているので、利用している医療従事者は多いようです。

ただし、すべて英語で書かれているため敷居が高く感じられるかもしれません(私もそうでした)。初めて論文を検索すると、なかなか目的の情報にたどり着けず、時間だけがどんどん過ぎていくように感じることもあります。
しかし、回数を重ねるごとに検索のコツをつかみ、得たい情報に早くたどり着けるようになります。

参考

>>【PubMed】

PubMedでの論文の探し方

PubMedの検索窓に調べたいキーワードを入力し、Searchボタンをクリックします。キーワードは英語での入力が必要なので、お好きな英語翻訳ツールで英語に変換してください。

すると、キーワードに関連する論文が表示されますが、とてもすべては読めない数の論文が上がります。
そこから、さらにキーワードを追加して絞り込み、目的の情報が掲載されている論文を探します。

1つおすすめの絞り込み方をご紹介します。前述したエビデンスレベルを意識し、フィルターでMeta-Analysisを選択することです。そうすることで、一定の効果が現れた研究結果にたどり着きやすくなります。

ただし、検索結果に上がった論文を隅々まで読むのは大変な作業です。そこで、まずTitle(タイトル)が探しているものと合っているかを確認し、abstract(アブストラクト、要旨)に目を通しましょう。

アブストラクトにはその論文の実験と結果、結論がコンパクトにまとめられています。そこで気になった論文の図や表を見ます。図や表は、論文の核となる数値やデータをまとめたものなので、研究者の示したい重要な内容を把握できます。

それから、Conclusion(結論)を読み、この論文で最終的にいいたいことは何だったかを確認してみてください。

論文を読み慣れていくと、新しい発見がたくさんあり、問題や課題解決も早くなります。一度チャレンジしてみてください。きっと楽しくなりますよ。

確かな情報を得るには、4つのポイントを繰り返すことが大切

まとめると、確かな情報を得る方法は次のようになります。

①自分にとっての必要性の優先順位を定め、信頼性の高いものへのアンテナを張る。
②エビデンスを意識しながら情報を集める。
③集めた情報が、今の自分の目の前の課題に対して妥当または有効なのかを検討する。
④実践、応用する。

①から④を繰り返しながら自分の経験を積み重ねていくことが大切だと思います。
そして最終的には、確かな情報を発信する管理栄養士として、仕事に携わることができたら一番良いなと思っています。

shibamoto

前田朋子(管理栄養士)

札幌出身、埼玉県在住。管理栄養士・調理師。病院栄養指導歴3,000件以上。離乳食・幼児食講師として、500件ほどの個別相談を受ける。わが子のためにと受講された離乳食講座から、家族全員の食生活を守るヒントが得られると好評。お出汁、発酵食、アレルギー食、食育講座なども、リクエスト開催。グルテンフリーおやつも好評販売中。

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