地域包括ケアを理解するために知っておくべきこと(3)~地域別の違いと高齢化まとめ
公開日:2017.11.13 更新日:2021.04.09
文:吉倉 孝則
理学療法士/保健学修士/認定理学療法士
この連載も3回目となりました。その(1)では2025年までに要介護認定率が高くなる75歳以上が増加すること、その(2)ではその結果、認知症の患者さんや高齢者のみの世帯が増加することによる問題について説明してきました。
日本国内、各地域で高齢化の状況は異なる
今までさんざん、高齢者が増えるということを書いてきましたが、実は地域によって高齢化の状況は異なります。
75歳以上人口の2015年から2025年までの伸びでは、全国平均では1.32倍とされています。つまり、今まで述べてきたとおり、75歳以上の高齢者は1.32倍に増加するということです。
しかし、都道府県別でみると、埼玉県、千葉県では2025年までの10年間で75歳以上が1.5倍に増加すると予測される一方で、山形県、秋田県では1.09倍となっており、ほとんど高齢者は増えません。
さらに、地域別でみると2025年までに75歳以上の人口が減少する市町村が16.9%存在します。
これらで分かる通り、2025年に向けて都市部はこれから急速な高齢化が進みますが、地方のすでに高齢化が進んでいる地域では、ほぼ横ばいとなります。むしろ、高齢人口が減少している地域もあります。
今までは、診療報酬(医療保険)や介護報酬等も含めた、様々な政策を国主導で進めてきましたが、今後の実情は都道府県ごと、市町村ごとによって異なるため、地域の特性に応じて進めていく必要があります。
2025年問題について、これまでのまとめ
- 2025年に向けて、ただ単に高齢者が増えるのではなく、要介護率の高くなる75歳以上の人口が増加します。
- 75歳以上は医療、介護サービスを多く使うようになり、年金も含めて社会保障費が増大します。
- さらに認知症の方、75歳以上の単身や夫婦のみ世帯が増加します。
- 地域によって実情が異なるため、地域ごとに進めていく必要があります。
以上のようなことが、2025年問題と言われる基本的な内容です。
「2025年問題」には、他にもさまざまな要因や背景、問題がありますので、詳しくは他の書籍等を読んでみるのもいいかもしれません。
このように問題が山積の日本で2025年に向けて「地域包括ケアシステムの構築」という方針が示されました。次回は、その内容を確認してみましょう。
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