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寝たきりで起こる筋力低下に対するリハビリ方法を解説

公開日:2024.06.10

寝たきりで起こる筋力低下に対するリハビリ方法を解説

文:伊東浩樹(理学療法士)

近年、ますます介護予防への取り組みが注目され、さまざまなメディアで取り上げられています。その一方で、寝たきりによって起こる筋力低下に対するリハビリテーション方法については、まだまだ知られていない部分も多く存在します。

今回は、寝たきりによって起きる筋力低下や身体機能低下について解説するとともに、具体的なリハビリテーションの方法についてお伝えします。

寝たきりによって起こる筋力低下の種類

怪我や病気、加齢によって体を動かすことができなくなり、寝たきりになってしまうことがあります。寝たきりという言葉に明確な定義はないものの、厚生労働省の見解によると、寝たきりとは、「おおむね6ヶ月以上病床で過ごす者」を指し、自宅や病院を問わず、介護を必要とする状態です。

寝たきりになると心身機能において筋力低下をはじめとするさまざまな問題が生じますが、状況によって呼び名が変わります。具体的な種類として代表的なものを見てみましょう。

廃用症候群

寝たきりになると身体活動が不活発になる「生活不活発」の状態になります。この状態が長く続くと「生活不活発病」いわゆる『廃用症候群』と呼ばれる全身の機能低下が生じます。筋力低下をはじめ、関節拘縮や廃用性筋萎縮などが顕著に出現します。

サルコペニア

人は25〜30歳から骨格筋の減少が始まり、立つ、歩くといった生活動作に必要な腹筋や背筋などの「抗重力筋」の働きが加齢とともに低下していきます。高齢になれば、さらに骨格筋の量が減少し、筋力や身体機能がより低下しやすくなります。

こうした状態を「サルコペニア」と呼び、寝たきりといった状態を問わず、高齢者の筋力低下そのものを指します。サルコペニアの主な原因は加齢ですが、普段から活動量が少ないことや栄養不足なども原因と考えられています。

フレイル

サルコペニアや廃用症候群と類似した概念として用いられる「フレイル」は、加齢によって起きる「虚弱」を表す言葉です。活動量の低下によって起きる筋力低下「廃用症候群」や、運動器疾患や低栄養状態が原因として起こる筋力低下などの「サルコペニア」を含め、加齢によって起きる筋力や気力の低下を総称して「フレイル」と呼びます。

寝たきりによる筋力低下を予防するリハビリテーション4つのステップ

寝たきりで起こる筋力低下に対するリハビリ方法を解説

寝たきりになれば、筋力低下を完全に回避することはできません。安静臥床で、筋力の伸縮が行われない状態が続くと、1週間で約10〜15%の筋力低下が起きると言われています。さらに2週間の床場安静では、下肢の筋肉は2割が萎縮するという報告もあります。

しかし、悪化を予防するという点で、リハビリテーションが有効です。さらなる筋力低下を予防し、廃用症候群が進行しないためにも以下のようなリハビリテーションを実施するとよいでしょう。

ステップ1.マッサージ

寝たきりの方に、いきなり筋力強化の訓練を行うのはリスクがあります。筋に負担がかかって損傷のおそれがあるため、まずは全身状態を把握しつつ、医師の指導のもとでマッサージを実施します。無理なく皮膚に刺激を与えつつ、血流を促していくことが大切です。

ステップ2.ストレッチ

次に少しずつ、皮膚や筋が柔らかくなったことが確認できたら、ストレッチを行います。関節拘縮がある場合、その原因が筋や腱に由来するのであれば、各器官に対してストレッチを実施して、柔軟性の向上を目指しましょう。

ステップ3.関節運動

マッサージとストレッチで血流を促し、十分に筋や腱などに柔軟性を感じることができたら、関節包に対してアプローチします。関節自体をしっかりと把持したうえで、上下肢の関節を動かしつつ状態を把握する必要があります。

ステップ4.筋力練習

寝たきりの方への筋力トレーニングは、手指や足趾の運動など、軽めの動作から開始します。大きな筋肉を使った運動では、医師の指導のもとにセラピストが介助を行いつつ、他動的に実施していくことで筋疲労を過度に起こすこなく筋力練習ができるでしょう。また、寝たきりによる廃用症候群で低下した筋力に対しては、低負荷で疲労困憊する程度の運動を実施した際に筋繊維が増加することが研究で報告されています。中等度の運動であれば10〜15回を1セット以上実施することが研究結果で推奨されています。目安としてリハビリテーションのプランを考えてみましょう。

寝たきりの方へリハビリテーションをする際の注意点

寝たきりで起こる筋力低下に対するリハビリ方法を解説

廃用症候群やフレイルによる筋力低下は、低栄養と密接な関係があります。各種機能の回復を促すためには、リハビリテーションを実施する前に栄養状態を確認することが大切です。

特にフレイルの発生率に関しては、低栄養と高度肥満の方の割合が高い傾向にあります。65歳以上でBMI(体重(kg)]÷身長(m)の2乗)21.5〜24.9%を目標とした健康管理を促し、必要に応じて栄養状態を把握するとよいでしょう。

また、筋力低下を予防するためには、タンパク質の摂取が重要です。寝たきりの方や予備軍となる患者さんには体重(kg)あたり1g/日以上のタンパク質が補給できているかを確認したうえで、リハビリテーションの介入を検討する必要があるでしょう。

仮に、上述したBMIの目安やタンパク質摂取量が満たされていない場合、リハビリテーションによってかえって筋肉を損傷してしまったり、関節を痛めたりするおそれがあります。リハビリテーションと並行して栄養管理もしっかり行いましょう。

早期より介入して予防リハビリテーションを実施しましょう

寝たきりによる筋力低下予防のリハビリテーションについてお伝えしましたが、そもそも寝たきりにならないための予防が最も重要です。寝たきりになった後のリハビリテーションで、その人らしく過ごしていくための手伝いをすることは可能です。

しかし、早期から予防となるリハビリテーションを実施することの大切さを周知することが必要でしょう。リハビリテーションの専門職として予防のための介入に、積極的に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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参考

寝たきり|日本老年医学会学術集会記録
サルコペニア|eヘルスネット(厚生労働省)/a>
生活不活発病(廃用症候群)と「生活機能低下の悪循環」(1)|厚生労働省
健康長寿教室テキスト 第2版|国立長寿医療研究センター
廃用症候群|健康長寿ネット
廃用症候群とレジスタンストレーニング|健康科学大学

伊東 浩樹(理学療法士)

伊東 浩樹(理学療法士)

理学療法士として総合病院で経験を積んだ後、予防医療の知識等を広めていくためにNPO法人を設立。その後、社会福祉法人にて障がい部門の責任者や特別養護ホームの施設長として勤務。医療機関の設立や行政から依頼を受けての講演、大学、専門学校等での講師なども勤める。

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