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今すぐ実践可能 変形性膝関節症 TKA術後のリハビリ

公開日:2019.03.01 更新日:2021.12.10

文:伊東浩樹  理学療法士・ NPO法人 地域医療連繋団体.Needs 代表理事

病院に勤務する理学療法士は、手術前後のリハビリを担当することも多いでしょう。前回ご紹介した整形外科でよく見かける「変形性膝関節症」への基礎対応に続き、「TKA(人口膝関節全置換術 total knee arthroplasty)術後」に行うリハビリテーションの一例を紹介します。

手術適応となる関節症およびTKAとは

前回の記事にもあるとおり、変形性膝関節症の治療において、保存療法で症状の改善が得られないような関節破壊が進行している患者さんには手術療法が検討されます。

破壊が少なくても強い症状がある場合は、侵襲の少ない関節鏡視下の関節デブリドマンを行ったり、比較的若い患者さんで変性がまだ関節全体に及んでいない場合には骨切り術によって変形を矯正するとともに、変性が及んでいない関節面に荷重を移動させる骨切り術を行ったりするケースが多いでしょう。

手術方法は膝関節の病態や患者さんの年齢に応じて異なりますが、理学療法士が術後リハビリテーションに介入する場合、その多くは「TKA術後」になることが多いのではないでしょうか。TKAは人工膝関節全置換術とも呼ばれ、末期の変形性膝関節症で、なおかつ年齢が60〜70歳以上であれば検討される手術方法です。人工関節の設置後、術後に伴う疼痛と歩行能力を著しく改善させるのがリハビリの目的です。

理学療法評価

では、TKA術後の患者さんに対するリハビリテーションはどのように進めるべきでしょうか? まず、リハビリのプランを立てるためにも、手術前後の評価が重要です。それぞれ以下のような視点で理学療法評価を行ってみましょう。

1.理学所見(主観的評価)

術前:手術に対して不安がないか問診し、場合によっては心理面のアプローチを実施することが大切です。手術そのものに対する不安だけでなく、術後に今よりも動けるようになるのか、本当に歩けるようになるのかといった心配をする患者さんも少なくありません。

理学療法士は術前評価として患者さんの心に寄り添い、患者さんの要望を聞き出して不安を取り除きながら、術後の治療につなげていく必要があります。

術後:急性期において動けない状態にあれば、問診による疼痛の程度を確認することがとても重要です。疼痛のスケールは後の再評価がしやすくなるように、数値化できるものがおすすめです。また、視診による浮腫や発赤なども確認するようにしましょう。

2.理学所見(客観的評価)

術前:疼痛自制内でどの程度関節が曲がるのか、どのような動作の時に疼痛が増強するのかを確認します。歩行に関しても、現時点で杖を使用しているのか、その際の歩き方や階段昇降のレベルを評価します。

術後:基本的に疼痛に合わせた評価を行います。術後早期には、術創部周囲の状態を観察し、疼痛減少に合わせてROM(関節可動域測定:Range of motion test)やMMT(徒手筋力検査:Manual muscle test)などを用いて関節可動域や筋力を評価します。

関節可動域については、疼痛が減少していても、自動運動をすると疼痛が増強するので、理学療法士が他動で疼痛範囲内での可動域を確認しましょう。筋力に関しても疼痛増強時は無理にMMTなどで評価することなく、動かせる範囲でどのレベルか粗大筋力で評価することが大切です。

理学療法

上記のような評価を行い、状況を見極めたら実際のリハビリテーションに進みます。以下3つの視点を持って、実施するリハビリテーションの内容を決定しましょう。

1.運動療法

血栓予防や筋力低下を考え、早期離床を促します。疼痛コントロールできる時期が来るまでは、足関節底背屈運動などベッド上で可能な運動を指導するとよいでしょう。疼痛に合わせて、ニーブレイスや弾性包帯を使用し、膝関節を固定した状態での車椅子への移乗方法を練習する必要があります。

その間も、関節可動域練習は必要ですので、自身で車椅子に移乗できるようになるまではベッド上にてCPMなどのリハビリ用機器を使用した可動域練習や、疼痛に合わせて理学療法士による徒手的可動域練習を実施してみましょう。自身での車椅子移乗が可能になれば、リハビリ室まで移動してリハビリを開始します。

リハビリ室での練習を開始したときにも、疼痛が強ければニーブレイスや弾性包帯を使用することで、比較的早期から平行棒を使用した歩行練習が可能となります。膝関節の可動域に関してはその方のADLや家屋状況を考えながら、必要な可動域を獲得できるようにプログラムを立案して実行してみましょう。

2.物理療法

術後早期には、リハビリテーションを実施する上で疼痛が一番の阻害因子となるため、アイシングなどを利用して疼痛軽減に務めます。病棟内で過ごす時間も看護師に協力を求め、患者さんが疼痛訴えた際にはなるべくアイシングで疼痛コントロールをするように促すとよいでしょう。

疼痛がある時期は睡眠不足になりやすいため、翌日のリハビリテーションに力を発揮することが難しくなります。できるだけ患者さん自身がケアできるように指導しましょう。

3.教育

TKA術後は自宅退院となる場合が多く、自宅環境に配慮してADL指導をしていく必要があります。例えば、膝関節の可動域が100°しかない場合には和式トイレは使用できないため、自宅のトイレを洋式に変更する必要があるかもしれません。そうした状況には、介護保険などを利用するといった社会資源の活用も視野に入れながら、患者さんにとってより良い環境が作れるよう提案する必要があるでしょう。

また、術前に杖を使用していない場合でも、階段をひんぱんに昇降する可能性があれば、昇降能力やバランスを評価したうえで杖歩行を指導することで転倒予防につながることもあります。また、退院後の自主トレーニングが継続できず、結果的に反対側の膝関節に負担がかかって再受診される患者さんが多いのも事実です。

そうした課題を解消するためにも、退院時にはホームプログラムをリーフレットにまとめて手渡しするといった配慮が必要でしょう。

まとめ

今回は変形性膝関節症の治療として手術を行うことになった患者さんに対して、術後に行うリハビリテーションについてまとめました。膝関節の問題は、年齢を問わず誰にでも起こりえます。

手術や術後の改善に不安を抱える患者さんに寄り添いながら、社会復帰できるようサポートしていくことも理学療法士の務めといえます。患者さんのQOLを高めるためにも、日夜勉強を重ねていきましょう。

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