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「移動」は自立の基本
~作業療法で公共交通機関の利用を支援~

公開日:2019.06.28 更新日:2019.07.18

みなさんは、「自分が行きたい場所」に行きたいと思った時、その場所へ向かう「自由」が奪われる日々を想像したことがありますか? また実際に経験したことはあるでしょうか。

ケガをして入院したり、愛用の自転車がパンクしてしまったり、お気に入りのルートに通行止めの立て看板が置かれてしまったりと、時折そのような不自由さを感じたことがあるかもしれません。

移動は、その人がその人らしくあるために欠かせない行為です。
私自身、東日本大震災で被災した際に、「移動は自分の人生を支える基本」であることを実感しました。

・マイカーが流出し、仕事に行けない。そもそも自宅までの道路が塞がれている。
・もともとバスが1時間に1本来るか来ないかの地域で、すべての住民が移動手段を失っているなか、タクシーなんて来るはずがない。

私と幼い子どもたちは、ずっと避難先の狭い部屋に閉じこもり、物資や情報が入ってくるのを待つだけでした。


「外に出たい」という気持ちがリハビリの第一歩に

移動手段を失い、自由に外出ができない日々が続くと、次第に「今、身動きができるこの場所だけで、生活を何とかしよう」という気持ちが働くようになりました。外がどうなっているのか不安になるより、まずは身のまわりで起きていることに関心を向けるようになったのです。その場だけで何とかしようとすると、その場所にいる人々との繋がりや居場所づくりへと働くようになります。

しかし一方で、そのままだと外の世界へ関心が向かなくなることがあります。すると、外に出て自宅の生活再建をするのが遅くなり、しかし自分よりも先に生活を再建し始めた住民に目が向いたり、自分自身が未だ避難生活を送っていることへの焦りや不安が募ったりして、身体も心もどんどん内側に向いてしまうのです。

あの時、移動手段を失うだけではなく移動の目的も失っていた私には、「外に出たい」という気持ちをもたらす何かが必要でした。気持ちがあれば、たとえ距離や時間が少なくても仲間や居場所を広げるチャンスがあります。あてのない散歩でも四季の変化を味わえたり、たまたま立ち寄ったスーパーで懐かしい友人と再会したり、思いがけない時間を過ごせるかもしれません。

移動をかなえる生活技能

作業療法の場面で移動にフォーカスした介入を行う際、その手段は様々なものが考えられます。どのような手段を用いるかは、対象者が暮らす地域、障害の種類、年齢、家庭や地域での役割等々、対象者によって異なるでしょう。どの手段においても、身体の使い方や安全への配慮、人々との関わりなど幅広い技能が求められます。

例えば、公共交通機関を利用した移動では、決めた時間までに目的地へ向かうために、いつ・どのようなルートで移動するかの計画、費用の計算といった準備にはじまり、万が一に備えた別ルートの検索など、一度にたくさんの課題をこなさなければなりません。身体や心に障害がある場合は、身体の使い方や耐久性、迷ってしまった場合の対処、人ごみのなかで落ち着いて行動する集中力、危険の回避方法など、作業療法士が同行し、模擬練習を行う方も多いのではないでしょうか。

移動に困らないまちづくり

誰もが自由に行きたい場所へ移動できるようになるには、移動に必要な技能だけではなく「外へ出たい」と思えるきっかけや環境が重要です。

みなさんの身近に、移動に十分な技能を持っていても、車がない・バスがない、だからどこへも行けないと悩んでいる人はいたり、外出するきっかけを持てずにいたりする人はいないでしょうか。

例えば自然災害の被災地では、そういった方を支援するカーシェアリングサービスや移送支援が提供されています。また、ご近所さんが「お互いさま」の気持ちで一緒に買い物へ出かけるといった形が定着している地域もあるでしょう。

誰もが移動に困らないまちづくり、私たち専門職ならではの力も求められています。

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