FIMの評価方法とは?特徴やメリット、項目などについて解説
公開日:2024.02.05
文:rana(理学療法士)
リハビリや介護分野において日常生活能力を評価する方法の1つに「FIM」があります。一人ひとりの動作や生活レベルを把握する評価方法として、広く活用されているため、リハビリに携わるセラピストなら一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
実際に活用するためには、深い理解が必要です。今回はFIMについての特徴やメリット、具体的な項目などについて解説します。
FIMとは
FIMとは、機能的自立度評価表(Functional Independence Measure)の略で、1983年に開発された日常生活能力の評価法です。運動機能面だけでなく、対人交流や日常生活における問題解決などの項目も含まれ、それぞれを数値化して客観的に評すことができます。
特に介護度の変化を数値化できるため、リハビリセラピストのみならず、看護師や介護士などにも広く活用されています。
FIMの特徴
医療分野で広く活用されているFIMですが、どのような特徴があるのでしょうか。FIMの特徴についてまとめてみました。
「できるADL」ではなく、「しているADL」で評価
FIMは能力的に可能なADLではなく、実際に日常生活で実施しているADLを評価します。
例えば、本来は自力でトイレまで移動して用が足せる能力がある患者さんに対して、病棟では車椅子を使って移動している場合、実際に病棟で「しているADL」が評価対象となります。「できる」ではなく、実際に「している」状況で評価するのがFIMの特徴です。
差がある場合は最低点で評価
患者さんの状況によって、その日、その時の調子が変わるものです。FIMでは、その時の体の調子によって、実施しているADLに差がある場合、低い方の点数で評価をするという特徴があります。
例えば、調子が良い時は階段を登って移動できるものの、日によって登れない時もある場合、できない方の点数が評価対象です。特にパーキンソン病や脳血管障害など、日内変動、日差変動がある場合には、見極めが必要になります。
リハビリセラピストでなくても評価可能
FIMを評価するのは、リハビリセラピストのみだけではありません。FIMの評価項目や判定基準を理解していれば、他の医療従事者でも評価することが可能です。
なかでも看護師や介護士は、病棟で患者さんのADLに関わっていることも多いため、状態を把握した詳細な評価がしやすいでしょう。
FIMの評価項目
FIMの評価項目は、運動項目(セルフケア・排泄コントロール・移乗・移動)、認知項目(コミュニケーション・社会的認知)から構成される計18項目で評価をします。具体的な項目は以下のとおりです。
運動項目(13項目)
セルフケア
2. 整容
3. 清拭
4. 更衣上半身
5. 更衣下半身
6. トイレ動作
排泄コントロール
8. 排便管理
移乗
10. トイレ移乗
11. 浴槽・シャワー移乗
移動
13. 階段
認知項目(5項目)
コミュニケーション
15. 表出
社会的認知
17. 問題解決
18. 記憶
FIMの判定基準
FIMは、上記で紹介した項目でそれぞれ7段階の点数によって評価されます。すべて完全自立だと126点、すべて全介助で18点です。FIMにおける7段階の判定基準については以下のとおりです。
7点:完全自立
一人で補助具などの道具を必要とせずにできるレベル
安全かつ通常の時間内に遂行可能
6点:修正自立
一人で行えるが補助具や装具などが必要なレベル
時間を要し、安全面での配慮が必要
5点:監視・準備
手助けは必要としないが、介助者による監視指示、助言、準備などが必要
4点:最小介助
介助者による手助けが必要だが、全体のうち75%以上は自力で行うことができる
3点:中等度介助
介助者による手助けが必要だが、全体のうち50%~75%は自力で行うことができる
2点:最大介助
介助者による手助けが必要だが、全体のうち25%~50%は自力で行うことができる
1点:全介助
介助者による手助けが必要で、全体のうち25%未満しか行うことができない
FIM では、7段階の判定で、非常に細かく設定されています。数値化により、リハビリの効果判定や機能低下の程度などを段階的に捉えることができます。
FIMとBarthel Indexの違い
日常生活能力評価には、Barthel Index(BI)という方法もあり、どちらも広く使用されています。FIMと並んで代表的な評価方法ですが、Barthel IndexとFIMにはどのような違いがあるのでしょうか。
FIMとBarthel Indexの違いについてまとめてみました。
Barthel Index | FIM | |
---|---|---|
ADL評価の内容 | できるADL | しているADL |
採点方法 | 項目によって2~4段階 | 7段階 |
認知項目 | なし | あり |
点数 | 100点満点 | 126点満点 |
評価項目 | 10項目 | 18項目 |
評価される領域 | セルフケア 移動 |
セルフケア 排泄コントロール 移乗・移動 コミュニケーション 社会的認知 |
難易度 | 簡単 | 難しい |
評価時間 | 短い | やや長い |
Barthel Indexはどちらかというと、移動とセルフケアに重きを置く評価方法です。簡易的に実施可能ですが、細かな介助量や広い領域までは把握しにくい点がFIMと大きく異なります。
FIMの方が詳細な判定ができること、また、広い領域まで把握できる、回復度の比較がしやすいといったメリットがあります。加えて、能力が段階的に数値化できるので、家族や多職種にも説明がしやすいのもFIMの特徴です。
リハビリの効果判定にFIMを活用しよう
FIMはリハビリセラピストだけでなく、多職種にも広く活用されている評価方法です。リハビリセラピストなら一度は触れることになる評価になるので、特徴や項目をしっかりと抑えておく必要があります。
また、日常生活の評価だけでなく、リハビリの効果判定にも有効なので、リハビリの方向性を確認するために活用してみてはいかがでしょうか。
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rana(理学療法士)
総合病院やクリニックを中心に患者さんのリハビリに携わる。現在は整形外科に加え、訪問看護ステーションでも勤務。 腰痛や肩痛、歩行障害などを有する患者さんのリハビリに日々奮闘中。 業務をこなす傍らライターとしても活動し、健康、医療分野を中心に執筆実績多数。
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