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【若手セラピスト向け】ADL評価の目的や方法について分かりやすく解説

公開日:2023.10.02 更新日:2024.01.19

【若手セラピスト向け】ADL評価の目的や方法について分かりやすく解説

文:平岡 泰志(作業療法士)

ADLの評価は、リハビリをするうえで重要度の高い項目です。しかし、ADLの評価について説明を求められても正確に答えられるか不安な方もいるかもしれません。今回は、ADLを評価する目的や評価方法について解説します。あらためてADLについて理解を深め、現場に活かしていきましょう。

ADLとは

ADLとは「Activities of Daily Living」の頭文字をとった略語で、日本語では「日常生活動作」を指します。日本リハビリテーション医学会によると、「ひとりの人間が独立して生活するために行う基本的な、しかも各人ともに共通に毎日繰り返される一連の動作群をいう」と定義されています。ADLには、8つの項目があり、患者さんの現在の自立度や必要介護量を評価します。
具体的な項目は以下のとおりです。

・起き上がり
・立ち上がり
・移動・移乗
・食事
・トイレ
・更衣
・入浴
・整容

ADL評価は、治療計画を立てたり、多職種と情報共有したりする際に活用されるため、重要度の高い評価項目といえます。

ADLを評価する目的

ADLの項目に従って評価することで、治療や介護で必要なレベルの把握に役立ちます。ADLを評価する目的は、具体的には以下のとおりです。

① 治療介入が必要な動作の見当をつける
② 治療計画を立てる
③ 治療効果の判定をする
④ 予後予測をする
⑤ 多職種や関連施設との情報共有をする

ADLを評価する目的が曖昧だと、評価内容を効率よく利用できない可能性があります。そのため、上記の5つの目的をしっかりと把握したうえで、ADL評価を実施するようにしましょう。

ADLを評価する方法

ADLの代表的な評価方法として、「FIM」と「BI」があります。
FIMとは、「Functional Independence Measure」の頭文字をとった略語で、日本語では「機能的自立度評価法」といいます。主に医療分野で用いられるADL評価方法です。一方のBIは「Barthel Index」の略語で、評価した合計点数に応じて自立度の基準を把握するものです。FIMと同様に医療の現場でも用いられますが、主に介護の現場でも広く使われているADL評価方法です。
それぞれの特徴やメリット・デメリットについて次項より詳しく解説します。

ADLの評価方法「FIM(フィム)」の特徴とメリット・デメリット

【若手セラピスト向け】ADL評価の目的や方法について分かりやすく解説

FIMは以下のような特徴があります。
・18項目を点数化して126点満点で評価をする
・日常生活上で「しているADL」を評価する
・医療機関で入退院時の変化を捉える際に使用されている

FIMの評価項目

FIMの評価項目には、運動項目と認知項目があり、それぞれ以下のように分類されます。
運動項目
セルフケア 排泄コントロール
1.食事、2.整容、3.清拭、4.トイレ動作
5.更衣上半身、6.更衣下半身 7.排尿管理、8.排便管理
移乗 移動
9.ベッド・椅子・車椅子移乗
10.トイレ移乗、11.浴槽・シャワー移乗 12.歩行・車椅子
13.階段
認知項目
コミュニケーション 社会的認知
14.理解、15表出 16.社会的交流、17.問題解決、18.記憶

FIMのメリット・デメリット

FIMのメリットは主に以下の3つが挙げられます。

・細かな能力を把握しやすい
・認知機能面を評価できる
・本人や家族にADLの変化を説明しやすい

一方で、FIMには以下のようなデメリットもあります。

・評価方法がやや複雑なため採点する側のスキルが求められる
・患者さんの意欲に影響されやすい
・評価をするのに時間がかかる

ADLの評価方法「BI(バーセルインデックス)」の特徴とメリット・デメリット

【若手セラピスト向け】ADL評価の目的や方法について分かりやすく解説

BIには、以下のような特徴があります。
・10項目を点数化して100点満点で評価をする
・日常生活上で「できるADL」を評価する
・介護サービス事業所で加算を取得する際に使用されている

BIの評価項目

BIの評価項目はFIMよりも少ない、10項目で評価されます。
評価項目
1.食事、2.移乗、3.整容、4.トイレ、5.入浴、6.歩行、7.階段昇降、8.着替え
9.排便コントール、10.排尿コントロール

BIのメリット・デメリット

BIのメリットは主に以下の3つが挙げられます。

・評価方法がシンプルなため評価するのに時間がかからない
・100点満点で評価するため、自立度を一目で把握しやすい
・国際基準であるため、外国人労働者でも対応しやすい

BIのデメリットは以下の3つです。

・シンプルな評価方法であるため、細かな動作は評価しづらい
・点数だけでは変化を把握できない場合がある
・認知機能面を評価する項目がない

■関連記事
バーセルインデックスとは?セラピストが理解しておきたい特徴や評価項目について解説

ADL(日常生活動作)と区別が必要な用語

医療現場で使用する専門用語は多く、なかには混同しがちな用語もあります。ADL(日常生活動作)においても、類似している用語があるため、間違わないように理解しておきましょう。

IADL(手段的日常生活動作)

厚生労働省は、IADLを「日常生活動作の次の段階である。具体的には、買い物、調整、洗濯、電話、薬の管理、財産管理、乗り物等の日常生活上の複雑な動作をいう」と定義しています。ADLが食事や更衣などの身の回りの動作であるのに対し、IADLは、「買い物や洗濯など、日常生活における応用的な動作」と理解しておくとよいでしょう。

日常生活自立度

日常生活自立度とは、障がいや認知症をもつ高齢者の日常生活自立度を評価するために作られた指標です。ADLは日常生活動作能力を評価し治療に役立てるものですが、日常生活自立度は、介護認定を受ける際などに1つの指標として利用されます。

QOL(生活の質)

QOLとは「Quality of Life」の略で、「生活の質」や「人生の質」を意味します。そのほかにも「生きがい」や「人生の満足度」などを表し、患者さんが望む生活を支えるうえで重要な考え方です。ADLによって日常動作を評価し、リハビリ等に反映することで、患者さんのQOLが向上します。

ADLを正しく評価して、治療計画の立案や情報交換に役立てよう

ADL評価は、治療計画の立案や他職種との情報交換など、医療現場や介護現場で広く使われています。医療現場では主にFIM、介護現場ではBIが使われる場面が多いものの、状況によって使い分けが必要になる可能性があります。セラピストとして、FIM、BIそれぞれの特徴などを理解し、正確な評価ができるようにしておきましょう。

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■関連記事
バーセルインデックスを用いたADL評価の注意ポイント
FIMの評価方法とは?特徴やメリット、項目などについて解説

■参考
【書籍】図解|作業療法技術ガイド第2版|文光堂
日漫協・武久会長「BI利得」推奨判断基準がFIMより具体的|ケアニュースbyシルバー産業新聞
総論参考資料|厚生労働省

平岡 泰志

平岡 泰志

作業療法士/医療介護分野専門ライター
地方の二次救急指定病院にて5年間勤務。その後、デイサービスの立ち上げに携わり、「高齢者の尊厳を守る」を念頭に主任として現場を統括。作業療法士歴16年の知識と経験を活かし、現在はフリーライターとして医療介護分野の役に立つ情報を精力的に発信している。

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