作業療法士が別の道で働くならどんな仕事があるか?実例をもとに詳しく解説
公開日:2024.03.12 更新日:2025.09.24

文:牛玖恵梨子(作業療法士)
皆さんは、現在の職場で作業療法士をしている自分とはまったく別のキャリア、つまり「もうひとつの自分の道」を考えたことはありますか? 私はあります。そして、実際に別の道に進んでいます。
今回は医療機関や介護保険関連の施設など、大半の作業療法士が進む道とは異なる「作業療法士の別の道」について私の経験も踏まえながら考えたいと思います。
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「別の道で働こう」と思うきっかけ
別の道で働こうと思うきっかけを考えると、ネガティブな理由からポジティブな理由までさまざまな状況が思い浮かびます。例えば次のタイプが挙げられるのではないでしょうか。
「今の職場を辞めよう」と思ったタイミングで別の道を探すタイプ
「作業療法士にはこだわらず別の道も視野に入れて探す人」「収入面で折り合いがつかず別の道でのキャリアアップしたほうが魅力的」などの場合です。
「自分は作業療法士に向いていない」と思うタイプ
「作業療法士になれたものの思っていた仕事と違った」「資格の必要な仕事は収入が安定していて働きやすいと思ったが、実際は仕事がハードで体力的に厳しかった」などのケースです。
作業療法士だけでは満足できないタイプ
「何年か働いて飽きてしまった」「作業療法士の仕事は好きだけどマンネリ化してきた」「新卒で作業療法士になったが働いているうちに自分に合うほかの仕事もしてみたくなった」といった場合です。
もともと別の道へ進もうとしていたタイプ
「作業療法士になること自体は通過点で関連するほかの仕事につなげたいと考えていた」「作業療法士として実践を積んだら起業したいと思っていた」「作業療法士以外にも夢がある」などの場合です。
紹介した4つのタイプは、私自身を含む友人や元同僚などにいた、実際に別の道に進んだ人たちをタイプ別に分けたものです。
きっかけ自体は人それぞれです。なかには自分が病気になってしまったため、作業療法士ができなくなってしまった、といったどうにもならない事情で別の道へ進んだ方もいました。
作業療法士から別の道へ進んだ実例
作業療法士の経験を活かせる仕事は想像するだけでもたくさんあります。
そもそも対人援助を得意とする作業療法士なので、人を相手にするサービス業全般で経験を活かせると思います。
私が知っている範囲ではありますが、病院や施設で働いていた作業療法士から、別の道へ転身した方たちの仕事をご紹介します。
作業療法士の知識や技術をそのまま活用できる仕事
医療系の本や雑誌などを発行している出版社や、専門知識を活かして本を書いたりWebライターになる人もいます。
また、教育業界(講習会の講師など)に飛び込んだり、リラクゼーションサロンや訪問看護ステーションなどの起業・開業する人もおり、変わったところでは、動物リハビリのセラピストや障がい者の旅行支援に携わる人もいます。
作業療法士の経験を土台にして別の業種につなげる仕事
都道府県庁や市町村が作業療法士の職員を募集していることがあります。勤務先は本庁のほか、保健所、こども医療福祉センターなどです。
また、リハビリや福祉機器のメーカーなどの一般企業に就職すること可能で、作業療法士がアドバイスをするなどして商品開発につなげたりしています。
番外編
数はそれほど多くはありませんが、国会議員、市区町村議員になる人もいます。また、専門的な知識を活かしてYou Tuberになったり、青年海外協力隊に入って活躍したりする人もいます。
また、結婚相手の親が会社や飲食店を経営していたことから、作業療法士の仕事を辞めて、その会社やお店で働いている元同僚もいます。
作業療法士だった私の「別の道」
ここからは、「作業療法士の別の道」として、現在私が行っている編集者の仕事の特長をご紹介します。私の場合、フリーランスの編集者であるため、出版社で働く編集者の方々とは仕事内容が異なる点にご留意ください。
皆さんもご存じのとおり、大きな書店に行くとたくさんの専門書があります。もちろん作業療法士が書いた書籍も日々発刊されています。そのため、編集の仕事は作業療法士と親和性が高い職業のひとつです。
多くはありませんが、出版社に勤める編集者のなかには、医療・介護系の資格を持った編集者もいます。
作業療法士から編集者になったきっかけ
私の場合、作業療法士として働いているときに執筆を依頼されたことがきっかけで編集の仕事に興味を持ちました。そして依頼を受けるなかで、出版業界が窮地に陥っていることを知りました。
紙をベースにした出版物は売り上げが下がり、昔からある有名な雑誌もどんどん休刊し、正社員として働く人が減ったことで編集者が不足しているということでした。
私自身、高校生のころから本の虫で、作業療法士をめざすようになってからは専門誌や専門書にもお世話になってきたため、「本がなくなったら患者さんが困る!」との思いでこの道に足を踏み入れました。
編集者の仕事とは
編集者の仕事といえば、一般的に出版物の企画から制作全般に携わります。
フリーランスの私の場合、出版社から直接依頼がくるわけではなく、編集プロダクションを通して依頼を受けています。
依頼内容の多くは、「○○出版社から『△△』という本の制作依頼が来ました。原稿整理と校正・校閲をお願いできませんか?」といったものです。原稿整理とは、著者が書いた原稿に目を通し、文章の体裁を整えることをいいます。
校正と校閲は「校正者」「校閲者」といわれるプロフェッショナルがいるほど奥の深い仕事です。それぞれのプロが集まってひとつの出版物がつくられる様子を見ていると、「リハビリに似ているなぁ」と思います。
別の道に進んで気づいたこと
別の道に進んだことで、目の前にいる「患者さん」と直接接する仕事から、出版物をとおして「読者」を想像する仕事になりました。
読者と直接接することがないからこそ、自分の作業療法士としての立場を考える機会が増えたように思います。
特に専門職の資格を持つ編集者にありがちなことに、「自分の知識と経験を過信していること」が挙げられます。
自分の持つ資格や経験を根拠に「これは間違いようがないから調べなくてもOK」などと、自分の思い込みだけで校閲を済ませてはいけないことに気づけました。
また、医療に関する出版物は読者に間違って伝わってしまうと、その先にいる患者さんや利用者さんの命に関わる危険性があります。
そのため、偏見や先入観(バイアス)を捨て、「もっとわかりやすく!」「間違いは絶対に許さない!」という気持ちが、作業療法士だからこそ強くなってしまうように思います。
まとめ
作業療法士が別の道に進もうとするとき、「自己実現ができているか」が大切だと考えています。作業療法士がよく使う「自己実現」ですが、改めて自分自身に当てはめて考えてみると、意外と叶えられていない人もいるのではないでしょうか。
今回紹介した別の道は、作業療法士の経験や資格を活かした仕事でしたが、実際には作業療法士とはまったく関係がない別の道に進んだ元同僚もいれば、別の道に進むために作業療法士として働きながら準備を進めている友人もいます。
さらに、別の道ではなく作業療法士として働きながら別の道にも進む、二刀流の作業療法士もいることでしょう。
別の道を考える際、私の経験が「誰か」の参考になればうれしいです。

牛玖 恵梨子
作業療法士、児童指導員ほか。
養成校卒業後、病院勤務を経て福祉心理学系の大学へ編入。卒業後は伊豆七島にある三宅島や都内、千葉県内で働く。
趣味は旅と読書、そしてビールを飲むこと。趣味と作業療法の経験を活かし、医療や福祉をテーマにした執筆や書籍などの編集も行っている。
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