端座位とは?メリットや必要な機能、リハビリ方法などについて解説
公開日:2024.03.04
文:rana(理学療法士)
リハビリの現場では、患者さんに「端座位(たんざい)」をとってもらいながら、訓練を行うことがあります。健常者であれば端座位をとるのは容易ですが、身体機能が低下した患者さんにとっては、姿勢の保持すら困難な場合もあります。
今回は、資格取得を目指して学びを深める学生や、新人セラピストに向けて、現役理学療法士が「端座位」に必要な機能やリハビリにおける応用などについて解説します。
端座位(たんざい)とは
端座位とは、ベッドや椅子などの端に足を降ろして座る姿勢のことです。
一般的にはあまりなじみのない言葉ですが、リハビリや介護分野ではよく使われており、他の座位姿勢と区別されています。端座位の他、座位姿勢には以下の種類があります。
長座位
ベッドや床などにお尻をついて足を伸ばして座る姿勢
半座位
ベッドや車椅子のリクライニングを調整して45°上半身を起こした座位姿勢
起座位
ベッド上で上半身を90°起こし、テーブルにクッションや枕などを置いてそれにもたれかかる座位姿勢
椅座位
椅子や車椅子に座り、足の裏が床に、背中が背もたれにしっかりと着いている座位姿勢
一口に座位といっても複数あるため、患者さんの身体レベルに合わせてリハビリに導入することが大切です。
端座位をとるために必要な機能
端座位姿勢を保持するには、ある程度の身体機能が必要です。端座位をとるために必要な機能についてまとめました。
関節可動域
端座位には、適切な座位アライメントを保つための関節可動域が必要です。矢状面から見て、耳孔・肩峰・大転子が一直線になっている、骨盤の傾斜は中間位、膝関節は90°屈曲位をとることが、一般的に理想的な端座位姿勢といわれています。
もし、膝や股関節が曲がらなかったり、脊柱を伸展できなかったりすれば、端座位を保持することは難しいでしょう。
筋力
端座位は重力に抗した姿勢であるため、保持するための筋力が必要です。
特に体幹支持に関わる脊柱起立筋、多裂筋、最長筋、腹直筋、腹横筋、内外腹斜筋など、姿勢保持筋の活動は欠かせません。また、骨盤前傾位を保持する腸腰筋、大腿直近など下肢の筋力も重要です。これらの筋肉がバランス良く働くことで端座位が保たれるのです。
感覚
適切な端座位を保つためには平衡感覚、坐骨や足底から入力される表在・深部感覚のフィードバックが重要です。
脳血管疾患や脊髄損傷などにより感覚が障害されると、自分の座っている位置や座面の圧などが感知できないため、適切な座位を保つことは難しいでしょう。
認知機能
運動機能や感覚に問題がなくても、認知機能が低下していれば端座位を保持することはできません。
特に、認知症で急に立ち上がってしまったり、注意が散漫してしまったりする場合は端座位保持が困難になり、リハビリがうまくいかないことも多いでしょう。
端座位のメリット
リハビリ場面では患者さんを端座位にする機会が多くみられますが、どのようなメリットがあるのでしょうか。端座位のメリットについてまとめました。
呼吸がしやすい
端座位は、臥位姿勢と比べて胸郭が圧迫されないため、呼吸がしやすいのがメリットです。
また横隔膜が重力によって下がるため、吸気しやすくなるという効果も期待できます。呼吸器疾患を抱えている患者さんには、端座位でのリハビリが望ましいことも多いでしょう。
覚醒する
頭部を起こすことによって、脳が活性化して覚醒するというメリットもあります。
臥床時間が長く、傾眠傾向な患者さんのリハビリでは、端座位で覚醒レベルを上げることで効率的なメニューを組めるでしょう。
活動性が向上する
端座位は姿勢保持筋が活動したり、血液の循環が良くなったりと、活動性の向上につながります。
高齢者の寝たきりや廃用症候群を防ぐために、端座位保持は有効な手段の1つといえるでしょう。
端座位のデメリット
端座位のメリットについて紹介しましたが、患者さんの症状によっては、端座位でのリハビリにリスクを伴う場合もあります。リハビリで注意したい端座位のデメリットについてまとめました。
不安定
端座位は、臥位と比べると支持基底面が小さいため、不安定な姿勢といえます。
患者さんによってはバランスを崩しやすく、転倒してしまうこともあります。患者さんが姿勢の保持が可能なのかを見極めたり、常に介助できる位置に着いたりするような配慮が必要です。
殿部に褥瘡のリスクがある
長時間の端座位は、坐骨の圧が強まり、殿部に褥瘡が生じてしまうリスクが高まります。
特に感覚障害や自身で体位変換できない患者さんには注意が必要です。
臥位よりも血圧が下がりやすい
臥位から急に端座位をとると、起立性低血圧により血圧が下がってしまうことがあります。臥床時間が長い、血圧を下げる薬を服用している、自律神経のバランスが乱れているといった患者さんには特に注意が必要です。
端座位のリハビリ応用
リハビリでは端座位から応用して、さまざまな訓練を取り入れることが可能です。例えば端座位で下肢を挙上したり、遠方へリーチしたりすれば、体幹筋やバランス能力のトレーニングになります。また、上肢を挙上させながら脊柱伸展活動を促せば、姿勢の改善にもなるでしょう。
筆者も病院勤務時代に、体幹の支持性が乏しい片麻痺患者さんに対して、端座位での訓練を積極的に実施していました。
風船バレーや遠方リーチなどの応用も取り入れて、車椅子座位の姿勢の改善から、離床時間が拡大したことを記憶しています。特に介助が必要な入院患者さんのリハビリに対して有効な姿勢なので、応用動作も取り入れながら実施するとよいでしょう。
端座位の特性を理解してリハビリに取り入れよう
健常者なら当たり前にできる端座位も、患者さんにとっては保持困難にもなる場合も少なくありません。ですが、リハビリにおいてはメリットやさまざまな効果も得られやすい姿勢ともいえます。特性を理解し、リスク管理に留意しながら患者さんの状態を見極めたうえで、リハビリに導入してはいかがでしょうか。
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rana(理学療法士)
総合病院やクリニックを中心に患者さんのリハビリに携わる。現在は整形外科に加え、訪問看護ステーションでも勤務。 腰痛や肩痛、歩行障害などを有する患者さんのリハビリに日々奮闘中。 業務をこなす傍らライターとしても活動し、健康、医療分野を中心に執筆実績多数。
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