嚥下訓練「パタカラ体操」のやり方と効果を解説【自宅で実践!】
公開日:2024.03.07
文:tokoshi(言語聴覚士)
年齢を重ねるにつれて「食事中に、ムセることが多くなった」「食べ物が飲み込みにくくなった」と感じるようになった方もいるのではないでしょうか。
年を重ねると徐々に、食事をするために必要な筋肉が衰え始めることから、誤嚥のリスクが高くなります。誤嚥やムセを予防するためにも日々の嚥下訓練が大切です。
本記事では、嚥下訓練の1つである「パタカラ体操」の効果的なやり方について詳しく解説します。
嚥下訓練となる「パタカラ体操」とは
パタカラ体操とは、「パ」「タ」「カ」「ラ」の音を声に出すことで、食事をする際に使う筋肉を鍛える体操です。
病院や介護施設でも行われている「嚥下訓練」であり、継続して行えば効果が実感できるようになるでしょう。パタカラ体操を行うことで、誤嚥を防いだり唾液の分泌を促したりできるため、より「安全に食事ができる」といった効果が期待できます。
効果的なパタカラ体操のやり方
パタカラ体操を効果的に行うには、下記の順に実践してみるとよいでしょう。
2. 「パタカラ」を連続で発音する
3. 「パタカラ」を含む文を発音する
1.単音を連続で発音する
まずは、パ・タ・カ・ラを1文字ずつ連続して発音してみましょう。
パ、パ、パ…
タ、タ、タ…
カ、カ、カ…
ラ、ラ、ラ…
パ・タ・カ・ラそれぞれ5回〜10回ずつ、なるべく速い速度で発音すると効果的です。
2.「パタカラ」を連続で発音する
次に、「パタカラ」を連続して5回発音します。
パタカラ、パタカラ、パタカラ…
1文字ずつよりも少し難易度は上がりますが、速度は変えずに「はっきりと発音」することを意識しましょう。
3.「パタカラ」を含む文を発音する
最後は、パ・タ・カ・ラを多く含んだ文を発音します。
ぱんだのたからもの
たぬきがタンバリンをたたいた
カラスがカアカア、かきくけことないた
ラッコがらんらん、らっきょうをたべた
こちらも、はっきりと発音することを意識することで、口腔内の筋肉にアプローチできます。
基本的には単音の発音は比較的容易で、単語や文になるにつれて難易度が上がっていくため、無理はせずにできるものから始めることをおすすめします。
パタカラ体操の効果
では、パタカラ体操を行うことで「どの部分の筋肉」に効果があるのでしょうか。詳しく解説します。
パ|食べ物を取り込む力に効果的
「パ」の発声は、口を閉じる際に働く筋肉を使います。この筋肉を鍛えることで、食べ物の取りこぼしを防げます。パタカラ体操の際は、唇をしっかりと閉じた状態から破裂させるように発音できるとよいでしょう。
タ|食べ物を押しつぶす力に効果的
「タ」は、食べ物を押しつぶしたり飲み込んだりする際に働く舌の筋肉を使います。舌の筋肉を効果的に鍛えるために、パタカラ体操時は、舌を上あごにしっかりとくっつけて発音できるとより効果的です。
カ|食べ物を飲み込む力に効果的
「カ」は、飲み込む際に働く喉の奥の筋肉を使います。この筋肉と「タ」を発音する際に使う筋肉を鍛えることで、誤嚥やムセ予防につながります。パタカラ体操時は、「喉の奥を閉じる」ように意識をして実施できるとよいでしょう。
ラ|食べ物をまとめる力に効果的
「ラ」は、食べ物をまとめる際に働く舌の筋肉を使います。この部分の舌の筋肉を効果的に鍛えるために、パタカラ体操時は、舌をしっかりと丸めて勢いよく発音することをおすすめします。
パタカラ体操に関するよくある質問
パタカラ体操を実施する際によくある質問について、嚥下訓練の専門である言語聴覚士がお答えします。
どのタイミングで実施したらよい?
パタカラ体操は、食事前に行うのが理想です。パタカラ体操で事前に口腔内の筋肉を動かしておくことで、食事時の誤嚥やムセの予防につながります。
1日何回程度行えばよい?
朝食前・昼食前・夕食前の1日3回程度行えるとよいでしょう。3回以上行っても問題ありませんが、やりすぎもよくありません。体調に合わせて適宜、頻度や回数を調整しましょう。
実施時に気をつけることは?
パ・タ・カ・ラの発音時に鍛えられる筋肉を意識して、発音するとよいでしょう。たとえば、パの場合は「唇」、カの場合は「喉の奥」など、それぞれの筋肉を意識することでより効果的に嚥下訓練を行えます。
パタカラ体操を継続するためのコツは?
パタカラ体操は、数日続けただけでは、あまり効果を実感しにくいものです。長く続けることで徐々に効果が現れるため、継続が大切です。習慣になるまで、スケジュール帳やメモに記載しておいたり、楽しく実施ができるように専用のアプリを活用したりすると比較的継続しやすくなります。自宅でのスキマ時間に、チャレンジしてみましょう。
パタカラ体操で誤嚥予防をしよう
「パタカラ体操」を行うことで、食事中のムセや誤嚥の予防が期待できます。食事は私たちにとって、生きるために重要な行為でもあり、生きがいにもなるものです。年齢を重ねて食事を楽しめるように、早い段階から日常生活に嚥下訓練を取り入れてみてはいかがでしょうか。
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tokoshi
言語聴覚士
回復期で失語症と高次脳機能障害を中心としたリハビリ業務に携わる。その後転職し、看取り施設で「最期の食事」を言語聴覚士として支援。現在は訪問リハビリやデイサービスでリハビリをしながらライターとしても活動しています。
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