管理栄養士の臨地実習を乗り切るために!病院での実例や心構えを紹介
公開日:2024.01.10
文:広田千尋(管理栄養士)
管理栄養士養成施設では、臨地実習(校外実習)が必須となっています。「どんな感じだろう?」「怖いなぁ」などと、不安に思う学生さんも多いかと思います。でも、実際に臨地実習でどのようなことが行われるのかを知ることができれば、少しでも不安をやわらげることができるはずです。
筆者は病院や保育園で働いていたときに、毎年のように実習生を受け入れていました。実は、実習を受け入れる側も、「どんな学生さんなんだろう?」「しっかり学んでもらえるかな?」とドキドキしているものです。
今回は実習を受け入れる側の目線から、臨地実習に関するさまざまなことをお伝えするので、ぜひ参考にしてみてください。
臨地実習(校外実習)とは
臨地実習(校外実習)は管理栄養士養成施設で必須科目となっており、校外で実践的な知識や技術を学ぶために行われています。実習が行われるのは、原則として3~4学年の時期です。場所は、病院、介護老人保健施設、保健所、保健センター、社会福祉施設などがあります。
臨地実習を通して、現場で実際にどのようなことが行われているかを体験することで、より専門的な力が身につくようになります。実際に実習に来ていた学生さんも、「学校で学んだこととイメージが違った」「実際にやってみると難しいことがわかった」など、体験を通してさまざまなことを吸収していました。
実際の現場を体験できるチャンスは、そう多くありません。ぜひ臨地実習を通して、さまざまな管理栄養士の現場を知ってみてください。
病院での臨地実習の1日のスケジュール
病院ではどのようなスケジュールで実習が進められるのでしょうか。
まず病院では、カンファレンスや食事の時間が決まっているので、臨地実習もそれに合わせたスケジュールになります。
下記に1日の流れの例を記載しています。実際のスケジュールと内容については、受け入れ先の病院や学校からの指定などによって異なるため、参考程度にご確認ください。
9:00 | 朝礼、1日の流れの確認 |
---|---|
9:15 | 昼食の調理補助(切り込み、下処理) |
10:00 | 栄養指導見学 |
11:30 | 検食、休憩 |
12:30 | 昼食見学 |
13:00 | 実習ノート記録、課題の取り組み、夕食調理補助(切り込み、下処理) |
14:00 | カンファレンス、会議、NST回診、褥瘡(床ずれ)回診見学 |
15:00 | 栄養管理計画書・栄養指導報告書などの書類作成見学 |
16:00 | 濃厚流動食の確認、発注などの見学 |
16:30 | 実習ノート記録 |
17:00 | 終了 |
学生さんが見学できる仕事は一緒に来てもらう形で実習が進められますが、学生さんが立ち入れない場面や、仕事を進めなければいけない場面もあるため、その間は厨房での調理補助や自己学習の時間にあててもらっていました。数日もすれば1日の流れをつかめてくると思いますので、あまり構え過ぎなくて大丈夫だと思います。
臨地実習の内容
先ほどお伝えしたスケジュールをもとに、実際にどのように学生さんに関わってもらっていたかを紹介します。
栄養指導やカンファレンスの見学
まず臨床に携わる仕事として、栄養指導、カンファレンス、回診などを見学してもらっていました。
栄養指導は患者さんのプライベートの内容をお話しさせていただくため、患者さんに了承を得てから同席してもらいます。実際には見学がほとんどですが、関係性のよい患者さんとは学生さんに雑談などをしてもらうこともありました。患者さんとお話しするのは緊張する学生さんが多いため、事前に話す内容を考えてもらうようにしていました。
カンファレンスや回診では、入院患者さんの栄養管理の仕方について学んでもらっていました。何を話しているかわからない部分もあるかもしれませんが、さまざまな職種が栄養管理に関わっていることや、管理栄養士が多職種とどのように連携しているのかを知ってもらえたらと思います。
昼食見学
食事の場面を観察するのも、大切な仕事の1つです。
「食事の様子」というと、「好き嫌いや食事がおいしいかどうかをチェックしているのかな?」と思うかもしれませんが、それだけではありません。飲み込みづらさを感じている患者さん、食事量が低下している患者さんなどは、直接食事の様子を見て、可能であればお話を伺うことで、栄養管理のヒントにします。
どのような点を管理栄養士がチェックしているのかを考えながら、見学してみてください。
厨房での調理作業
時間が空いたときは、厨房で調理作業をしてもらうこともあります。
病院や施設によって、献立の内容や調理の仕方、嚥下食の作り方などが異なるので、さまざまなパターンがあることをぜひ知ってほしいと思います。
厨房は決められた時間に給食を提供するため、時間との戦いでとにかく忙しい場所です。学生さんは、うまくできなかったり失敗したりすることがあるかもしれません。しかし、学生さんが大量調理に不慣れなことは、厨房スタッフもわかっているので、できないからといって自信をなくさないでください。
学生さんが来ると、厨房の雰囲気がパッと明るくなることもありますし、人手不足のところも多いので助かる場面も多々あります。ぜひ大量調理のプロたちからさまざまなことを学んでください。
課題の取り組み
実習が始まる前や実習中に、学生さんに課題を提出してもらうことがあります。課題の内容はさまざまで、病気に関する事前学習や、献立作成・展開、栄養指導に使用する資料作成などがありました。
課題についてはこちらでチェックを行い、実際に考えてもらったメニューをおやつとして提供する機会や、作成した資料を使って発表してもらう機会なども設けていました。実学習したことを形にできるよい機会なので、ぜひ積極的に取り組んでもらえたらと思います。
臨地実習の心構え
臨地実習は、受け入れる側もさまざまな準備をしています。業務の合間に行っていることでもあるので、ぜひお互いが気持ちよく実習を進められるように、学生さんにも知っておいてほしいことがいくつかあります。
学校で実習の心構えや準備について教わっているかもしれませんが、受け入れる側の目線からも、心構えをお伝えしたいと思います。
事前準備をしっかり行う
事前準備について、おそらく学校側から、「病院や施設の特徴を調べること」「必要な書類」などが知らされているのではないでしょうか。
やはり受け入れる側としても、しっかり準備をしてもらいたいところです。例えば診療科は何があるのか、1日何食提供しているのか、といったことは、病院のウェブサイトなどで情報収集できます。そうした情報を知っている様子がないと、「あまり興味がないのかな?」と、少しやる気をそがれてしまうのが本音です。
また必要な書類について、例えば腸内細菌検査などは、提出がないと受け入れが難しい大切な書類です。チェックリストなどが学校から用意されていると思いますので、漏れなく準備しましょう。
マナーを守る
社会人としてのマナーは、今後働くうえでぜひ身につけてほしいものです。時間を守る、指定された清潔感のある服装をする、あいさつやお礼をきちんとする、といった基本的なことばかりですが、いずれも社会人として大切なマナーです。
特にあいさつやお礼は、フレッシュな学生さんにはぜひ張りきってもらえたらうれしいな、と思う部分です。やはり、あいさつやお礼がしっかりしていると、受け入れる側として気持ちがよいものです。緊張してしまうかもしれませんが、あいさつの練習だと思って、ぜひがんばってみてください。
体調管理をする
実習中は、特に体調管理に気を配ってほしいと思います。慣れない実習中は、緊張、ストレス、疲れなどから体調を崩してしまいやすいため、しっかりと睡眠をとって休養しましょう。
また厨房に入る場合は、生の肉や牡蠣を食べてはいけない、といったルールが設けられている場合もあります。衛生面への配慮が必要とされるため、しっかりルールを守るようにしましょう。
ほかにも、臨地実習で知った情報を口外しない、SNSに書き込まないといった点も気をつけるべき点です。学校からも厳しく指導されている部分かと思いますが、患者さんの個人情報や病院の機密事項の流出、また学校への信頼も欠くことになるため、改めて気をつけていただきたいと思います。
緊張していたらもったいない! ぜひ学びを深めよう
この記事をここまで読み進めた学生さんは、おそらく実習に対する緊張や不安が強いのではないでしょうか。しかし、緊張ばかりしていると視野が狭くなってしまうものです。せっかくの学びの機会を活かせるように、この記事が、少しでも緊張をほぐすのに役立ってくれればと思っています。実りのある実習になることを、陰ながら応援しています。
広田 千尋
管理栄養士
病院や保健センター、保育園などに13年間勤務した後に独立。現在はフリーランスとしてコラム執筆やレシピ作成を中心に活動中。インターネット上にたくさんの情報があふれるなか、専門家として正しい情報をわかりやすく伝えている。
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