拘縮とは?概要や原因、予防方法などについて解説
公開日:2024.03.01 更新日:2024.05.29
文:rana(理学療法士)
「拘縮(こうしゅく)」という言葉をご存じでしょうか? リハビリ中や介護現場などで耳にしたことがあるかもしれません。医療用語ということもあり、聞き慣れない言葉ですが、拘縮とはどのようなものなのか、その状態や対処法を知っておくことで、健康維持に役立ちます。今回は、現役理学療法士が、拘縮の原因や予防方法などについて詳しく解説します。
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拘縮(こうしゅく)とは?
拘縮とは、関節がなんらかの原因によって固まり、間節の動きが制限される病態のことです。
例えば、正常であれば膝はまっすぐに伸びますが、曲がったまま伸びないような状態は拘縮している可能性が高いといえるでしょう。
似たような病態に「固縮(こしゅく)」と「強直(きょうちょく)」があります。固縮は関節を動かす際、常に強い抵抗がある状態で、パーキンソン病などにみられる症状です。この場合、拘縮のように、必ずしも関節の動きに制限があるわけではありません。
強直は拘縮よりも重度な状態で、関節の動きが全く失われた状態をいいます。拘縮は筋肉や靭帯など、関節の外にある組織が固まって起こる制限ですが、それに対し強直は骨や軟骨、関節包(関節を包む膜)などの関節内にある組織が原因で生じるため、ほとんど動きが生じません。
拘縮の原因
拘縮は、ケガや病気などで関節を動かす機会が減ってしまうことで起こります。特に骨折でギプスを巻いたり、寝たきりで動かない状態が続いたりすると拘縮してしまうことが多いでしょう。
関節を動かさないでいると、筋肉や皮膚、関節包(関節を包む膜)といった組織にコラーゲン線維が増えて固まってしまい、動きが制限されてしまうのが原因です。
また、火傷や皮膚移植などによる、皮膚の瘢痕化(はんこんか)によって拘縮が生じてしまう場合もあります。
拘縮しやすい関節について
人間の体には細かく分けて約260個の関節が存在しています。なかでも拘縮しやすい関節を大まかに挙げ、生活上で困る動作についてまとめました。
手指
手指が拘縮すると、物をつかむ動作に支障をきたします。特に小銭やボタンなど、細かい物を拾い上げることが困難になるでしょう。
また、手を握った状態で拘縮してしまうと、手のひらに汚れや垢がたまり、清潔が保ちにくくなります。
肩・肘
肩や肘の動きが制限されると、高い物に手が届かなくなったり、腕が背中に回らなくなったりします。特に着替えや洗体・洗顔、食事動作など、生活動作に大きな支障をきたします。
股関節
股関節の動きが制限されると、浴槽をまたいだり、ズボンをはいたりする動作に支障をきたします。重度になると、歩いたり、座った姿勢を維持したりすることも困難になり、移動能力が大きく低下してしまうでしょう。
膝
膝の曲げ伸ばしが制限されると、しゃがみ込みや階段の上り下りなどの動作がしにくくなります。さらに拘縮が進行すると歩行や立ち座りにも支障をきたし、移動能力が大きく低下してしまうかもしれません。
足首
足首によくみられるのは、「尖足(せんそく)」という、つま先が上に返らなくなる拘縮です。重度の尖足になってしまうと、歩くことはもちろん、立った状態を維持することすら困難になってしまいます。
背骨
背骨にある椎間関節(ついかんかんせつ)が拘縮してしまうと、体を捻ったり、反ったりする動きが制限されてしまいます。重度になると、寝返りや起き上がりといった動作に支障をきたし、食事や着替え、トイレ、入浴といった身の回りの動作すら困難になってしまうでしょう。
拘縮を予防するには
拘縮を予防するには、普段から適度に関節を動かすことが大切です。基本的に日常生活を普通に送っていれば、拘縮が進行していくことはほとんどありません。
ですが、ギプスなどで関節を固定していたり、寝たきりの生活を送っていたりすると、拘縮になる可能性が高まります。できるだけ、活動性を維持して体を動かすことが重要です。
自分自身で関節を動かすのが困難な場合は、病院や介護施設などでリハビリを受けて拘縮を予防するようにしましょう。
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拘縮した関節をケアするには
拘縮してしまった関節には、負担をかけないような適切な対応が必要です。拘縮した関節に対するケアについてまとめました。
関節が楽な位置にポジショニングをとる
拘縮した関節の負担を軽減するには、枕やクッションなどを使うとよいでしょう。例えば膝や股関節の拘縮で、足をまっすぐに伸ばして横になることができない場合、膝の下や足の間に枕やクッションなどを入れると関節が安定します。
背骨が曲がってしまっていれば、背部にクッションを入れることで楽な姿勢をとることができるでしょう。拘縮した関節の下に支えを作ってあげることが、楽な位置を保つポイントです。
杖や補助具などで負担を減らす
拘縮で歩くことに支障をきたしている場合は、杖や歩行器などを使用するとよいでしょう。特に膝や股関節に拘縮があると痛みを伴うことも多く、スムーズに歩くことができません。
体重がかからないように、杖や歩行器を使って関節へ負担をかけないことが大切です。また、手指の拘縮で生活に支障をきたしている場合、ボタンエイドやキャップオープナーなどの自助具を使用するとよいでしょう。
適切な介助を受ける
拘縮が重度で生活動作に支障をきたしている場合は、デイサービスや訪問介護などのサービスを導入した方がよいかもしれません。介護や医療の専門家に依頼することで、関節に負担をかけない生活のサポートを受けることができます。また、拘縮の進行を予防するアドバイスや体操指導などを受けることもできるでしょう。
正しい知識で拘縮の予防とケアを
拘縮は関節を動かさないと進行してしまいますが、状況によっては、予防が難しいこともあります。拘縮がどの関節に発生したかによっても異なりますが、場合によっては日常生活に大きな支障をきたしてしまいます。自分での対応が難しい場合は、早めに病院や施設を利用し、専門家による正しい対処法を受けるようにしましょう。
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rana(理学療法士)
総合病院やクリニックを中心に患者さんのリハビリに携わる。現在は整形外科に加え、訪問看護ステーションでも勤務。 腰痛や肩痛、歩行障害などを有する患者さんのリハビリに日々奮闘中。 業務をこなす傍らライターとしても活動し、健康、医療分野を中心に執筆実績多数。
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