椎間板ヘルニアでやってはいけないことは?悪化させないための予防法についても解説
公開日:2024.07.02
文:伊東浩樹(理学療法士)
腰痛を起こす原因はさまざまありますが、なかでも良く知られている疾患の1つが「椎間板ヘルニア」です。
腰痛の多くが原因不明の「非特異的腰痛」で、原因を特定できるのは全体の約15%です。その内の10%程度を占めているのが、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症です。
今回は原因がわかっている腰痛の1つとして、椎間板ヘルニアの原因や種類に加え、「やってはいけないこと」について解説します。
椎間板ヘルニアとは?
「ヘルニア」とは、椎間板の中心にある「髄核(ずいかく)」と呼ばれる組織が、椎間板を突き破って外に押し出されたことで生じる疾患です。
椎間板は背骨(頚椎、胸椎、腰椎)の間にあり、骨と骨をつなぐクッションのような働きをしています。背骨のいずれかにヘルニアが発生すると「椎間板ヘルニア』と診断されます。
主に20~40代の世代に多く発生するといわれていますが、高齢者でも起こります。
椎間板ヘルニアの種類
上述したように、椎間板ヘルニアには場所によっていくつかの種類があります。椎間板ヘルニアは場所によって症状や対処法が異なるため注意が必要です。
頚椎椎間板ヘルニア
頚椎は、背骨の一番上から7つ分の椎骨(ついこつ)で構成され、「首」の部分に当たります。症状としては、首や肩甲骨、腕の痛みが代表的です。進行すると手足の痺れ等も生じます。
胸椎椎間板ヘルニア
胸椎は、頚椎(首)から下、12個の椎骨で構成されており、症状は「背中」に起こります。足の痺れや脱力などを生じますが、背中の痛みや肋骨部の痛み等も起こります。
腰椎椎間板ヘルニア
腰椎は、胸椎(背中)の下、「腰」の部分に当たります。症状としては、腰や臀部(お尻部分)の痛みが生じるほか、足に力が入らなくなったり、本来の患部とは異なる場所で痛みが生じる放散痛が起きたりします。
また、重たい物を抱えた際などに痛みが強くなることがあります。
椎間板ヘルニアでやってはいけないこと
椎間板ヘルニアと呼ばれる状態になっただけでは、すぐに症状が出るわけではありません。
「やってはいけないこと」をすることで、椎間板から飛び出た髄核が神経を刺激して痛みや痺れなどを起こします。
以下に「椎間板ヘルニアでやってはいけないこと」をまとめました。
長時間の座った姿勢
長時間、座って行うデスクワークや車の運転など、前かがみの姿勢によってヘルニアの症状が出やすくなります。椎間板ヘルニアは、姿勢そのものが悪いことで起こりやすいので注意が必要です。
スポーツ
首や腰、背中をひねったり、大きく動かしたりするような動きや、外から大きな衝撃を受けると、椎間板ヘルニアの症状を招く要因となります。
スポーツでは急な方向転換や、接触プレーが生じやすいため、避けた方がよいでしょう。
重労働
重たい物を持ったりすることが多い場合にも、前かがみの姿勢となり、さらに重さによる負担が背骨にかかってしまいます。
さらに、物を持って方向転換をすると、負担がかかり症状が発生しやすいため、やってはいけません。
喫煙
「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン」に掲載されている研究データによると、喫煙者は、椎間板ヘルニアを発症しやすいとされています。非喫煙者と比べて1.27倍もリスクが高くなると報告されており、禁煙が推奨されます。
また、喫煙経験者よりも現在進行形で喫煙をしている人の方が、腰椎椎間板ヘルニアになりやすいため、注意が必要です。
そもそも椎間板自体には血管がなく、周囲の毛細血管から栄養が供給されています。しかし、タバコに含まれる「ニコチン」が毛細血管を収縮させるため、栄養不足となり椎間板が弱ってしまい椎間板ヘルニアを発生しやすくなります。
椎間板ヘルニアの治療方法
椎間板ヘルニアを起因とする痛みや脱力を治療する方法として、代表的なのはコルセットを装着することや、牽引(けんいん)と呼ばれるリハビリテーションの実施などが挙げられます。
そのほか、痛みを緩和するための鎮痛薬の服薬やブロック注射に加えて、症状がひどい場合には手術が行われます。
椎間板ヘルニアにマッサージは有効?
椎間板ヘルニアの治療としてリハビリテーションを実施する場合、ストレッチや筋力練習などは体の柔軟性や安定性向上につながると報告されていす。
一方でマッサージについては、有用性を示すエビデンスが少なく、最適な方法かどうか判断が難しいところです。
そのため、医師や理学療法士の助言を受けずに、セルフマッサージなどをする際には注意が必要です。コリをほぐしたい場合には、できるだけ痛みが強くならない範囲で足や手のマッサージをすることをおすすめします。
椎間板ヘルニアは悪化させない生活をすることが大切
椎間板へルニアは、やってはいけない動作や姿勢をしてしまうことによって、神経を圧迫して痛みが生じ、日常生活に支障をきたします。なお、椎間板ヘルニアは発症して「3ヶ月以内に吸収される(自然に収まる)例が少なくない」という報告があります。
そのため、医師や理学療法士のアドバイスに基づいて、コルセット着用下で安静に過ごしたり、「やってはいけないこと」を避けたりすることで、症状が治まることもあります。日常生活で悪化予防を心がけ、無理なく過ごしましょう。
■関連記事
坐骨神経痛でやってはいけないこととは?痛みの原因となる疾患やストレッチ方法も紹介
参考
日本整形外科学会
NHK腰痛の危険度セルフチェック
腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン
伊東 浩樹(理学療法士)
理学療法士として総合病院で経験を積んだ後、予防医療の知識等を広めていくためにNPO法人を設立。その後、社会福祉法人にて障がい部門の責任者や特別養護ホームの施設長として勤務。医療機関の設立や行政から依頼を受けての講演、大学、専門学校等での講師なども勤める。
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