言語療法士と言語聴覚士の違いは?ST・PT・OTとの違い・資格を取得するための方法も解説
公開日:2024.09.05
文:tokoshi(言語聴覚士)
リハビリテーション分野でのキャリアを考える際、類似するような資格の違いを把握することが大切です。リハビリテーションに携わる3つの資格に、言語聴覚士(ST)・理学療法士(PT)・作業療法士(OT)がありますが、最近では、インターネットなどで言語療法士と調べる人もいるようです。
本記事では、言語療法士と言語聴覚士の違いについて解説するとともに、各リハビリ職種の違い、さらに資格を取得するためのステップについて紹介します。
目次
「言語療法士」と「言語聴覚士」の違いとは?
結論からお伝えすると「言語療法士」という職業や資格はありません。
言語療法とは、コミュニケーションや飲み込みに問題がある人に対して、機能維持や改善を目的に「言語聴覚士が行うリハビリテーション」のことを指します。実在しない資格名で調べる人がいるのは、他のリハビリ職の名称と混在していると考えられます。
歩く・起きるといった基本動作について理学療法を用いてリハビリする「理学療法士」や、作業療法を用いて日常動作のリハビリをする「作業療法士」は、治療方法がそのまま職種名になっています。
一方で、言語聴覚士は、言語療法を用いたリハビリを行いますが、職種名は「言語聴覚士」であるため、「言語療法士」と「言語聴覚士」で職種名が混在してしまう人がいるのでしょう。
【まとめて解説】言語聴覚士(ST)、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)の違い
続いて、リハビリテーション職として代表的な医療系国家資格である、言語聴覚士(ST)、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)について、それぞれの違いやリハビリ内容、活躍している職場を紹介しましょう。
言語聴覚士(ST)とは?リハビリ内容・勤務先
言語聴覚士(ST)とは、言語障害や言葉の発達の遅れなど、「ことばによるコミュニケーションの問題」に対してリハビリを行う専門職です。
言語聴覚士の主なリハビリ内容は「コミュニケーションの改善」であり、表出面・理解面どちらに問題があるのかを検査したうえで、その人に合ったリハビリ内容を考えます。コミュニケーションの問題の要因が難聴といった「聞こえの問題」の場合は、聴力検査をした後に、補聴器のフィッティングを行うことも言語聴覚士の仕事の1つです。また、加齢や病気によって飲み込みが難しくなった患者さんも言語聴覚士のリハビリ対象となります。飲み込むための機能改善だけでなく、安全に食べられるような食形態の変更や、食事の介助指導なども実施します。
言語聴覚士が活躍する職場は多岐にわたり、医療施設や介護施設、福祉施設、教育機関などさまざまです。成人領域・小児領域ともに需要が高く、自分が専門にしたい分野で活躍しやすい職種といえます。
理学療法士(PT)とは?リハビリ内容・勤務先
理学療法士(PT)とは、寝返る、起き上がる、立ち上がる、歩くなどの「日常動作の専門家」です。
ケガや病気などで日常生活に問題がある人に対して、回復や維持、予防を目的に、運動療法や物理療法などを用いて、自立した日常生活が送れるように支援します。リハビリ内容は、関節可動域の拡大や筋力強化など、運動機能に直接働きかけるリハビリに加え、動作練習や歩行練習といった能力向上を目指すリハビリも行います。
理学療法士が活躍する主な職場として、医療施設や介護施設が挙げられます。また、健康増進、生活習慣病に対する運動指導として、スポーツ現場や産業分野などでも活躍の場が広がっています。
作業療法士(OT)とは?リハビリ内容・勤務先
作業療法士(OT)とは、基本から応用の動作能力、社会の中に適応する能力まで維持・改善し、その人らしい生活を「作業療法」を通じて支援する専門家です。
病気やケガなどで、入浴や着替え、調理など、日常的な作業が困難である人に対して、その人にあった生活環境を加味して、習得支援を行います。リハビリ内容は「日常的な生活の実現を目指す」ものが多く、着脱の練習や家事の練習、買い物のために外出する練習などがあります。
作業療法士の主な勤務先は、医療施設や介護施設以外に、就業・生活支援センターや地域包括支援センターなどの社会活動の場でも活躍しています。
言語聴覚士(ST)、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)になるには?
リハビリテーションに携わる3つの資格である、言語聴覚士・理学療法士・作業療法士は全て「国家資格」です。どの国家資格も「独学で勉強したら資格が取れる」というものではなく、専門の学校・養成校に入り、各職種に必要な知識やスキルを身につけることが受験資格を得る条件となっています。具体的には、座学として幅広いカリキュラムを学びながら、実際に医療機関等で実習を行います。
なお、国家試験を受験するまでに要する期間は、入学する学校・養成所によって異なります。高校卒業者の場合は、3年制〜4年制の大学・短大または養成所に入り、一般の4年制大学卒業者の場合は2年制の大学・大学院の専攻科または専修学校に入り資格取得するのが一般的です。
例外として、言語聴覚士の養成に関わる一定基準の科目をすでに習得している場合は1年制の指定校で受験資格を得られる場合もあります。また、すでに作業療法士の資格を持っている人は、養成校で2年以上学ぶことで、理学療法士の受験資格が得られ、ダブルライセンスを取得できます。自身の状況を確認したうえで、最適なコースで資格取得を目指しましょう。
自分に合ったキャリア選択をしよう
言語療法士という資格はありません。リハビリテーションに携わる資格は言語聴覚士・理学療法士・作業療法士の3つです。言語聴覚士は言葉や聞こえ、飲み込みに関するリハビリを専門としています。同じくリハビリ職である理学療法士は日常動作の回復や維持を目的としたリハビリを行い、作業療法士は日常生活の動作や社会適応をサポートします。それぞれ分野が異なるため、違いを理解しておくとよいでしょう。リハビリテーションの専門家として活躍するためには、自分の興味や目標に合った職種を選び、必要な知識と技術を身につけることが大切です。本記事を参考に今後のキャリア選択を検討してみてはいかがでしょうか。
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参考
tokoshi
言語聴覚士
回復期で失語症と高次脳機能障害を中心としたリハビリ業務に携わる。その後転職し、看取り施設で「最期の食事」を言語聴覚士として支援。現在は訪問リハビリやデイサービスでリハビリをしながらライターとしても活動しています。
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