パーキンソン病の患者さんが自宅でできるリハビリ体操
公開日:2015.04.02 更新日:2015.04.09
モハメド・アリ、マイケル・J・フォックス、江戸川乱歩……。珍しい病気と思われがちなパーキンソン病ですが、著名な罹患者は意外に多いものです。日常生活に支障が出る病気であるため、適切なリハビリを繰り返し、病気の進行を抑えることが大切です。
そこでご紹介したいのが、自宅でできる「パーキンソン体操」。この体操を知ることで、患者さんの生活をいきいきとしたものへと導けるかもしれません。
パーキンソン病と闘った有名人:マイケル・J・フォックスのカムバック
難病指定されているパーキンソン病ですが、なかには病気と闘い、見事に復帰を果たした人もいます。その代表的な人物が、カナダ出身の人気俳優マイケル・J・フォックスです。彼は、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズで主演を務めた大スターですが、前途洋々であったはずの人生に暗い影を落としたのが、パーキンソン病でした。
1990年頃から病気の兆候を感じ始め、その後に発覚。当時出演していた作品も降板となり、休業を迫られる事態へ陥りました。彼は病気に苦しみながらも、難病を克服するために財団「The Michael J. Fox Foundation」を設立。そして、同じ病の人を救うべく、病気の撲滅運動を始めました。その後、マイケルは闘病を経て、華麗に復活を果たします。50代にして主役の座に返り咲いた彼の姿は、同じ病に苦しむ世界中の人に、大きな希望を与えました。
パーキンソン病の原因と症状
パーキンソン病とは、脳内の黒質と呼ばれる部分の神経細胞の減少により、ドーパミンが不足して起こる病気です。ドーパミンは、運動がスムーズに行えるように働く神経伝達物質の一種。ドーパミンが減ることで、脳からの指令が筋肉に伝わりにくくなり、日常生活での動きにさまざまな問題が生じます。
症状は主に以下の4つに分類されます。
- 振戦(しんせん)
手足がふるえる。何もしていないときに症状が目立ち、何かしようとすると止まる。 - 無動(むどう)
動きが遅くなったり、ぎこちなくなったりする。 - 筋固縮(きんこしゅく)
手足の筋肉がこわばる。患者さんの手を持ち前後にゆっくり動かすと、カクカクとした抵抗感がある。 - 姿勢反射障害(しせいはんしゃしょうがい)
バランスがとりにくくなり、転倒しやすくなる。
これらの症状以外にも、立ちくらみ、便秘、頻尿、意欲低下などの症状が起こることもあります。また、この病気で特徴的なのが、日内格差が表れやすいことです。薬の効きめが切れてくると症状が悪くなる「ウェアリング・オフ現象」や、薬の服用時間に関係なく突然症状が良くなったり、悪くなったりする「オン・オフ現象」などがあります。
日常生活をリハビリにする「パーキンソン体操」
病気の進行を抑え、自立生活を維持するためには、できるだけ早期にリハビリテーションを行うことが大切です。そこでポイントとなるのが、日常生活をリハビリにする「パーキンソン体操」です。
体操を始める前に環境を整えて
体操を行う前に欠かせないのが、転倒や怪我を防ぐための環境整備です。患者さんには脱げやすいスリッパは避け、かかとのあるバレエシューズなどを履くように促します。そして、転倒を招く障害物などを取り除き、通路を広くしておきましょう。
また、症状の度合いやオン・オフの状態にあわせた環境設定を行うことが必要です。転倒や事故などのリスクを下げるためにも、基本的には能力が低いときにあわせて設定することをおすすめします。
顔の運動
- 口を大きく開いたり閉じたりする
- 頬をふくらませる
- 顔をしかめたりゆるめたりする
- 口を左右に動かす
- 目を開いたり閉じたりする
首と上半身の運動
- 首を前後左右にふる
- 手をグーやパーにする
- 両手を組み、腕を上げたり下ろしたりする
- イスに座って背筋を伸ばし両腕を広げる
- イスに座った状態で、背もたれを利用して体を左右にひねる
下半身の運動
- 床に線を引いてまたぎながら歩く
- あおむけに寝て両足を曲げてお尻を上げる
- あおむけに寝て自転車をこぐように両足を回す
- あおむけに寝て両足を左右に倒す
身の回りのことは自分でする
衣服の着脱、調理・後片付け、掃除、洗濯など、身の回りのことはできるだけ自分で行い、これまでと同じように生活を送りましょう。そして、仕事はなるべく続け、社会と関われるように外出することも大切です。体が思うように動かせないと意欲も低下しがちですが、積極的に体を動かすことで前向きになり、運動能力の低下も予防できます。
リハビリを楽しむ気持ちが回復へつながる
マイケル・J・フォックスのように、闘病を経て復活を遂げることは不可能ではありません。自立生活を維持し、前向きに日常生活を営む患者さんは数多くいます。大切なのは、リハビリを楽しむ気持ち。思いどおりに進まないときも諦めず、ポジティブに活動を続けることが回復へとつながるのです。
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