リハビリに取り入れたい舌筋トレーニング! 手軽に使える「あいうべ体操」とは
公開日:2015.11.19 更新日:2015.12.14
高齢の患者さんに特に多い口呼吸。これは舌筋低下による影響が考えられます。口呼吸は免疫低下につながるため、予防や改善に役立つリハビリを取り入れたいところ。そこでおすすめなのが、手軽にどこででもできる「あいうべ体操」です。口呼吸の改善は誤嚥予防にもなるため、短時間でできるトレーニングとしてぜひ取り入れてみませんか?
口呼吸が引き起こす影響
いつの間にか口が「ぽかん」と開いてしまう人は、無意識のうちに口呼吸をしています。最大の弊害は、咽頭リンパ組織の乱れや鼻粘膜の萎縮、口腔内雑菌の繁殖によって、免疫異常が引き起こされること。歯周病、ドライマウス、顎関節症や虫歯といった歯科口腔系疾患をはじめ、アレルギーの悪化につながることも。さらに、免疫の低下によって風邪のような感染症を引き起こしやすくなるともいわれており、花粉症や鼻炎、胃炎、大腸炎や咽頭炎などの炎症状態を誘発する要因でもあります。そのほか、無呼吸症候群やいびきも、口呼吸による影響が大きいといわれます。さらに最近では、こうした身体のトラブルに加え、うつや全身倦怠感とも関連があることがわかっています。
さまざまな症状の要因となる口呼吸は、本人の自覚がないことも少なくありません。また普段は口を閉じている人でも、睡眠中は口呼吸になっている場合があります。口を閉じたらあごにしわがよる、口角の高さが違う、下唇が分厚い、目の大きさが違う、あごがたるんでいる、舌に歯形がついているなどが、口呼吸であることを見分けるポイントです。患者さんの口呼吸を改善し、体調管理に役立てましょう。
口呼吸改善には舌の筋トレを
口呼吸になってしまう原因のひとつが、舌低位です。横紋筋である舌筋の低下によって起こる舌低位を改善するには、舌筋のトレーニングが必要となります。特に高齢者や嚥下機能が低下した患者さんには積極的に取り入れ、舌の運動機能向上を意識しましょう。
また口呼吸は患者さんの“むせ”が進んだ際、食物や汚れた唾液を気管に入れることで発症する「誤嚥性肺炎」を引き起こす要因になることも。舌低位の改善と、鼻からの呼吸をトレーニングすることで、嚥下のリスクを軽減することが大切です。
手軽にできる「あいうべ体操」
舌の筋トレにはいろいろありますが、なかでも注目したいのが「あいうべ体操」です。福岡在住の歯科医師で、みらいクリニック院長の今井一彰先生が考案し、臨床に取り入れながら広く提唱されています。大きく口を動かすだけという簡単な動作で、だれでも取り入れやすいのが特徴です。
やり方は「あー、いー、うー」と口を動かし、最後は「べー」と舌を下につき出します。この4つの動作を順に数回繰り返すだけ。声を大きく出す必要はありませんが、大きく口を動かすように指示しましょう。1語につき4秒前後かけて、ゆっくりと行うのがポイントです。
基本は上体を起こしてのトレーニングとなり、いつどこで行っても構いませんが、唾液の分泌が促されるため、食事前や歯磨きの前後に行うのがおすすめ。効果を高めるためにも、1日30回を目指して行ってください。日ごろ使わない筋肉を動かすため、動作に疲れる患者さんの場合は数回に分けて行うとよいでしょう。
とはいえ、無理は禁物です。顎関節症の患者さんや、あごを大きく開けることで痛みを訴える患者さんの場合は回数を減らすか、関節に負担がかからない「いー、うー」のみを繰り返します。指示も簡単であるため、介護現場のグループリハビリにも使いやすい方法です。
鼻呼吸の効果
舌の筋トレを継続して行うことによって、舌位が上がり口呼吸から鼻呼吸へと改善します。舌位の正しい位置は上顎(硬口蓋)に舌先がついている状態です。一見、口が閉じているようでも、舌が歯に触れていたり、下方にだらりと落ちていたりする状態は舌低下だといえます。誤嚥のリスクの軽減だけでなく、歯科疾患の改善や免疫機能の向上など、さまざまな効果が期待できる「あいうべ体操」。二重あごの解消や免疫力アップといった、うれしい副次効果もあるそうです。患者さんと一緒に口呼吸改善を始めてみませんか?
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