理学療法士はもうオワコン?リハビリ職の現状と今後の生存戦略をご紹介
公開日:2024.11.21
文:内藤 かいせい(理学療法士)
理学療法士が「オワコン」という噂をよく聞くものの、それが本当か気になる方も多いのではないでしょうか。オワコンの定義によりますが、理学療法士がそれに当てはまるかは、一概にはっきりいえません。その理由として、理学療法士には不安点もある一方で、メリットもあるからです。
この記事では、理学療法士がオワコンといわれる理由や、そのなかで生き残るための方法をご紹介します。リハビリ職の現状を把握することで、今後のキャリアプランを考えるきっかけとなるでしょう。
理学療法士がオワコンといわれる理由とは?
理学療法士がオワコンといわれる理由には、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、その理由についてみていきましょう。
理学療法士の人数が年々増加している
オワコンといわれる理由の1つとして、理学療法士の人数が年々増加している点があげられます。日本理学療法士協会の統計によると、2012年以降の理学療法士の国家試験合格者数は、毎年約9,000〜1万人となっています。2013年の理学療法士の累計が約10万人であるのに対して、10年後の2023年は倍以上の約21万人となっているのです。
この理学療法士の増加によって競争が激化しやすくなり、同時に職種としての価値が相対的に低下するという懸念点があります。
ほかの医療職よりも給料が低い傾向にある
ほかの医療職よりも給料が低い傾向にある点もあげられます。厚生労働省による調査によると、おもな医療職の平均給料と年収は以下の表のとおりです。
職種 | 平均給料 | 平均年収 |
---|---|---|
医師 | 約109万円 | 約1,436万円 |
薬剤師 | 約41.8万円 | 約578万円 |
看護師 | 約35.2万円 | 約508万円 |
准看護師 | 約28.7万円 | 約407万円 |
放射線技師 | 約36.7万円 | 約537万円 |
臨床検査技師 | 約35.1万円 | 約508万円 |
理学療法士 | 約30.1万円 | 約432万円 |
このように、ほかの医療職と比較すると理学療法士の給料は低めといえます。この給料の低さによって理学療法士の不満が募り、オワコンといわれるようになったと予想されます。
昇給しにくい
理学療法士はほかの医療職よりも給料が低いことと関連して、昇給しにくい点もあげられます。理学療法士が昇給しにくい理由としては、以下のとおりです。
● 診療報酬の点数が比較的低く設定されている
● 提供できるリハビリの数には限界がある
● 理学療法士の人数が増えている
このように、理学療法士の給料には診療報酬が強く関わっています。患者さんに提供できるリハビリ単位数には限りがあるため、理学療法士1人が稼げる額には限界があります。そのため、どんなにリハビリのスキルを高めたり、成果を出したりしても昇給の余地があまりないといえるでしょう。
実際に、役職を持たないベテラン理学療法士と新人の給与があまり変わらない、というケースも珍しくありません。この点も、オワコンといわれることを助長させていると考えられます。
体力的にきついと感じることも
理学療法士は、仕事しているなかで体力的にきついと感じやすい職種といえます。具体的には、以下のような場面で体力を使います。
● 歩行訓練を行う際の支援
● ベッドと車椅子の移乗介助
● 立ち上がり動作の介助
● 筋力トレーニングの指導や補助
これらの作業を1日に何度も繰り返すため、体力的な負担が大きくなります。そのため、加齢とともに少しずつ体力的に仕事をするのがきついと感じる理学療法士も少なくありません。理学療法士は体力的に長く働きにくい点も、オワコンといわれる理由といえます。
オワコンといわれる理学療法士ならではのメリット
理学療法士はオワコンといわれていますが、それでも多くのメリットもあります。ここでは、理学療法士として働くメリットについて解説します。
国家資格だから職探しに困りにくい
理学療法士は国家資格なので、職探しに困りにくいメリットがあります。一度取得すれば、その資格は一生涯有効であり、理学療法士としていつまでも働き続けられます。たとえブランクが空いていたとしても、働ける職場は多いでしょう。
そして理学療法士は景気の変動に左右されにくく、どのような状況でも安定した収入を得られる傾向にあります。このように、理学療法士は一定の給料と働き口を確保できる強みがあるのです。
高齢化で今後も需要が増える可能性がある
日本の高齢化が進むなか、理学療法士の需要は今後も増える可能性が高いです。政府の統計では、高齢者の人口は年々増加し続け、2036年には3人に1人は65歳以上になると予測されています。そして高齢者が増加すると、骨折や脳卒中などの病気のリスクも高まるため、理学療法士の役割はますます重要になると考えられます。
健康寿命の延伸や介護予防への関心が高まっていることも、理学療法士の需要増加につながっている要因です。理学療法士の人数は増えているものの、高齢化にともなって需要は上がるのではないかと考えられています。
さまざまな職場で活躍できる
理学療法士は、現在でもさまざまな職場で活躍している職種です。おもな職場としては、以下のとおりです。
● 医療機関
● 介護施設
● 福祉施設
● 教育・研究機関
● 行政
● スポーツ分野
これらの分野だけでなく、理学療法士の知識や技術を活かして一般企業でも活躍している方も珍しくありません。社会のニーズの変化に応じて、今後さらに新しい分野が開拓される可能性も十分にあります。
理学療法士の活躍の場は非常に幅広いため、自分の興味にあわせてさまざまな仕事を選択できます。
オワコンといわれる理学療法士で生き残るために必要なこと
オワコンといわれているなかで、理学療法士はどのようにして生き残るべきなのでしょうか。ここでは、今後も理学療法士として働き続けるために必要なことを解説します。
専門性を高める
理学療法士として働き続けるためのポイントの1つが、専門性を高めることです。専門性を高めることで、ほかの理学療法士との差別化を図り、自身の価値を高められます。専門性を高める方法としては、特定分野の勉強をする、資格を取得するなどがあげられます。
このような努力は患者さんにも還元され、質の高いリハビリの提供にもつながるでしょう。自分の得意分野を見つけ、そこに特化して専門性を高めることで、オワコンといわれるなかでも価値ある存在として活躍し続けられるのです。
管理職につく
管理職につくことを目指すのもよいでしょう。管理職になることで、リハビリ業務だけでなく部署全体の運営や人材育成など、より幅広い責任を担えます。管理職につくメリットは、以下のとおりです。
● 役職手当によって給料がアップする
● キャリアアップの機会が増える
● リハビリ部門全体の質向上につながる
ただし、管理職になるためにはコミュニケーション能力やマネジメントスキルなどを身につけることが重要です。経営的な視点も求められるため、経営や医療制度についての知識も必要となります。現在の職場で管理職への昇進が望める場合は、ぜひ目指してみましょう。
条件のよい職場に転職する
理学療法士として働き続けるためには、条件のよい職場への転職もおすすめです。現在の職場環境や待遇に不満がある場合、転職によって状況を大きく改善できる可能性があります。条件が整った職場に転職することで、理学療法士としてのモチベーションを高く保ちながら働き続けられるでしょう。
転職を考える際は、自分にとってなにが大切かをよく考えることが重要です。給与だけでなく、働き方やキャリアアップの機会なども考慮しつつ、総合的に判断しましょう。
理学療法士はオワコンとは限らない
理学療法士は人数が増加し続けている点や、給料や低めな点から「オワコン」と呼ばれることがあります。しかし、将来性があることや幅広く活躍できることから、一概にオワコンと断定できるわけではありません。
このような状況で理学療法士として働き続けるためには、専門性を高める、条件のよい職場に転職するなどの工夫が重要です。ぜひ今回の記事を参考にして、オワコンのイメージを払拭できるような理学療法士を目指してみましょう。
内藤 かいせい
理学療法士として回復期病院と訪問看護サービスに従事し、脳血管疾患や運動器疾患などの幅広い症例を経験する。リハビリで患者をサポートするとともに、全国規模の学会発表にも参加。 新しい業界にチャレンジしたいと決意し、2021年に独立する。現在はWebライターとして活動中。これまでの理学療法士の経験を活かして、医療や健康分野で多くの執筆・監修に携わっている。
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