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日常生活動作(ADL)の要「座位バランス」の改善を目的とした作業療法について

公開日:2018.05.14 更新日:2023.09.04

動的・静的問わず、日常生活動作の自立や社会生活の拡大を目指す対象者にとって、座位バランスの改善が重要な鍵となるのはいうまでもありません。

安定した座位は、体幹の回旋を引き出し滑らかな上肢・手指動作を行う上で必要不可欠な存在です。対象者の日常生活において、上手に両手を使えない状況に直面したら、真っ先に四肢・体幹の状態やポジショニングを確認する方も少なくないのではないでしょうか。

私たち作業療法士は、対象者の座位姿勢がなぜ安定しないのか、神経系(立ち直り反応や感覚障害の有無など)・筋骨格系(体幹筋の活動性など)、さらには環境(椅子の高さ、形状、人的環境など)といった要素ごとに問題を抽出し、対象者のリハビリテーション目標に応じた作業療法プログラムを検討していきます。

座位バランスの改善を目的とした作業活動

座位バランスの改善・向上を目的とした作業療法プログラムでは、神経・筋骨格系の問題に直接働きかける作業活動のほか、ベッド上基本動作や更衣動作、食事動作をはじめとした日常生活課題、椅子・車椅子の調整などが個々の状態に応じて選択されます。

バランスボール

 

(参考)座位バランスを低下させる主な問題と作業活動の一例

主な原因 座位活動に
おける問題
問題解決に向けた
作業活動のイメージ
中枢・末梢神経の
障害によるもの
意識障害、姿勢反射障害、視知覚障害、認知・学習の障害、記憶障害、注意障害、協調運動障害、中枢性麻痺、末梢性麻痺など 静的・動的バランスの低下
左右非対称座位
安定かつ円滑な上肢動作が困難
離床時間の減少
腰痛発症
など
寝返り・起き上がり動作、更衣動作等を通じた抗重力活動、机上作業、ペグボード、積み木、サンディング、端座位でのお手玉拾い、輪投げ、ボール蹴り、側方リーチ、棒体操など。
運動器の障害に
よるもの
体幹・下肢筋力・可動域低下、関節痛、切断・離断など バランスボール・バランスボードを用いたバランス訓練、洗体動作、輪くぐり(下衣着脱の模擬動作)を通じた体幹複合運動など。
内部疾患に
よるもの
全身持久力の低下、腹圧の低下など 趣味活動やグループ活動の導入、屋外活動、歌唱など。
環境要因・その他 椅子・車椅子の不適合 車椅子の調整、椅子の選定、クッション、アームサポートなどの検討とポジショニング。

浅沼辰志編(2015)『作業療法学 ゴールド・マスター・テキスト作業学(改訂第2版)』メジカルビュー社
山口昇/玉垣努編著(2016)『身体機能作業療法学(第3版)』矢谷令子監修 医学書院を参考に作成

座位のバリエーション

座位バランスの改善を目的とした作業療法では、どんな作業活動を選択するか以上に、その作業活動をどのような条件下で行うかが重要になります。例えば、同じペグボードの移動でも、それを車椅子座位で行うか、椅子座位で行うかによって課題の難易度が大きく変化するでしょう。

車椅子座位では、体動が起こるたびに座シートが変形するため、姿勢が崩れやすいだけではなく、安定した上肢動作や巧緻性を十分に発揮できない可能性もあります。端座位と一口にいっても、居室(自宅)ベッド上、訓練室のベッド上、ベンチ上など様々なバリエーションがありますし、床上の長座位も座位に含まれます。

もちろん、椅子の種類も多種多様です。座り方の条件を変えることによって、同じ作業活動でも、対象者にとっては新たなチャレンジとなり、新しい生活スタイルをイメージするきっかけの一つになるかもしれません。

座位バランス向上につながるレクリエーション活動

個別の作業療法以外にも、座位バランスを改善させるチャンスがたくさんあります。例えば、集団活動(レクリエーション)座位で行うレクリエーション活動では、座位における重心移動や下肢の支持性を高める「ボール蹴り」「輪投げ」「ボーリング」などが典型でしょう。他にも、体幹の回旋や伸張を促す「棒体操」「風船バレーボール」などが行えるでしょう。集団で行う利点を活かし、目と手の協調動作や体幹の活動性を高める「空き缶積みゲーム」なども大変盛り上がります。

座位バランスは、日常生活の自立や安全確保、生活機能の維持・改善はもちろんのこと、対人交流や社会活動の拡大に向けて必要不可欠な要素です。

作業療法士だけではなく、対象者をとりまく全ての支援者が把握しているのがベストですが、作業療法が明確なエビデンスをもった「療法」であるために、その詳細(何が障害され、何が問題になっているか等)は、私たちが翻訳しわかりやすく伝える必要があるでしょう。作業療法の対象者が、持っている力を十分に発揮できるよう、客観的な評価をもとに座位活動を展開していきましょう。

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