新型コロナ禍で介護者の不安を減らすには?セラピストができるケア
公開日:2021.01.08 更新日:2021.04.30

新型コロナ感染症(COVID-19)の拡大が続くなか、未知の感染症の脅威にさらされるのは医療従事者だけではありません。身近で介護をする家族もさまざまな不安を抱えています。
介護者の健康を守るために、私たちセラピストにどのような対応ができるでしょうか。家庭内で介護にあたるご家族の心境を探りつつ、医療者であるセラピストが意識したいことをまとめます。
大切な家族を守るために~日常を重ねることが困難となる現実~
家のなかでは自分が感染源とならないよう気を配り、通所サービスを受ける日には通所先で感染しないか心配し……。ご自宅で家族を介護される多くの方々が、新型コロナ感染拡大以前に増して、心身ともにひっ迫した毎日を過ごしてらっしゃると思います。
新型コロナの影響はウイルスによって引き起こされる疾病そのものだけではありません。それはセラピストの皆さんもご存じでしょう。
治療法や予防法が確立しないなか、見えないものに対する恐怖や不安は私たちの身体に多大なストレスをじわじわと与え続けます。
恐怖や不安は、偏見や差別を生み、社会的な安心をも揺るがすのは、今回の出来事を機に多くの人が実感したと思います。特に自宅で家族の介護をされている方は、仕事との両立だけでも大変な負担です。
ふだん利用していた介護サービスが感染拡大の影響によって利用できなくなったり、回数が減ってしまったりすれば、介護者のストレス増大や生活不活発病が懸念されます。
それが一時的なことで済めば解決の糸口は見えるかもしれませんが、日常を重ねることが困難な現実を目の当たりにしたとき、私たちは生きる希望を失いかねません。
セラピストとしての「ブレない姿勢」が介護者を安心させる
私たちセラピストには、医療従事者であるからこそ生まれる葛藤もあります。
たとえば認知症の患者さんの場合、声がけ以上に手と手の触れ合いや、目線を合わせた対話が有効です。しかし感染対策上、密着・密接を避ける方法を考えなければなりません。
対象者の思いに応えようと、感染対策をおろそかにすれば、周囲の不安をあおってしまうこともあります。一方、感染症対策を優先することで、対象者の期待に反してしまったり、対象者の思いを害してしまったりするかもしれません。
医療職の一員として、決して自分よがりの対応はできませんし、不確実かつ偏った情報に左右されることもあってはなりません。
新型コロナを取り巻く状況は刻々と変化し多様な情報が錯綜していますが、専門知識を持つセラピストが揺らげば、介護にあたっているご家族も不安が増してしまいます。
介護者に安心してもらうためにも、セラピストとして一貫した方針を持つことが大切です。
組織に属しているのであれば、その組織の方針に沿った対応が一貫性をもたらすでしょう。多職種連携の力も発揮でき、介護者の孤立を防ぐことにもつながります。
介護者が心のゆとりを持てるように!セラピストができるきっかけ作り
介護者が抱える不安に、私たちはどう向き合ったらよいのでしょうか。日常を揺るがす大きな困難に直面する方々に対し、必要な支援やサービスにつなげるのはもちろんのこと、まずは介護者の方が自分の思いや感情を率直に表す機会をつくることが求められます。
【思いや感情を率直に表すきっかけの一例】
・きれいな絵や音楽に触れたとき
・久しぶりにみんなで食事を楽しんだとき
・大笑いしたとき
・思い切り身体を動かしたとき
しかし感染の不安を抱えながらままならない日常と奮闘する介護者は、そのような心のゆとりを持つ大切さに気付けないことがあります。
セラピストとして、ちょっとだけいつもとは違う時間を誰かと一緒に過ごすことを介護者に提案してみてはいかがでしょうか。あるいは、セラピストがそのような場を提供するのもよいでしょう。
対象者だけではなく介護者の心の声に耳を傾けたうえで、介護者の価値観やライフスタイルを尊重する関係性を維持することが大切なのではないかと考えます。
介護者自身が「心から健康」と思える瞬間とは、どのようなときを指すのか。
介護者は、身体が不自由なご家族を思うあまり、自分の健康を後回しにしてしまっているかもしれません。自分の不調を上手に伝えられずにいる可能性もあります。自分の「痛い」「辛い」を見過ごしていないでしょうか。ご家族が自分の身体に目を向ける時間にも、配慮したいものです。
ご家族は言葉にならない不安を抱えているかもしれませんし、見えないところで、差別や不平等な扱いを受けているかもしれません。
ご家族が日頃どんな困難を抱えているのかに目を向けてください。ご家族の立場になって受け止める姿勢が、個々の生活を変化させる姿勢が、より有益なサービスに通じてくるのでしょう。
お互いの立場を理解し合える関係性は、お互いの健康を守るうえで欠かせないものとなるはずです。
作業療法士(教育学修士)。
1998年作業療法士免許取得後、宮城・福島県内の医療施設(主に身体障害・老年期障害)に勤務。
現職は作業療法士養成校専任教員。2011年東日本大震災で被災したことを期に、災害を乗り越える親子の暮らしを記録・発信する団体「三陸こざかなネット」を発足し、被災後の日常や幼くして被災した子どもによる「災害の伝承」をテーマに執筆・講演活動を行っている。
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