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アンソニー・ホプキンスが認知症の父親役を演じる映画『ファーザー』、5月14日全国公開

公開日:2021.04.27 更新日:2021.05.21

文:ナレッジリング

《※この記事は映画のネタバレを含みます》

世界30か国以上で上演され、大絶賛を受けた傑作舞台が、いよいよ映画化されます(2021年5月14日全国公開)。

『羊たちの沈黙』などで世界的に知られる名優アンソニー・ホプキンスが挑むのは、自身と同名・同年齢(撮影時)である認知症の父親役。「人生の夕暮れ」を視覚化した意欲作の魅力をお伝えします。

認知症の人の視点で描かれた映画『ファーザー』

第93回アカデミー賞「主演男優賞」「脚色賞」受賞!
『ファーザー』

5月14日(金)、TOHOシネマズ シャンテ他 全国ロードショー

© NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION TRADEMARK FATHER LIMITED F COMME FILM CINÉ-@ ORANGE STUDIO 2020

監督:フロリアン・ゼレール(長編監督一作目)
脚本:クリストファー・ハンプトン(『危険な関係』アカデミー賞脚色賞受賞)
フロリアン・ゼレール
原作:フロリアン・ゼレール(『Le Père』)
出演:アンソニー・ホプキンス(『羊たちの沈黙』アカデミー賞主演男優賞受賞)
オリヴィア・コールマン(『女王陛下のお気に入り』アカデミー賞主演女優賞受賞)
マーク・ゲイティス(「SHERLOCK/シャーロック」シリーズ)
イモージェン・プーツ(『グリーンルーム』)
ルーファス・シーウェル(『ジュディ 虹の彼方に』)
オリヴィア・ウィリアムズ(『シックス・センス』)
2020/イギリス・フランス/英語/97分/カラー/スコープ/5.1ch/原題:THE FATHER/字幕翻訳:松浦美奈/配給:ショウゲート
公式サイト:https://thefather.jp/

娘はどこ? この男は誰? 少しずつ崩壊する日常

81歳のアンソニーはロンドンで一人暮らしを送っていましたが、認知症と思われる症状が出始めていました。心配した娘のアンが介護人を手配するものの、「誰の助けも必要ない」と拒否し続けます。

そんなある日、アンソニーがキッチンで紅茶を入れていると、リビングから物音がします。不審に思ってのぞいてみると、そこには見知らぬ男が!

ポールと名乗ったその男は、「自分はアンの夫であり、ここは私の家だ」と主張します。離婚しているはずの娘の夫? わが家を乗っ取ろうとしているのか? 混乱するアンソニーのもとにアンが帰ってきますが、なんと彼女は「見たこともない女」の姿になっていました。

認知症の人の視点で描かれた映画『ファーザー』
──アンソニーを演じたアンソニー・ホプキンスは、「自分の“葉”を1枚ずつ失うのはどんな気分だろうかと考えました。人生の勉強になりましたよ」と話した。

本当の娘アンはどこへ行ったのか? 謎の男と女は何の目的で家に上がり込んできたのか? そして、アンソニーが誰よりも愛したもう一人の娘、ルーシーはどこに消えてしまったのか? 

様々な疑念や疑問が頭に浮かんでくるアンソニーでしたが、最終的にどのような「真実」にたどり着くのでしょうか……。虚実の境界が崩れていく様を当事者の視点で映し出し、老いによる記憶の喪失と親子愛を描いた感動作です。

認知症の人の視点で描かれた映画『ファーザー』
──娘のアンを熱演したオリヴィア・コールマンは、「愛する人が自分を忘れていくことの切なさ、親子の関係と認知症がテーマの美しくて感動的な作品です」と語った。

アンソニーの目線で「時間と記憶の混乱」を体験しよう

認知症の症状は、「中核症状」と「行動・心理症状」に大別されます。病変によって起こる中核症状の代表例といえるのが記憶障害。新しいことを覚えにくく、症状が進行すると以前に覚えていたはずの記憶も忘れやすくなります。

また、見当識障害もよく見られる症状で、時間や場所、人物について正しく認識することが難しくなります。

一方で、行動・心理症状はBPSD(behavioral and psychological symptoms of dementia)とも呼ばれ、中核症状に対して様々な要因が絡み合って発生し、不安・焦燥、うつ状態、幻覚・妄想、徘徊などが現れます。

家族にとっては、認知症の人のこうした症状は大きな戸惑いのもとになりがちです。しかし、誰よりも当惑して不安を抱えているのは、ほかならぬ当本人。理解できないような言動は、「何とか現実に適応しよう」と努力した結果かもしれません。

アンソニーの身に起こった「時間と記憶の混乱」を一緒に「体験」できる本作は、セラピストとして認知症の人へどのように関わるべきか、あらためて考えるきっかけになるはずです。

また、認知症の人の家族が抱える苦悩も、本作では存分に描かれています。クセは強いけれど知的で魅力にあふれていた父親が変貌していき、時に辛辣な言葉で責められ涙するアン。

一方で、「いろいろ、ありがとう」と素直に感謝される瞬間もあり、対応が難しくなっていく中でも父を嫌いにはなれません。

主人公を演じたアンソニー・ホプキンスは、「アンは父を愛しているからこそ心を引き裂かれるのです。私の症状が進むほど彼女の絶望は深くなります。アンが気の毒になりました。私は彼女に対して残酷ですからね」と話します。

アンの苦悩と奮闘からも、家族支援のあり方について考えさせられるかもしれません。

認知症の人の視点で描かれた映画『ファーザー』
──買い物中も、アンソニーの状態が悪化すると呼び出されるアン。父の世話と自分の人生、どちらを優先すべきか悩み、より良い道を模索し続ける。

「もう一人の登場人物」は主人公が暮らすアパート

映画では珍しいことに、本作のキャストはわずか6人。彼/彼女らが複数の役を演じながら繰り返し登場することで、アンソニーの不可思議な体験を表現しています。

また、「もう一人の登場人物」といえるのが、アンソニーの住むアパートです。アンソニーはずっと住み慣れた自宅にいるはずなのに、時には居心地良く快適で、時には冷たく見慣れない場所へと変化していきます。

見慣れない家具が増えていたり、大好きだった絵画が取り外されたりしていることも……。こうした「違和感」の演出も、本作ならではの仕かけだといえるでしょう。

認知症の人の視点で描かれた映画『ファーザー』
──多くの絵画や調度品で飾られた、明るく快適なアンソニーのアパート。場面が変わるにつれて、その様子がどんな変化を遂げていくのかにも注目したい。

監督・脚本を手がけたフロリアン・ゼレールは、インタビューで次のように語っています。「本作は認知症についてのストーリーですが、観客には自分事として見てほしいのです。認知症の症状の一部を自分で経験しているような立場でね。ストーリーは迷路のようなもので、観客はその中にいて出口を探さなければなりません」

実際、本作はまるで迷宮のような構成になっています。同じはずのシーンが違う場面につながっていたり、いるはずのない人物が登場したり……。

見知った世界がガタガタと崩れていく様子に、観客はミステリーやサスペンスに近い緊張感を体感するはず。思いがけない結末を迎えた後、あらためて冒頭から観たくなること間違いなしの本作は、医療従事者にとっても必見です。

『ファーザー』
5月14日(金)、TOHOシネマズ シャンテ他 全国ロードショー
© NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION TRADEMARK FATHER LIMITED F COMME FILM CINÉ-@ ORANGE STUDIO 2020

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【参考】
政府広報オンライン「もし、家族や自分が認知症になったら知っておきたい認知症のキホン」

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