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介護老人保健施設における理学療法士の役割と仕事内容

公開日:2022.10.15 更新日:2022.12.08

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文:rana(理学療法士)

理学療法士の就職先のひとつに、介護老人保健施設(老健)があります。理学療法士の就職先は多岐にわたり、働く場所によって仕事内容や対象患者さんも異なります。介護分野での就職を目指す場合でも、高齢者施設の特徴はさまざまで、どんな職場を選べばよいのか迷うこともあるでしょう。今回は、老健における理学療法士の役割と仕事内容などについて紹介していきます。

老健とは

老健とは、介護老人保健施設の通称で、介護を必要とする高齢者に向けて、在宅復帰と在宅療養支援を行うための施設を指します。入所の対象となるのは、65歳以上の要介護認定を受けた人で、病院から退院して自宅に戻るまでの間、リハビリ目的で利用されるケースが多く見られます。
老健では、常勤医師を1人以上配置していることが義務付けられており、介護だけでなく医療的措置が受けられるのも魅力のひとつです。入所期間は原則として3~6ヶ月とされており、早期に自宅復帰できるよう、利用者はリハビリを通して機能回復を図ります。

老健における理学療法士の仕事内容

老健で働く理学療法士の主な仕事内容は、利用者が在宅生活で必要となる能力を獲得するためのリハビリを行うことです。帰宅後に、実際に自宅にあるトイレの場面を想定して着替え動作を行ったり、自宅の廊下を想定して歩行訓練を行ったりと、退院後の環境を考慮することがとても重要です。また、利用者の能力を見極めて、福祉用具の選定、住宅改修の助言、家族への介助指導なども行います。

老健と病院・クリニック、それぞれに異なる特徴と働き方

理学療法士が働く主な職場として病院やクリニックなどがありますが、老健と比べて、それぞれにリハビリ対象者が違うため、求められる役割や仕事内容が変わります。老健と病院、クリニックでの働き方において、どのような点が違うのか具体的にまとめてみました。

老健

老健では、発症から時間が経過している高齢者が主なリハビリ対象になります。利用者の多くは、他にも疾患を抱えていること、加齢による体力低下などから、リハビリの効果が得られにくいこともあるでしょう。そのため、利用者の大幅な機能回復を目指すというよりも、いかに今ある機能を維持して自立した生活が送れるかという点に重きを置いて介入することが重要です。基本的に利用者の入所期間は決まっていますが、状況により長期間入所する場合も多く、リハビリで長期的に関わることも少なくありません。

病院

急性期や回復期の病院では、患者さんが回復段階にあるため、リハビリを実施すると目に見えて状態が良くなるケースがほとんどです。特に回復期病院では、作業療法士や言語聴覚士と連携しながら、患者さん1人あたりに1日最大3時間のリハビリを実施することもあり、退院に向けて毎日集中的なリハビリを実施するのが特徴です。理学療法士は、退院に向けて、主に歩行や起居動作といった基本動作能力の向上を目標にリハビリを実施します。

クリニック

クリニックに通う患者さんは、自力で通院可能で、日常生活動作は自立している人が多い傾向にあります。そのため、病院のように基本動作能力に対するリハビリというよりも、膝痛や腰痛といった疼痛や機能面に対するリハビリが中心です。一日にリハビリを行う人数が多く、担当する患者さんの数も多いため、理学療法士は少ない時間で評価、治療をこなしていくスキルが求められます

老健で求められる理学療法士のスキル

老健で働く理学療法士には、利用者の特徴を踏まえて対応するスキルが求められます
対象となる高齢者は、運動機能の低下だけでなく、内部疾患、加齢からくる老年期疾患などを抱えていることも少なくありません。また、仕事復帰やスポーツ復帰を目指している若い人と比べると、モチベーションに波があることも想定されます。そうした特徴から、理学療法士には、機能面のサポートだけでなく、全体像を捉え、高齢者特有のリスクを考慮した対応が求められます。

さらに、利用者が自立した生活を送るためには、患者さん自身の能力だけでは難しいことも想定しておかなければなりません。そうした場合には福祉用具を選定したり、住宅改修をしたりすることも必要です。理学療法士は、身体のことだけでなく、福祉用具の種類や選定方法、家族への介助指導、住宅改修に関する知識など、幅広いスキルが求められるでしょう。

理学療法士が老健で働くメリット・デメリット

前述してきたような老健の特徴から、理学療法士が働くメリット・デメリットについてまとめてみました。

老健で働くメリット

まずはメリットを見てみましょう。

・長い期間患者さんと関わることができる
老健は原則として入所期間が定められていますが、在宅復帰が思うように進まずに長期入所になるケースも少なくありません。その場合、理学療法士は1人の利用者と長期間にわたって関わることになります。関わる時間が長ければ長いほど、その人の特徴を把握でき、より深い信頼関係を築いていくことができるでしょう。一人ひとりとじっくり関わってリハビリを進めていきたい人にとっては働きやすい環境です。

・高齢者に特化したリハビリを経験できる
老健では、主なリハビリ対象が高齢者となり、老年期疾患に特化した知識、スキルを身につけることができます。介護分野で活躍する理学療法士になりたい、高齢者に特化したリハビリをしていきたい人にとっては、老健は最適な職場であるといえるでしょう。

・福祉用具や介護保険について学べる
病院やクリニックでは、福祉用具や介護保険について、細かく関わる機会はあまり多くありません。そのため、場合によっては、福祉用具の選定方法や介護サービスの種類などの知識を身につけることが困難でしょう。一方で、老健で働く理学療法士は、福祉用具や介護保険についての知識は必ずといっていいほど求められます。リアルな経験を積みながら学べるのは大きなメリットです。高齢患者さんはもちろん、自分の家族や将来的に自分にとっても必要な知識であり、学んでおいて損はないでしょう。

老健で働くデメリット

一方で、以下のようなデメリットもあります。

・知識が偏りやすい
病院やクリニックでの勤務は、症例数が多く、さまざまな疾患に対応できるため、幅広い知識を得られます。しかし、老健の場合は、慢性期の高齢者が主な対象となり、病院やクリニックのように多くの疾患を学びにくい傾向にあります。「自分は生活期(※)で働いていく」と決めた人はよいかもしれませんが、多くの症例を経験したいと思う人にとっては知識が偏ってしまうかもしれません。
※生活期……急性期、回復期を経て、障害の状態が安定したのちの、在宅生活が可能な期間

・患者さんがリハビリに意欲的ではないことも多い
病院やクリニックでは、スポーツや仕事復帰を目指して意欲的にリハビリをこなす人や、比較的若い人を対象とするケースもあるため、リハビリへのモチベーションが高い傾向があります。しかし、老健では、加齢からくる体力低下や意欲低下から、リハビリへのモチベーションが低い人も少なくありません。理学療法士にはそのような利用者に対しても、リハビリを効率的に進めていくスキルや対応力が求められ、自身のモチベーションを保つ工夫が必要になります。

高齢者に特化したリハビリを希望なら老健へ就職を

老健では、リハビリ対象者が高齢者になるため、その特性を踏まえた広い視野が求められます。生活期に関わりたい、高齢者に特化したリハビリを学びたいと考えている人は、老健への就職を検討してみてはいかがでしょうか。

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rana

rana(理学療法士)

総合病院やクリニックを中心に患者さんのリハビリに携わる。現在は整形外科に加え、訪問看護ステーションでも勤務。 腰痛や肩痛、歩行障害などを有する患者さんのリハビリに日々奮闘中。 業務をこなす傍らライターとしても活動し、健康、医療分野を中心に執筆実績多数。

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