経験者から学ぶキャリアアップのための転職
公開日:2022.12.21
みなさんはこれまでに転職を経験されたことはあるでしょうか。また、転職先を選ぶうえで重要視する点、優先したいことは何でしょうか。
通常、セラピストとして勤務先を選択する際には、対象となる方の分野や領域、勤務地、給与体系、福利厚生、研修体系などを確認されることが多いと思いますが、何を優先するかは一人ひとり異なるでしょう。
今回は作業療法士として、最初の就職から2回の転職を経験した中で、筆者自身が大切にしたことや感じたこと、後悔したこと、キャリアアップを図る上で大切にしてほしいことなどを惜しみなくお伝えしていきます。
これから就職を考えている学生の方や、転職を検討中の方などにとって、私の経験が少しでもお役に立てれば幸いです。
文:鎌田康司(作業療法士)
目次
就職先がなかなか決まらなかった学生時代
思い返せば学生時代、まわりの友人やクラスメイトの就職先が続々と決まっていく中で、筆者はなかなか就職先が決まらず、ようやく決まったのは学校を卒業する2カ月前でした。
そもそも、セラピストとして就職を考えるときに、領域・分野の選択肢がありましたが、自分がどの領域・分野に向いているのか、進めばいいのかも決められず、何を優先して職場を選べばいいのかもはっきりしていませんでした。
そのような状況だったので、就活もまともに行えず、最終的には、すでに就職が決まっていた友人の誘いで、まだ募集をしていた介護老人保健施設に就職を決めました。
「就職が決まった=自分を雇用してくれる所が見つかった」という安堵感のほうが強く、給与体系なども採用担当の方との面談ではきちんと確認せず、賞与がない年俸制であることを実際の契約のときに初めて知ったというお粗末さでした。
就職後、しばらくしてから、「もっと早くから準備をしておけばよかった」と後悔したことをとてもよく覚えています。
初めての転職。介護老人保健施設から精神病院へ
就職から3年が経過し、介護老人保健施設でのリハビリテーション業務に携わる中で、結婚して家庭をもち、子育てを行うようになるなど、自分の生活も変化しました。
また、今までは高齢者のリハビリに携わっていましたが、認知症の方との関わりから、心理・精神についてもっと知りたい、勉強したい思いが強くなり、転職を行うことにしました。
初めての就職のときの反省を活かし、今回は時間の猶予を持って計画的に行うことと、職場を決める際の優先事項を整理して、転職をすることに決めました。ちなみにそのときの私の優先順位は次の4つでした。
1.土日祝日が休みで、残業があまりないこと
2.心理・精神機能について学べること(主に精神科)
3,給与が今の職場よりも増えること
4.通勤が1時間以内で可能な距離
当時の職場は残業も多く、4週8休の勤務で祝日も出勤することもありました。子育てと家庭の都合も考えたいと思い、特に1番の勤務形態は重要視していた条件でした。
当時は今よりも転職サイトなども多くなく、条件に合った職場に巡り合うのに少し時間はかかってしまいましたが、反省を活かして猶予を持って始めることができていたので、無事ご縁があった精神科病院へ転職することができました。私の考えていた優先事項の4つとも全て満たしている職場でした。
職場環境を変えることは不安も多くありますが、自分が新しい環境に求めることを実現していくチャンスにもなるかもしれません。
病院から地域へ。医療法人からNPO法人への転職
精神病院の作業療法に3年携わったころ、いくつかの疑問と葛藤を抱えるようになりました。それは、「退院した方が何度も再入院してしまうのはなぜか」「精神障害者の方は、地域でどのように暮らしているのか」「入院中の作業療法は退院後の生活にどれくらい役に立っているのか」でした。
それらの疑問を解決すべく、まずは、アルバイトとして地域の支援機関で勤務してみることを考え、当時はまだ数の少なかった精神障害者の方を中心とした、訪問看護ステーションでのアルバイトを始めました。
結果的には、病院を退職し、アルバイト先の訪問看護ステーションへ転職をすることに決めたのですが、すぐには転職を決めず、しばらく掛け持ちで働くことができたので、転職のきっかけとなった疑問や葛藤が、「この職場であれば解決できそうだ」という見通しがつき、働くうえでのやりがいも再確認できました。
また、今までは医療法人での勤務でしたが、そこはNPO法人への転職だったため、法人格が変わることに対して、家族への説明や同意をもらうなど、雇用の条件なども一つずつ相談を進めていけました。
職場によっては就業規則で副業が認められない場合もありますが、可能な職場であれば、まずはアルバイトなどから勤務を始めてみて、少しずつ転職を考えてみるのも一つかもしれません。
キャリアアップを図るうえで大切にしてほしいこと
それでは、ここで改めてキャリアアップについて考えみたいと思います。キャリアアップとは、従来は勤務先の中で少しずつ知識や経験を増やし、職場内での経歴を高めていくという意味合いが強くありましたが、近年では1つの職場に留まらず、新たな職場や業務にチャレンジする「転職」もキャリアアップの機会と捉えられるようになっています。
キャリアアップの捉え方は、個々人によって違いがあったとしても、転職の機会を、キャリアアップのチャンスに変えるために大切にしたいこととして、以下のようなものが挙げられます。
自分が求める条件や、希望する内容を整理してみる
例)学びたいこと、分野や領域、勤務形態、給与形態、福利厚生、研修制度など
転職を考えている時期から逆算し、今からできる準備を行ってみる
例)転職サイトに登録をしてみる、求人サイトを見てみる、可能であれば副業してみるなど
転職先の職場についてリサーチを行う
例)法人の理念や方針、職場の上司や同僚・他職種はどんな人か、雰囲気など
最後に挙げた、法人の理念や方針を把握することは、実はとても重要なことです。どの法人でも、その法人が大切にしていることを掲げていますが、会社の理念・方針に共感ができる職場で働けることは、自分自身が学びたいことや実践したいことともリンクするため、働く上で意欲やモチベーションにも関わってくるでしょう。
個人としてのキャリアアップを考える上でも、法人組織と一緒になり成長ができれば、さまざまなことを経験し、学べます。
自分の成長が感じられるキャリアアップを
今回は、転職をキャリアアップの機会とするために、大切にしたいことについて、筆者の経験の中で感じたことを踏まえてお話をしてきました。
人に評価されるキャリアも重要かもしれませんが、それだけにとらわれず、5年前、10年前と過去の自分を振り返ったときに、自分自身の成長を感じられるキャリアを重ねていけることも大切です。
転職を考えるきっかけは、「知りたい」「やってみたい」などの、新たな興味や関心からでもよいと思います。私の初めての就職のときのようにならないためにも、思い立ったときからできる準備を少しずつ始めてみましょう。
鎌田 康司
得意分野は精神科、高齢者、訪問看護、障害福祉サービス、施設マネジメント、地域ケア。
介護老人保健施設で勤務後、精神科単科の病院で院内作業療法を経験。患者さんの実生活を知るため、地域の訪問看護ステーションに転職。今は生活訓練という障害福祉サービスの管理者として、精神障害や発達障害、知的障害の方たちの地域生活のサポートをしている。3人の子どもがおり、子育てと家事にも奮闘中。
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