認知行動療法に向かない人とは?メリットや他の治療法についても解説
公開日:2024.01.05 更新日:2024.01.10
文:rana(理学療法士)
認知行動療法は、ストレスや不安を軽減させる手法として、リハビリや精神科などで広く取り入れられている治療法です。
うつ病の影響などで、ネガティブな考え方が先行している場合に有効な治療法ですが、なかには効果が得られないこともあります。では、認知行動療法に向かない人にはどのような特徴があるのでしょうか。
今回は認知行動療法について、概要やメリット・デメリット、向かない人の特徴などについて解説します。
目次
認知行動療法とは
認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy)は、CBTとも呼ばれ、うつ病をはじめとした心の病に対して実施される心理療法です。認知とは「現実の受け取り方」や「物事の見方」などが挙げられますが、そうした認知に働きかけて、考え方や行動を変えることでストレスを軽減させていく治療法として活用されています。
私たちは起こった出来事に対して嫌な気分になった時、その原因を「出来事」のせいにしてしまう傾向があります。ですが、認知行動療法では、出来事に対し、「自分がどう考え、どう行動したかが気分を決めるのだ」という考え方を持つように認知や行動にアプローチします。ストレスが多い状態が続くと、視野が狭くなったり、こだわりの強い考え方になったりしがちです。
出来事の認知によって生じるマイナスな感情を軽減するため、認知や行動を変化させていくことが認知行動療法の基本的な考え方です。
認知行動療法の流れ
認知行動療法は、一般的に医師やカウンセラーなどが担当し、1回30分程度の面談を重ねながら進めていきます。個人差はありますが、実施期間は3ヶ月程度とされています。具体的な治療の流れは以下の通りです。
● 自分のストレスに気付き、問題を整理する
● その問題がどのような状況で生じて、どのような感情を引き起こしているのか整理する
● 自動思考(自分の考え方)が自身の感情や行動にどのように影響しているのか探る
● 自動思考の特徴的なくせに気付く
● 自動思考と現実とのズレに注目して、現実にそった見方に変える練習を行う
● 問題を解決する方法や人間関係を改善する方法の練習を行い、今できることに取り組む
多くの場合、医師やカウンセラーとの面談だけでなく、自宅での活動や、出来事が生じた時の気持ちを記録するという方式で進められます。
認知行動療法の適応となる病態
認知行動療法の適応となるのは以下の病態です。
● うつ病
● 双極性障害(躁うつ病)
● 社交不安障害
● 統合失調症
● 強迫性障害
● パニック障害
● 発達障害
● 摂食障害
● 統合失調症
● パーソナリティ障害
● PTSD(心的外傷後ストレス障害)
● 不眠症
● 慢性疼痛
● 肥満症
● 糖尿病
もともとは、うつ病の治療法とした発展してきたものです。
しかし、メンタル面への影響が懸念されるさまざまな病態にも適応することがわかり、幅広く活用されています。
認知行動療法のメリット・デメリット
さまざまな障害に適応となる認知行動療法ですが、メリットだけではなくデメリットもあります。認知行動療法のメリット・デメリットについてまとめました。
認知行動療法のメリット
認知行動療法は、薬物療法のような副作用がほとんどない実践的な治療方法です。そのため、依存しにくいという点が大きなメリットといえます。また、効果の持続性が高く、再発しにくいのも利点です。
認知行動療法のデメリット
認知行動療法のデメリットとして、状態が悪い時は治療ができないことが挙げられます。状態が悪いと認知が歪み、思考力が低下するため効果が得られにくいからです。
また、効果が出るまでに時間を要すること、保険適応外だと費用が高くなりやすいことはデメリットといえるでしょう。
認知行動療法に向かない人の特徴
上述のように認知行動療法にはデメリットがあり、治療が向かないケースもあります。認知行動療法に向かない人の特徴についてまとめました。
認知行動療法に向かない人の特徴として、以下のことが挙げられます。
●落ち込みなどに強い症状が出ている人
●治療に対して前向きではない人
●今の状態を変えたくない人
詳しく見ていきましょう。
落ち込みなどに強い症状が出ている人
認知行動療法は、ネガティブな考えや落ち込みが強く出ている人には向きません。先にもお伝えしたように、強い症状の時は、認知が歪んでいたり、出来事を悪く捉えてしまったりする可能性があるからです。
症状が落ち着いて、冷静に自分と向き合える状態になってから治療を開始することになるでしょう。
治療に対して前向きではない人
治療に対して否定的、前向きになれない人も認知行動療法には向きません。治療をスムーズに進めていくためには、前向きで治療に協力的な意欲が必要です。
また、治療に対して依存しやすい人もあまり向いていないといえるでしょう。あくまで前向きに自分から取り組み、行動していく姿勢が重要です。
今の状態を変えたくない人
認知行動療法は、今までとは異なる考え方を自分に定着させていく治療法です。
そのため、今の状態を変えたくないと思っている人にも向きません。本人が自覚していないケースもありますが、認知行動療法が進まない、なじまないといった場合には、一旦時間を置いてから「今の症状を改善させたい」「現状を変えたい」という思いが芽生えてから開始するとよいでしょう。
認知行動療法に向かない場合に実施されるその他の治療方法
ストレスや不安を軽減させるための治療は、認知行動療法だけではありません。認知行動療法が向かない場合の治療方法として、以下のような方法があります。
薬物治療
抗不安薬、抗うつ剤、睡眠薬などの薬物療法も治療手段の一つです。
服薬することによってストレスを軽減させたり、気持ちを落ち着かせたりする効果があります。ただし、副作用や他の薬との兼ね合いなどに注意して使用しなければなりません。必ず医師の指示のもとに治療を行うようにしましょう。
休息や療養
今置かれている状況から離れて、ゆっくりと休息を取ることも有効な治療方法とされています。ストレスから解放される環境に身を置くことで、症状が改善する場合もあります。
仕事でストレスを抱えている場合には、例えば、勤務時間を減らしたり、違う部署に移ったりするのも一つの手段になるでしょう。思い切って長期的な療養を取るのも良いかもしれません。
認知行動療法は状況に合わせて実施しよう
認知行動療法は、多くの病態に適応する一方、デメリットや向き不向きもある治療方法です。
治療をする時の精神状態や特性によって、効果にも差が生じます。認知行動療法のメリットやデメリット、向かない人の特徴を参考に、状況に合わせて選択しましょう。
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rana(理学療法士)
総合病院やクリニックを中心に患者さんのリハビリに携わる。現在は整形外科に加え、訪問看護ステーションでも勤務。 腰痛や肩痛、歩行障害などを有する患者さんのリハビリに日々奮闘中。 業務をこなす傍らライターとしても活動し、健康、医療分野を中心に執筆実績多数。
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