リハビリを行う前に考えたい、理学療法士が患者さんの自立のためにできること
公開日:2015.05.11 更新日:2021.11.12
理学療法士にとって最大の喜びといえば、やはり患者さんの自立でしょう。そのために大切なのは、患者さん自身が身体に抱えるケガや病気、障害などと向き合うことです。ポジティブな気持ちでリハビリを繰り返す必要がありますが、なかには難しい場面も。今回は、リハビリのプロとして理学療法士が患者さんの自立のためにできることを考えていきます。
患者さんの状態に合ったリハビリを
本来、患者さんの状態に合わせた適切なリハビリを提供することは、セラピストとして当然の仕事です。しかし、わかっていてもすべての患者さんに最適なメニューを実施することは、なかなか難しいもの。
問題のひとつは、歩行訓練のお散歩化です。理学療法において散歩を提案するのは、維持期の運動療法を行うためという場合が多いでしょう。しかし残念なことに、急性期や回復期の患者さんであっても、ただ散歩をさせているだけのセラピストが多いともいわれています。もし、歩行訓練の際に「自分は今、何をやっているのだろう」と思った場合は、訓練内容を見つめ直し、患者さんに適した治療がどのようなものなのかを改めて考えてみることをおすすめします。
以下は、患者さんの自立に向けて効果的な治療を行うために実施された取り組みの例です。
- 入院初期に自宅訪問し、退院後の生活環境を把握しておく
→退院後の生活をふまえた治療が早期からできる - 入院中盤から後半に、患者さんとともに家庭訪問をする
→家族や周囲の人々とともに在宅リハビリテーションに向けての準備ができる - 退院後、生活サポートに関わるスタッフに、患者さんの様子をフィードバックしてもらう
→自宅での患者さんの様子が把握でき、今後のリハビリの質を高められる
マッサージよりも大切なことはありませんか?
今の理学療法においてもうひとつ問題視されているのが、マッサージ中心のケアです。回復期の理学療法はアクティブで活気づいているものであるはずが、現状はその多くがベッドでのマッサージに終始しています。マッサージばかり行われる背景には、セラピストが学生時代に学んできた「治療はマッサージから始める」といった慣習があります。もちろん、マッサージから始めること自体が間違っているわけではなく、マッサージのみで終わってしまうことに問題があるのです。
運動学習を根底に置き、そのうえでマッサージを運動のための手段のひとつとして捉えてはいかがでしょうか。マッサージで患者さんの痛みをやわらげ、より効果的な運動学習の実現に取り組みましょう。
また、理学療法士は患者さんからマッサージ師のように誤解されることが多く、リハビリでマッサージを取り入れなければクレームを受けることも少なくありません。クレームを恐れた結果、患者さんの要望を受け入れてマッサージに終始してしまうこともあるようです。
クレームを受けた場合は、患者さんが納得できるだけの説明がなされていない可能性があります。患者さんにリハビリ内容についての説明をきちんと行い、必要な治療であることをわかりやすく伝えて理解を得ることが大切です。
患者さんの自立のために必要なことを考えよう
患者さんの自立が達成されたときに、もっともやりがいを感じる理学療法士は多いでしょう。最初はケガや病気によって絶望の表情をみせていた患者さんが、治療によって前向きになり、希望をもつようになる姿は、仕事への大きな励みになるものです。
セラピストの働きかけによって、患者さんの回復は大きく左右されます。そのことについて責任をもち、一人ひとり、そのときどきに合わせたリハビリを考える力を身につけることが大切です。症例に対する治療法についてより深く勉強し、さらにできることがないかを考える姿勢を維持しましょう。経験はテキストに勝る学びの宝庫。経験と知識を生かし、患者さんに適した治療の実現を目指しましょう。
いつまでも学ぶ気持ちを忘れずに
似た症例の患者さんを何度か担当すると、一括りに考えてしまいがちですが、一人ひとり状態は異なります。患者さんそれぞれにもっとも適したケアを見抜き、それを実践する技術を身につけましょう。
日本理学療法士協会や各県の協会などでは、定期的にセミナーを実施しています。学びの場へ参加して知識を増やす、スタッフ同士で勉強会を開いて情報を共有するなどもとても大切なことです。身体が回復していく喜びを患者さんに体感してもらい、前向きな気持ちでリハビリに取り組めるようサポートしましょう。
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