理学療法士最大のストレス!? 気性の激しい患者さんへリハビリを進めるコツ
公開日:2016.09.12 更新日:2016.09.23
リハビリで動作の獲得を目指す場合、患者さんには積極的な姿勢で運動に取り組んでもらう必要があります。始めから積極的な人もいれば、何を言っても聞いてくれず、最後には怒り出してしまうような気難しい人もいます。それでも投げ出すわけにはいかないですが、対応にはかなりのストレスが伴ってしまいますよね。今回は、なぜリハビリへの協力が得られないのか、患者さんが抱える要因と対処法を考えてみましょう。
患者さんが抱える要因とは
リハビリに抵抗のある患者さんは、不調を抱えたままの状態でもかまわないと思っているわけではありません。だれもが健康を願うように、リハビリを拒否する患者さんの多くも、また、以前のように動けるようになりたいと思っているはずです。これにもかかわらず、リハビリに対する協力が得られないのにはどのような要因があるのでしょうか? 代表的なものとして以下の3つが考えられます。
A.運動の必要性に対する理解不足
リハビリでの運動と、それによって得られる身体能力の向上や維持が結びついていない場合、セラピストの説明不足と言い換えることもできます。
例えば、歩行時に膝折れを起こす患者さんに対して、徒手抵抗による膝関節伸展運動を実施したとします。セラピストは適切な評価から大腿四頭筋の筋力低下が原因と判断し、伸展運動の必要性を感じています。しかし、患者さんに対して、この運動に関する説明がまったくなかったとしたら、実際に取り組む本人はどう思うでしょうか? 病気によって体が重く寝ているところを運動しましょうと起こされ、椅子に座らされて足を押さえつけられ、力の入らない膝を何度も伸ばせと言われるのです。患者さんからしてみれば、つらい上に運動をしろとはどういうことだと、怒ってしまうのも無理はありません。これは極端な例ですが、セラピストの説明不足という原因は案外見落とされがち。患者さんが獲得したいと思っている動作に対して、なぜこの運動が必要かという説明は、モチベーションの観点からも必要不可欠です。
B.器質的な問題
どんなにていねいに説明を尽くしたとしても協力が得られない患者さんはいます。こうした場合は、患者さんの体の状態から考えてみましょう。例えば、術後の疼痛コントロールがうまくいっていないとしたら……痛みが強ければ、「運動どころじゃない!」とイライラしてしまうかもしれません。もしくは、難聴があり、あなたの説明がきちんと伝わっていない可能性も考えられます。聴覚は問題がなくても、脳血管障害により言語の理解ができていない場合はどうでしょうか。そのほか、認知症のなかでも、特に人格障害が強く出るピック病では、自制力の低下により不真面目な態度や暴力的な様子が見られたりします。このように、リハビリが進まない原因が患者さんのコンディションの問題だとわかれば、主治医と相談し薬を見直す、あるいは難聴ならそばに近づいてゆっくり話すといった対処の方法も考えられます。仮に対処が難しくても原因がわかれば、それだけで患者さんを受け入れやすくなることでしょう。
C.精神的な問題
気性の激しい患者さんのなかでも、特に注視したいのが、精神的な問題を抱えた人です。激しい口調や暴言、気性の激しさは、不安の裏返しかもしれません。患者さん自身が自分の状態を受け入れられずにいて、表面的にあらがっている可能性があります。
病気や障害を受け入れている状態を「障害受容」といいますが、この「障害受容」までには5段階のステージがあります。
1.ショック期(現状が把握できていない状態)
2.否認期(障害を認めたくない状態)
3.混乱期(怒ったり、泣いたりと、精神が不安定な状態)
4.解決への努力期(障害に対して改善しようと努力する状態)
5.受容期(障害を前向きにとらえている状態)
このなかで、特に1-3までの状態にある患者さんは、病気への理解や受け入れが不十分であるため、リハビリへの協力が得られにくい状況が考えられます。こうした患者さんには、5段階のステージを1つひとつ進んでいけるような取り組みから始めなければなりません。時間はかかるかもしれませんが、傾聴と助言により患者さんに寄り添いながら、セラピストとして患者さんが受容できるようにうながしていきましょう。
患者さんの行動には必ず原因がある
どんなに激しい気性を持つ人でも、単なる個性ととらえてしまうのは残念なこと。それぞれの行動には必ず意味があり、セラピストに訴えかけているとも考えられます。患者さんがリハビリを受け入れられない原因を特定し対処していくことで、セラピスト自身のストレス軽減にもつながります。可能な限り対応しながら、よりよいリハビリを進めていきたいですね。
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