席次のマナーを学ぶ~「立ち位置」でわかる思いやりの心【第29回】
公開日:2019.02.04 更新日:2023.05.09
文:村尾 孝子
薬剤師/医療接遇コミュニケーションコンサルタント
おもてなしの心をあらわす「席順」マナー
「席次」と聞いてもピンとこないという人も、「上座・下座」という言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。これまで取り上げてきた言葉遣いや身だしなみももちろん大切ですが、席順マナーを知っていれば、立ち位置ひとつでも患者さんへの思いやりの心をあらわすことが可能になります。今回は、ビジネスマナーのひとつである「席次」についてお伝えしていきます。
席次とは、わかりやすく言えば「誰がどこに座るか」という席順のこと。室内や車内での席次には、目上の人や年長者に対する敬意や、お客様に対するおもてなしの心が込められています。上座は目上の人や年長者が座る「良い席」。下座はその逆で、立場が下の人やおもてなしをする立場の人が座る席を示します。ここまで聞いて、「医療機関では席次なんて関係ないんじゃない?」と思った人もいるでしょう。席次と言うと、主に会議や式典など、公式な場面で使われるイメージが強いかもしれませんが、実は医療機関でも必要な知識です。
ビジネスでは、「目上の人」つまり役職が上の人や年長者に対して敬意をあらわすために良い席順を用意しますが、お客様へのおもてなしという意味でも用います。医療機関では、お客様に該当するのは「患者さん」ですから、患者さんへのおもてなし・思いやりの心をあらわすために席次のマナーを身につけておくと安心です。患者さんをお通しするのが上座、施術や案内をする医療者の席が下座、と覚えましょう。
一度覚えれば安心、場面別の席次ルールを身につけよう
ここまで読んでもまだピンとこない人もいると思いますが、身近な例としてエレベーターに乗るときの立ち位置を考えてみましょう。院内にエレベーターが設置されている場合、セラピストの皆さんは患者さんやそのご家族と一緒に乗る機会もあると思います。自分が先に乗っているところに、患者さんが後から乗ってくることもあるでしょう。そのとき、皆さんはどこに立ちますか? 患者さんと乗り合わせたら、患者さんをどの位置に誘導すればいいですか? これが上座・下座の考え方です。知っていれば落ち着いて案内できますが、席順が分からないと冷や汗をかくことにもなりかねません。
席次とともに、院内では
1.基本としては患者さん、目上の人、年長者の前を歩かない
(患者さんを案内する場合は、斜め前を歩くなど臨機応変に)
2.相手をできるだけ動かなくても済むようにする(可能な限り、自分が動く)
3.相手がケガをしないように安全に配慮する
といった相手を思いやる行動も重要です。特に医療機関は、受付~診察~検査~リハビリといった具合に、患者さんに施設内での移動を強いる特殊な空間です。患者さんに安心して治療を受けたり、院内で快適な時間を過ごしたりしてもらえるよう、医療者のこまやかな心配りが欠かせません。院内ではもちろんのこと、社会人としても様々な場面で必要となってくるのが席次マナー。これから数回に分けて、エレベーターや自動車・タクシー等の場面別に紹介してきます。一度覚えてしまえば安心ですから、席次の知識をしっかり身につけましょう。
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村尾 孝子(むらお たかこ)
薬剤師、医療接遇コミュニケーションコンサルタント。
株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
マイナビ薬剤師・連載コラムが書籍化された、
「患者さん対応のプロをめざす! 『選ばれる薬剤師』の接遇・マナー」が
2017年7月19日 同文舘出版より発売。
株式会社スマイル・ガーデン : https://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling!」: https://smilegrdn.exblog.jp/
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