クレーム報告書の重要性と作成時のポイント【第79回】
公開日:2023.05.31 更新日:2023.06.02
文:村尾 孝子
薬剤師/医療接遇コミュニケーションコンサルタント
クレーム報告書は、患者さんから受けたクレームの内容と対応等を、職場で報告・共有することを目的とした文書です。
自分が受けたクレームの内容を報告するのは、誰でもあまり気乗りしないものでしょう。しかし、クレームに誠意をもって対応し、その記録を残すことは、セラピスト自身だけでなく病院や職場にとっても貴重な学びとなり得難い財産になるはずです。
今回は、クレーム報告書の重要性と作成時に注意すべきポイントについて解説します。
クレーム応対後は職場ですばやく情報共有しましょう
クレームを受けたら、職場内ですばやく情報共有することが大切ですが、クレーム応対が終わった後の記録作成と情報共有も同じくらい大切です。
クレームは解決したら終わりではなく、クレームに含まれる問題点や課題を職場で共有して業務改善に活かすことが非常に重要です。報告を怠りクレーム事例を共有しないと、同じミスを繰り返したり、職場のイメージを損ねたりする恐れがあります。
クレームの再発リスクを減らすため、また患者さんからいただいたサービス改善のチャンスを無駄にせず有効活用するためにも、クレーム応対後は報告書等を用いて職場全体ですばやく情報共有してほしいと思います。
クレーム報告書のフォーマットを用意しましょう
クレームの報告・情報共有は、迅速に行うことが重要です。患者さん応対が終わると、ホッとしたり、クレームを受けた責任を感じたりして、報告書の記載まで思いつかないかもしれません。
先延ばしにしたい気持ちになることもあると思いますが、記憶があいまいになる前にしっかり記録してほしいと思います。
そこで役立つのが報告・共有しやすい職場環境や雰囲気作りです。記載事項を迷うことなく作成できるよう、報告書のフォーマットを用意しておくといいでしょう。
報告書に記載すべき項目としては、
- ・受付日
- ・担当者名
- ・クレーム発生日時
- ・発生場所
- ・患者さん情報
- ・クレームの内容
- ・発生原因
- ・クレーム対応の内容
- ・今後の対策
等があります。
クレーム報告書作成のポイント
①クレーム報告書の作成は迅速に
クレーム応対はできるだけ迅速に行うことが重要です。対応が遅れると問題が大きくなったり、解決までの時間が長引いたりして、患者さんからの信頼を失うことにつながりかねません。クレーム報告書もできる限り迅速に作成し、職場での情報共有を行ってクレーム予防に役立てましょう。
②事実を客観的に記載する
クレーム報告書は、事実をありのまま客観的に記載しましょう。患者さんからのクレームには感情的な内容や理不尽と感じられるものもあると思います。そんな場合も、あとから読み返して再発予防に役立てるため、報告書の作成は事実を冷静に記載するよう努めましょう。
③クレーム内容は簡潔に、時系列に記載する
クレームの内容については、クレームの原因と内容を時系列順に簡潔に記載するよう心がけましょう。対応に時間がかかったり、患者さんからの訴えが時間とともに複雑になったりした場合も、時系列に整理して記載することで対応の経緯を把握しやすくなります。
上記のポイントを押さえながら、患者さんの様子など印象に残った情報を追加して記載すると、今後のクレーム削減に役立つ貴重な記録になります。クレーム報告書をいつでも振り返って業務改善に活かせるよう適切に保管・保存して、クレームの予防と対策に活用してほしいと思います。
村尾 孝子(むらお たかこ)
薬剤師、医療接遇コミュニケーションコンサルタント。
株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
マイナビ薬剤師・連載コラムが書籍化された、
「患者さん対応のプロをめざす! 『選ばれる薬剤師』の接遇・マナー」が
2017年7月19日 同文舘出版より発売。
株式会社スマイル・ガーデン : https://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling!」: https://smilegrdn.exblog.jp/
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