作業療法士に向いている人とは?元教育担当からみた適性と能力
公開日:2021.10.07 更新日:2022.10.24
文:田口 昇平
(作業療法士、福祉住環境コーディネーター2級)
作業療法士を目指す人のなかには、「自分は本当に作業療法士に向いているのだろうか?」と、仕事への適性について気になっている人も多いことでしょう。確かに適性があれば、作業療法士として自分の強みを活かしながら働けます。では、どのような人が作業療法士に向いているのでしょうか。
筆者はリハビリ部門の元教育担当として、数多くの作業療法士を教育・指導してきました。その経験から言えるのは、「コミュニケーションが得意」、「フットワークが軽い」、「探究心がある」人は作業療法士に向いているということです。
今回は作業療法士に向いている人の特徴について、その理由を詳しくお伝えしましょう。
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目次
作業療法士に向いている人の特徴①コミュニケーションが得意
作業療法士は、コミュニケーション能力が求められる仕事です。病気や障がいを抱えると、その後は生活が大きく変わってしまい、これからどのような生活をしていけばよいのか、患者さん自身がわからず不安に感じています。
また、病気や障がいによって、言葉が話せなかったり、理解できなかったりする方もいます。こうした状況のなかで、本人の生活に必要なリハビリをおこなうには、患者さんの思いをうまくくみ取れるコミュニケーション能力が必要です。
作業療法士に向いている人の特徴②フットワークが軽い
作業療法士は、さまざまな職種と連携しながらリハビリをおこないます。そのため、他職種とスムーズに情報共有できるフットワークの軽さが求められます。
他職種との関わりは幅広く、例えば安全にリハビリをおこなうために、医師に運動負荷量を確認したり、看護師に健康状態を聞いたりする必要があります。
また、効果的なリハビリの実施に向けて、理学療法士(PT)や言語聴覚士(ST)といった専門職と、リハビリの方針や目標を共有することが大切です。さらに患者さんの退院先の生活環境を想定してリハビリをおこなうには、ソーシャルワーカーとの情報共有が欠かせません。
こうした状況に備えれば、作業療法士として安全で効果的なリハビリを実践できるでしょう。
作業療法士に向いている人の特徴③人に対して探究心がある
病名や障がい名が同じでも、身体機能の程度や可能な動作・ライフスタイル・趣味嗜好などは、患者さんによって異なります。
作業療法士は、患者さんに興味を持ち、ご本人が能力を活かしたり、モチベーションを高めたりできるように、いろいろな工夫をしながらリハビリをおこなう必要があります。「相手のことをもっとよく知りたい」という探究心がある人は、患者さんに合わせたオーダーメイドのリハビリができるでしょう。
手先が不器用な人や文系の人でも作業療法士になれる理由
作業療法士を目指す人から、「手先が不器用でもなれるのか」「文系でも問題ないか」という声を聞くことがあります。続いては、これらの疑問にお答えしましょう。
手先の不器用さは、作業療法士の適性に関係ない
作業療法士がおこなうリハビリのなかには、作品を作ったり、絵を描いたりするといった手先を使うものが多くあります。そのため、器用さが必要なのではないかと思われる人も多いのかもしれません。しかし、実は手先の器用さは作業療法士には重要ではありません。というのも、リハビリで作品づくりをするのは、患者さん自身だからです。
作業療法士の役割は、患者さんが作品づくりを楽しめるように、道具や作業環境を整えたり、やり方をアドバイスしたりすることです。時には、患者さんに「作業療法士に作品づくりを教える先生」という役割を担ってもらい、それをリハビリに活用することもあります。
病気や障がいで、できることが少なくなってしまった患者さんが、他者に自分の知識を教えることを通して、喜びを感じたり自信を回復したりするのです。作業療法士の適性としては、手先の器用さよりも、患者さんと作品づくりを楽しめることのほうが大切です。
文系でも作業療法士になれる
「医療」や「リハビリ」と聞くと、理系のイメージを持つ人もいるでしょう。実際に、作業療法士の養成校では、数学や理科を受験科目にしているところがほとんどです。しかしながら、作業療法士は文系でもなれる職種です。
なぜなら、作業療法士の養成校では文系・理系を問わず、さまざまなカリキュラムを学習するからです。
代表的な文系科目には心理学、理系科目には解剖学があります。これらの科目は、現場に出てからも、患者さんのリハビリをおこなうために欠かせない学問です。
もちろん、文系の人は理系の科目を勉強するのが大変に感じられるかもしれません。しかし、同じように理系の人も文系の科目を勉強するのは大変に感じられるものです。作業療法士になるために努力できるのなら、文系・理系で適性が決まることはありません。
作業療法士の適性で大切なのは「患者さんのために行動できるか」
今回は、作業療法士に向いている人の特徴をお伝えしました。「コミュニケーションが得意」「フットワークが軽い」「探究心がある」人は、作業療法士の適性があると言えるでしょう。
しかし、作業療法士としてもっとも重要なことは、「患者さんのためを思って行動できるか」ということにあります。リハビリの現場では、自分で支援内容を考えて行動にうつせる作業療法士が求められます。患者さんの生活をサポートしたい志のある方は、ぜひ作業療法士を目指してみてはいかがでしょうか。
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田口 昇平
作業療法士/福祉住環境コーディネーター2級
2008年に作業療法士免許取得後、東京都内のリハビリ専門病院や特別養護老人ホームなどの施設で医療や介護業務に従事。2018年より、フリーライターに転身。医療介護職の働き方や働きやすい労働環境づくりなど、幅広いテーマで執筆。心理学・脳科学分野の書籍を愛読し、学んだ内容をブログやSNSで情報発信している。
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