作業療法士はやめとけといわれる理由6選!対処法や向き不向きなど現役作業療法士が解説
公開日:2022.01.14 更新日:2024.04.09
文:かな(作業療法士)
作業療法士について調べようと思った時に、「作業療法士 やめとけ」というワードを目にしたことがあるかもしれません。実際に作業療法士として働いている筆者としては、良い面だけでなく、確かに「やめとけ」といわれる面もあると感じています。
そこで、現役作業療法士が思う「作業療法士はやめとけ」といわれる理由を解説するとともに、その対処法や作業療法士に向いている人の特徴をお伝えします。
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目次
「作業療法士はやめとけ」といわれる理由6選
なぜ「作業療法士はやめとけ」といわれるのでしょうか。実際に働いていて筆者や周りの人が感じた理由を解説します。
1.給料が低い傾向にあり、昇給も少ないから
医療職の給料は高いイメージがありますが、作業療法士の給料は期待しているような高収入ではありません。
国税庁が発表している「令和4年度民間給与実態統計調査」によると全給与所得者の平均年収は458万円。
一方、厚生労働省の資料「令和4年度賃金構造基本統計調査」によると、作業療法士の平均年収(※1)は約430万円(※2)と、全体平均より低い額になっています。
作業療法士の給与は、医療機関が受け取る診療報酬(※3)によって決まります。
経験や年齢を問わず、「リハビリ1回20分〇〇円」と報酬が決まっており、ベテランがリハビリしても病院に入る収入は同じです。そのため、昇給も少ない傾向にあります。
作業療法士の平均年収 | 430万円 |
---|---|
全給与所得者の平均年収 | 458万円 |
■参考
厚生労働省(令和4年度 賃金構造基本統計調査)
国税庁(令和4年度民間給与実態統計調査)
※1:理学療法士、言語聴覚士、視能訓練士を含む
※2:きまって支給する現金給与額×12(カ月)+年間賞与その他特別給与額の合算による
※3:診療報酬とは、医療行為1つ1つに対して決められている報酬額のこと
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2.作業療法士の人数は飽和状態だから
以前と比べて作業療法士の養成校は増え続けており、作業療法士の人数も増加しています。その分、需要があれば問題ないのですが、現状はそうとはいえません。
2019年に行われた厚生労働省の調査では、理学療法士と作業療法士の供給は既に需要を上回っており、2040年ごろには供給数が需要の1.5倍になると推計されています 。
超高齢化社会としてセラピストの需要が高まっているとはいえ、将来的に作業療法士は飽和状態になる可能性があるでしょう。
3.肉体的な負担が大きいから
勤務先により異なりますが、作業療法士は起居(※1)・移乗動作(※2)の訓練や介助・レクリエーションなど、肉体的な負担が大きい業務もあります。
なかには、自分より体格の大きい患者さんの介助や訓練もあり、大変だと感じることもあるでしょう。仕事によって慢性的な腰痛に悩まされている人がいるのも事実です。
※1:起き上がりや寝返りなどの動作
※2:ベッドから車椅子へ、車椅子からトイレなどへ乗り移る動作
4.精神的ストレスが大きいから
作業療法士が患者さんのリハビリを行う際、プレッシャーが大きいと感じる時もあります。原因はさまざまですが、よく聞く例を以下に紹介します。
・患者さんの機能が回復しない
・患者さんからリハビリを拒否される
・職員間の連携が取れない
リハビリそのものに関するものと人間関係にまつわるものが主なストレスになりがちです。
5.残業が多い傾向にあるから
厚生労働省の調査「毎月勤労統計調査」によると、令和4年度において、作業療法士の月の残業時間は平均5時間でした。
全給与所得者の平均残業時間が10時間であり、比較すると少ない傾向にあります。しかし、これはあくまで目安であり、勤務先によっては残業が月5時間以上のところもあります。
理由は勤務先によって異なりますが、以下の業務を就業時間後に行っている場合が多いようです。
・会議・カンファレンスへの出席
・リハビリの勉強会の参加
・実習生の指導
また、患者さんのリハビリは1単位20分ずつで計算されますが、カルテ記入の時間はリハビリの時間に含まれません。
そのため、担当患者数が多かったり、リハビリを受け持つ回数が多かったりすれば、カルテ記入の時間も増え、残業になりやすいでしょう。
残業代が発生することではありますが、なかにはサービス残業として収入が発生しないケースもあるようです。
6.休みが少ない傾向にあるから
作業療法士はおおむね年間休日数110日前後の施設が多いでしょう。具体的には週休2日・4週8休のところが多く、年間休日120日以上や土日祝休みの施設は少ない傾向にあります。
特に症状が出始めた急性期や、症状が安定・回復してくる回復期の治療として、365日リハビリを実施する施設では、休みが少ない傾向にあります。勤務先によって異なるため、土日休みで年間休日120日以上の施設もあります。
とはいえ、全体的に作業療法士は休みが少ない傾向にあるため、やめとけばよかったと思う人がいるようです。
「作業療法士やめとけば良かった」とならないためにできる対策
作業療法士として働くデメリットの多くは収入面や待遇面にあります。そうした不安を解消できれば、作業療法士として気持ちよく働くことができるでしょう。具体的には、以下のような方法を検討することをおすすめします。
・経験を積んだ後、休みが取りやすい職場、給与が高い傾向にある職場への転職を目指す
・副業をして収入アップを図る
・作業療法士の資格を生かしながら、副業をすることで収入をアップする
・独立開業する
自身のスキルを活用して、開業し、経営者兼セラピストとして活躍する。ただし、作業療法は医師の指示の下で行うものと法律で決められています。独立する場合には、作業療法以外のサービスで開業する必要があります。
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作業療法士のやりがい
作業療法士のデメリットを中心にお伝えしてきましたが、やりがいも大きい仕事です。そこで実体験や周りの作業療法士の話をもとに、どのようなやりがいがあるのかまとめました。
患者さんの変化を感じられる
患者さんのちょっとした変化を感じられるなど、毎日のリハビリの成果が目に見えてくると、大きなやりがいを感じます。
昨日まではできなかった動きができるようになった、ご飯を一人で食べられるようになったなど、患者さんの機能の改善につながるリハビリができると、やりがいを感じられるでしょう。
患者さんの社会復帰に役立てる
病気や怪我で障害を負った患者さんが、リハビリにより職場に戻ることになり、社会復帰ができた瞬間は、喜びもひとしおです。
病気や障害によっては長期間のリハビリを要しますが、その経過を見てきた作業療法士にとっては、患者さんの回復に自身のスキルや経験が役に立ったことにやりがいを感じます。
専門性を高められる
作業療法士といっても、さまざまな分野があります。多くの場合、身体障害・精神障害・老年期障害・発達障害のいずれかの現場で働いています。
複数の異なる分野に携わる人もいますが1つの分野で長く働く人の方が多い傾向にあります。それぞれの分野に役立つ知識や技術を向上させたり、関連資格を取得したりして専門性を高められるのもやりがいといえるでしょう。
自分の趣味や特技を生かせる場面がある
作業療法士は勤務先によって、さまざまな治療手段を用います。用いる作業は幅広く、手工芸や音楽、スポーツも対象となります。
自分が趣味や特技として楽しんできたことが、患者さんのリハビリに生かせることも少なくありません。好きなものを広く紹介したり、楽しみながらリハビリに取り入れたりできるのも、やりがいにつながります。
個別性の高いリハビリメニューを考えられる
作業療法では患者さん一人ひとりの心身の状態に合わせて考え、オーダーメイドのメニューを取り入れます。
同じ病気であっても、患者さんの状態や性格は個々に異なります。作業療法士として細かくメニューを考えたり、患者さんに合わせてメニューを変更したりできるのは、作業療法士の醍醐味といえます。
自己研鑽で身につけた知識が生きたり、患者さんの趣味や興味を生かしたメニューの提案が喜ばれたりして、患者さん本人も作業療法士もモチベーションが上がることでしょう。
作業療法士に向いている人の特徴
作業療法士はやりがいがある仕事ですが、向き不向きがあります。どんな人が向いているのか解説します。
観察力がある
作業療法士はリハビリメニューを考えて終わりではありません。日々のメニューを実施しながら患者さんの変化に気づき、その都度メニューを検討する必要があります。
そのため、患者さんの変化を見逃さない観察力があるとよいでしょう。
忍耐力がある
患者さんのリハビリはすぐに結果が出ないことも多く、職場によっては数カ月単位で関わることもあります。
そのため、すぐに結果が出なくても焦らず、じっくりと長い目で見られる人の方が作業療法士に向いているでしょう。
人と関わるのが好き
リハビリを実施する際には患者さんとのコミュニケーションは欠かせません。また、患者さんはもちろんその家族との関わりが求められる場面もあります。
さらに職員同士、他の部署との連携も欠かせないため、人との関わりが好きな人が向いています。
作業療法士に向いていない人の特徴
一方で、作業療法士に向いていない人はどんな人でしょうか。どんな仕事にも向き不向きがありますが、自分の適性に合った仕事を選ぶ方が長続きするでしょう。
続いて、作業療法士に向いていない人の特徴をお伝えします。
患者さんの人間性に興味がもてない
作業療法士として医学的な知識や技術が必要ですが、加えて、患者さん自身に関心を持つことも大切です。すべての患者さんがリハビリに積極的なわけではなく、関わり方によってはリハビリがうまく進まないこともあります。
スムーズにリハビリを進めるためにも、患者さんの人となりや生活歴などを聞き取り、興味を持ち、理解する必要があります。そうした患者さんとのやり取りが苦手、そもそも相手に興味を持てないという人は、作業療法士に向いていないかもしれません。
資格を取ったらそれで勉強が終わりと思っている
作業療法士は「資格を取ったらそれで終わり」ではなく、働き出しても勉強が必要な仕事です。
医療分野は常に進歩しており、疾患の治療法・手術方法をはじめリハビリの方法が変わることもあります。新しい文献に触れたり、研修会に参加したりして知識や技術をアップデートするなど、継続的な自己研鑽が求められます。
働き出してから勉強はしたくないと感じているのであれば、作業療法士をはじめ医療職には向いていない可能性があります。
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作業療法士になるための方法
作業療法士として働くには国家資格(作業療法士免許)が必要です。国家資格を取るには都道府県知事または文科大臣が指定する養成校で3年以上学び、知識と技能を習得したうえで、国家試験を受験して合格する必要があります。
養成校では講義形式の座学から実習、さらには病院や施設での長期実習などがあり、多岐にわたるカリキュラムを学びます。課題も多く、こなす必要があります。
なお、国家試験の合格率は例年およそ80%台で推移しています。合格率が高いため簡単そうに見えるかもしれませんが、人体の解剖学や運動学をはじめ、臨床心理学やリハビリテーション医学など幅広い知識を求められます。
デメリットもあるけれど作業療法士はやりがいのある仕事
現役作業療法士から見ても、作業療法士として働くデメリットがいくつかあることは否定できません。しかし、その大半は待遇面にあり、職場を選ぶことで解消できる問題といえます。
また、年収が高ければよいというわけではなく、ワークライフバランスやスキルアップ、キャリアアップなどを考慮して、自身が納得して働くことができれば問題ないでしょう。
自己研鑽も欠かせず、将来的に供給過多になる可能性もありますが、現役作業療法士である筆者としては楽しい仕事だと感じています。
やりがいを感じられる作業療法士の仕事にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
■関連記事
作業療法士に多い6つの退職理由|理想の職場探しのコツも解説
参考
令和4年分 民間給与実態統計調査
令和4年賃金構造基本統計調査
【資料1】理学療法士・作業療法士の受給推計の結果

かな(作業療法士)
作業療法士/呼吸療法認定士・福祉住環境コーディネーター2級・がんのリハビリテーション研修修了
身体障害領域で15年以上勤務。特に維持期の患者さんの作業療法、退院支援に携わってきました。家では3人の子ども達に振り回されながら慌ただしい日々を送っています。趣味は読書とお菓子作り。
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