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「作業療法士はやめとけ」といわれる原因5選!現役OTの本音を紹介

公開日:2022.01.14 更新日:2023.08.03

「作業療法士はやめとけ」に対して現役OTが伝えたいこと

文:宮木 美智香
(作業療法士、福祉住環境コーディネーター)

みなさんは、「作業療法士」と聞いてどんな仕事をイメージしますか?

私が高校生だったころ、医療系進路のガイドブックには「作業療法士は”手工芸を通して体の不自由な方のリハビリをします”」と書かれていました。私は「楽しみながら体をよくするなんておもしろそう!」と思った記憶があります。

「作業療法士協会」の統計によると、2021年9月1日現在、全国には104,286人の作業療法士の有資格者がいるようです。

作業療法士も理学療法士と同様に飽和状態といわれていますが、現場では「リハビリをしたくてもできない“リハビリ難民”」が増えています。2018年の時点でその数はおよそ200万人以上といわれており、まだまだ作業療法士の需要はありそうです。

このような状況でも、果たして作業療法士にならないほうがよいのでしょうか、あるいはやめたほうがよいのでしょうか──。

この記事では現役作業療法士の筆者が「作業療法士をやめる人がいる理由」や「作業療法士の仕事の魅力」について解説します。

参考:機関誌『日本作業療法士協会誌』|日本作業療法士協会

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「作業療法士はやめとけ」といわれる原因5選

せっかく苦労して勉強して作業療法士になっても、作業療法士をやめてしまう人たちもいます。その理由はさまざまですが、「作業療法士はやめとけ」といわれる原因として次のような理由があると思います。

1.給料や年収が低いと感じたため
2.仕事量の多さとハードさ
3.理想と現実のギャップ
4.責任の重さ
5.職場での人間関係の難しさ

順番に見ていきましょう。

①給料や年収が低いと感じたため

他の職種に比べて給料や年収が低いと思い、辞めたいと感じる方もいるようです。

2022年3月に公表した「令和3年賃金構造基本統計調査」をみてみると、作業療法士(正社員)の平均年収は、約427万円です。

業規模別では、従業員数1,000人以上の職場に勤務する作業療法士の平均年収は、もっとも高い約463万円。従業員数10~99人の職場に勤務する作業療法士が約414万円、従業員数10人以上の職場が約427万円、従業員数100人~999人の職場で約419万円となっており、勤務する職場の規模によって年収に違いがあることが分かります。

【作業療法士の平均給料・年収統計(企業規模別)】

10人以上 10~99人 100~999人 100~999人
約427万円 約414万円 約419万円 約463万円

※年収の算出方法:決まって支給する現金給与額×12か月+年間賞与その他特別給与額
※調査結果には理学療法士・言語聴覚士・視能訓練士のデータも含まれています

給料は働いている地域や経験年数などによって違いが出るため、上を見ればきりがありませんが、平均と比べた場合に少ないと感じることがやめる原因の1つかもしれません。

厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」

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作業療法士の給料が安いのはなぜ?平均年収と収入アップのポイント

②仕事量の多さとハードさ

もう1つ、仕事量も関係しているかもしれません。作業療法士の仕事には、対象者へのリハビリはもちろん、書類作成や新人教育、カンファレンスなどもあります。

病院で働く作業療法士の1日のスケジュール例をあげてみると、下記のような流れになります。

業務内容
8:30 出勤
8:45 朝礼
9:00 リハビリ業務
12:00 休憩 食事場面評価もあり
13:00 ミーティング、カンファレンス
13:30 リハビリ業務
17:00 終業

上記のスケジュールのなかでも、カルテ入力、転院サマリー作成、計画書作成、新人指導、学生指導、家族指導といった業務もあり、残業が多くなってしまうこともしばしばです。

また、勤務先によっては、委員会や課内での係などもあります。

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作業療法士の仕事の本音は?給料・人間関係・職場環境など

③理想と現実のギャップ

学生のころ、私は「作業療法士はリハビリをすればいい」と思っていましたし、「誰にでもスムーズにリハビリを行える」と思っていました。しかし、現実はそう甘くはありませんでした。

精神科や脳卒中の後遺症、認知症などの方々の症状は、心や頭の中の問題で生じる障害・症状のため、対象者自身がリハビリの必要性がわからないこともありました。そのため、リハビリをしたくてもリハビリがスムーズに行えないこともあります。

また、障害を受け入れられずに抑うつ傾向となり、リハビリが進まない方もいるのです。

④責任の重さ

私が学生のころ、先生に「お前たちは、患者さんの人生を背負っているんだぞ!」と言われた一言を今でも強烈に覚えています。

記憶は定かではありませんが、確か実習を終えて自分たちがどのような患者さんを担当し、どのような評価・、治療を行ったかを発表する実習後教育で言われた一言だったと思います。
この言葉を聞いたとき、強烈すぎて一瞬思考が停止し、「とんでもない仕事を選んでしまったな」と思ったことを覚えています。

現場に出て14年ほどになりますが、今でも時々この言葉を思い出して戒めにしています。
心身に障がいを持つと生活が一変し、今までと同じように生活をしたり仕事をしたりすることが難しくなることが多くなります。

そのため、できる限り元の生活に近い状態に戻すことや、生活や仕事が円滑に進められるような支援が必要になります。

そのために、家族の協力を得るために家族への指導を行うこともありますし、在宅へ退院するのであれば、自宅でのリハビリ指導や生活指導、地域との連携を行う必要があります。また、住環境を整備するために福祉用具なども選定します。

そうしたこと1つでも怠ってしまうと、患者さんを元の生活に戻したりすることができなくなってしまい、患者さんの生活が悪い方向にいってしまう可能性があるのです。

⑤職場での人間関係の難しさ

作業療法士は、チームとなって対象者を支援していきます。そのため、看護師、医師、MSW(医療ソーシャルワーカー)などさまざまな職種とかかわりをもちます。

職種が多ければ多いほど刺激があり勉強になりますが、人によってはそれが精神的な負担となりストレスになることもあります。

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チーム医療における作業療法士の役割とは?他職種連携で大切なこと

作業療法士に向いていない人の特徴3選

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作業療法士に向いていない人として、次のようなものがあると思います。

①考え方が固執している人
②共感ができない人
③ネガティブな人

順番に解説していきます

①考え方が固執している人

自分自身の思いや考えがしっかりしていることはとてもいいことです。しかし、対象者にとってその考えが必ずしも正しいとは限りません。対象者はもちろん、他職種の意見に耳を傾けて、対象者にとってよりよい方法を見出すことが必要になります。

②共感ができない人(相手の立場になって考えたり話したりすることができない人)

対象者は心身に障害を抱えており、リハビリ中につらい思いなどを聞くことも少なくありません。深入りする必要はありませんが、対象者に寄り添った相づちや声かけなどができない人は、作業療法士には向いていないように思います。

③ネガティブな人

対象となる方は、心身に障害を持った方たちです。無理にポジティブにする必要はありませんが、支援者となるセラピストがネガティブだと対象者も不安になってしまいます。

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作業療法士に向いている人の特徴3選

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私の経験上、下記の方は向いていると思います。

①人と話すことや関わることが好きな人
②作ることが好きな人
③柔軟に動ける人

もし作業療法士として働くことに興味がある方は当てはまっているか確認してみましょう。

①人と話すことや関わることが好きな人

リハビリを進めていく上で、対象者の人柄や趣味、好きなことなどを聞き、それをもとに治療プログラムを立案することもあります。また、多職種連携は必須であり、対象者の支援のため積極的に対象者の情報収集を行ったり、対象者支援のために情報を発信したりする必要があります。

②作ることが好きな人

器用か不器用かではなく、“作る(創る)”ことが好きな人は向いていると思います。
作業療法士は生活をしやすくするため、自助具というお助けグッズを作ることもあります。また、働く施設(特に介護施設など)によっては、季節の行事やイベント、レクリエーションに力を入れているところもあります。イベントの際には、掲示物や装飾品を作成することもありますし、盛り上げ役となってその場の雰囲気を作ることも必要なときがあります。

③柔軟に動ける人

急に評価を依頼されたり、相談を受けたりすることも少なくありません。また、家族指導を行う際は、ご家族の予定が優先されます。病院などでは、リハビリの専門職が在籍していることが多く、各分野に分かれて仕事をすることができますが、施設によってはリハビリ職が少なかったり、1人職場のところもあります。仕事の量を調節したり、優先順位をつけるなども必要になります。

作業療法士を辞めた人の進路について

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何らかの理由によって、作業療法士を辞める人は、決して珍しいことではありません。
どんな仕事でもそうですが、実際にやってみないとわからないことも多くあります。作業療法士を辞めた場合、どのような仕事に就くのでしょうか。

ライター、編集

作業療法士を辞めて手っ取り早く始められるものにライターや編集の仕事があります。パソコン1台あれば始められること、さらに、作業療法士は医療知識があるため、それを活かすことができるメリットがあります。
具体的な仕事としては、医療系のサイトの記事や本の執筆、また書籍の編集などがあります。

実は私も数年前、病院の多忙な日々から抜け出したく、作業療法士として働くことを一度辞めたことがありました。自宅でゆっくり過ごしたくて、専業主婦の傍ら、サマリーや勉強会の資料作りなどで培ったスキルを活かし、文章添削の仕事をしたことがあります。
しかし机に向かい、赤ペンで知らない人の文章を添削することは変化がなくて単調な作業に思え、その日々がつまらなくなって数日で辞めてしまいました。

一方で、そうした仕事が合っていると感じる人もいるのも事実です。在宅ワークが可能なことから、子どもができた場合に、選択肢として入りやすい側面もあると思います。

隣接業界へ飛び込む

作業療法士の仕事とは違うももの、それに近い隣接分野に進む人もいます。
アロマセラピストになって勤務したり、スポーツジムでインストラクターになる人もいます。

親の家業を継ぐ

一度作業療法士になったものの、親の事業を継ぐ人もいます。親が経営している認定こども園に入職したり、結婚した奥さんの実家の飲食店の店を任されたからと辞めていく人もいます。

経営者になる

自ら法人を立ち上げて経営者になる人もいます。訪問看護ステーションやデイサービスの事業所を立ち上げて看護師など人を雇用して運営したり、放課後等デイサービスを経営する人もいます。
ちなみに作業療法士は、医師の指示のもと作業療法を行わなければならないため、作業療法以外のサービスで開業する必要があります。

【14年目OTの本音】作業療法士を続けるメリット

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私は作業療法士になって14年ほどたちます。14年間でさまざまな分野でたくさんの方々のリハビリを行ってきました。対象者の方にリハビリを拒否されたり、担当変更をお願いされたり、なかなかうまくいかないことも数多くありました。

それでもやはり、私は作業療法が大好きでとても楽しいです。その理由を考えてみると、大きく3つの理由が思い浮かびます。

①作業療法士は「働く場所」の選択肢が多い

作業療法士は病院、老健、訪問リハ、精神科、デイと働く場所の選択肢が多いのが特徴です。作業療法の定義は、次のとおりとなります。
「作業療法は、人々の健康と幸福を促進するために、医療、保健、福祉、教育、職業などの領域で行われる、作業に焦点を当てた治療、指導、援助である。作業とは、対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す」

つまり、人の生活そのものが作業療法であって、作業療法士が活躍できる場所はたくさんあるのです。
たとえば、作業療法士は次のようなところで働くことができます。

病院 急性期、回復期、療養型、クリニックなど
高齢者施設 介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、グループホームなど
地域 訪問看護、訪問リハビリ、デイサービス、デイケアなど
行政系 保健所、市町村保健センター、 地域包括支援センターなど
教育・研究 教育養成施設、研究施設、特別支援学校など
その他 補装具作成施設、一般企業、職業センターなど

私は作業療法士の免許取得後、療養型病院で勤務していました(後に、回復期を併設し、系列の急性期病院でも働きました)。その後、総合病院で経験を積み、さらに訪問リハビリやクリニック、有料老人ホームでの勤務も経験しています。

■関連記事
作業療法士の就職先と選び方~働く場所の割合と病院以外の選択肢~

②作業療法をとおして、その人らしさを知ることができる

作業療法士の仕事の魅力の2つ目は「対象者のその人らしさを知ることができる点」にあると思います。

施設や地域での作業療法では、対象者の実際の生活の場でリハビリをするため、生活リハビリや機能訓練のほか、余暇活動を行うこともあります。

余暇活動とは、散歩をしたり料理をしたり手芸をしたりと、人生の活力源となる活動のことです。そのため、一見遊んでいるように思われがちですが、余暇活動を一緒に行うことで、「こういうことに生きがいを感じるんだ」と知ることができ、その人らしさを知ることができるのです。

③元気になった姿を見るのがうれしい

3つ目は、なんといっても、対象者が元気になった姿を見たときのうれしさにあると思います。

今まで普通の生活をしていた人が突然、体が動かなくなり、頭も機能しなくなります。対象者はつらく悲しい日々の連続です。

それでも少しずつ回復し、意欲を取り戻し、数か月、数年後には、また元の生活に近い状態に戻っています。そんな姿を見ることができたときには、なんとも言えない、うれしい気持ちになるのです。

作業療法士は患者の人生に寄り添うことができる仕事

作業療法士は、リハビリだけでなく、その他の業務もたくさんあり大変な仕事であることに間違いありません。それでも、多くの職種の方々から学ぶこともたくさんあり、自分にはない視点を数多くもつことができます。

これまでの経験を活かして対象者の回復、喜びを共有でき、さらに対象者の姿をリアルに見たり感じたり、人生に寄り添うことができる仕事でもあるのです。

筆者は作業療法士になってすでに14年経ちますが、そんな作業療法の仕事が今も大好きで仕方ありません。

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宮木 美智香

宮木 美智香

作業療法士/福祉住環境コーディネーター
2006年、一度作業療法士の国試に落ちるも、2007年には合格。一般病院を経て、訪問リハビリやデイサービス、有料老人ホームなどで勤務している。

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