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言語聴覚療法におけるパーキンソン病への対応

公開日:2023.12.21

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文:近藤 晴彦
東京都言語聴覚士会 理事 広報局局長

本記事の概要

今回取り上げる言語聴覚士国家試験の過去問のテーマは、「パーキンソン病」です。
パーキンソン病は、アルツハイマー病に次いで2番目に多い神経変性疾患であり、症状は振戦、動作緩慢、筋固縮、姿勢反射障害を四大症状とし、これらの運動障害の他にも情動・認知・行動障害などの非運動障害を認めることが知られています。
今回は言語聴覚療法におけるパーキンソン病への対応について解説していきます。

《問題》パーキンソン病でみられない症状はどれか

【言語聴覚士】第25回 第15問
パーキンソン病でみられない症状はどれか。

<選択肢>

  1. 1. 嗅覚障害
  2. 2. 前傾姿勢
  3. 3. すくみ足
  4. 4. 仮面様顔貌
  5. 5. 腱反射の亢進

解答と解説

正解:5

パーキンソン病の主要症状は、振戦、動作緩慢、筋固縮、姿勢反射障害。四大症状と呼ばれます。その他にも情動・認知・行動障害などの多様な症状が認められます。
今回の設問の選択肢では1.~4.についてはいずれも正しい記述となりますが、「5.腱反射の亢進」は誤った記述です。パーキンソン病は錐体外路系の障害であるため、上位運動ニューロンの障害で認められる腱反射の亢進は認められません。したがって正解は5.となります。

実務での活かし方~パーキンソン病の評価・介入~

言語聴覚療法におけるパーキンソン病への対応にはいくつかのポイントがあります。今回は(1)パーキンソン病に認められる発話障害・摂食嚥下障害、(2)パーキンソン病に認められる情動・認知・行動障害、(3)評価・介入のポイントの3つの観点から解説していきます。

(1)パーキンソン病に認められる発話障害・摂食嚥下障害
パーキンソン病では、発症初期から発話障害が認められることが知られています。具体的には、声が小さくなる(小声)、声量とピッチが単調になる、強勢アクセントの低下、早口になる、吃音様に最初の音が出なくなるなどの発話特徴があり、パーキンソン病の進行により症状はさらに悪化します。
パーキンソン病による言語障害に対する介入としては、行動療法であるLee Silverman Voice Treatment LOUD®(LSVT LOUD®)が国際的に広く知られています。

パーキンソン病には摂食嚥下障害が認められることも知られています。特徴としては、先行期から食道期の各期に障害がみられる、Hoehn-Yahr重症度など身体的運動障害とは必ずしも関連しないこと。摂食嚥下障害の自覚に乏しい、むせのない誤嚥(不顕性誤嚥)が少なくない、治療薬の作用が摂食嚥下機能に影響するといったことも特徴に数えられます。

(2)パーキンソン病に認められる情動・認知・行動障害
パーキンソンに認められる情動・認知・行動障害には、気分障害、錯視・幻視・妄想、衝動制御障害、認知症、社会性認知・意思決定能力の障害があります。そのうち気分障害には、うつ、アパシー(意欲低下)やアンヘドニア(快感の消失)や不安などがあり、認知症では、遂行機能障害、注意障害、視空間認知障害を認めることがあります。
また、意思決定能力の障害にはギャンブリング課題において、パーキンソン病患者は損をする行動を選択する傾向があることが広く知られています。

(3)評価・介入のポイント
パーキンソン病は、発話障害・摂食嚥下障害の他にも、情動・認知・行動障害など多様な症状を認めます。また、進行性の疾患であることから罹患期間や病状の進行度合によって症状が異なります。そのため、現在の病状はどの程度の進行度であるのか情報収集を行うことが重要です。また、パーキンソン病の症状は薬剤の影響を大きく受けるため、onの状態とoffの状態について評価をすることが重要です。

パーキンソン病への介入については、パーキンソン病は多様な症状を認めるため、医師をはじめとした多職種との連携が欠かせません。その中で、発話障害や摂食嚥下障害などの運動障害の評価・介入のみならず、情動・認知・行動障害などの非運動障害について評価・介入を行うことは言語聴覚士の大きな役割であると考えられます。

まとめ

言語聴覚療法におけるパーキンソン病への対応について解説しました。パーキンソン病では発話障害や摂食嚥下障害といった運動障害と情動・認知・行動障害といった非運動障害が認められます。また、パーキンソン病は多様な症状を認めるため、医師をはじめとしたチームアプローチが極めて重要になります。

[出典・参照]
藤田郁代ら.標準言語聴覚障害学 高次脳機能障害学 第3版.医学書院,2021
前野崇ら.パーキンソン病の音声障害. The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 2019;56(3)
野﨑園子.パーキンソン病の摂食嚥下障害.The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 2019;56(3)

近藤 晴彦

近藤 晴彦(こんどう はるひこ)

東京都言語聴覚士会 理事 広報局局長
国際医療福祉大学大学院 修士課程修了。
回復期リハビリテーション病院に勤務する言語聴覚士。
東京都言語聴覚士会ロゴ 東京都言語聴覚士会
http://st-toshikai.org/
東京都におけるすべての言語聴覚士が本会に入会され、自己研鑽に励み、地域社会に貢献することを目指し、活動中。

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