医療介護・リハビリ・療法士のお役立ち情報

セラピストプラス

マイナビコメディカル
マイナビコメディカル

医療介護・リハビリ・療法士のお役立ち情報

セラピストプラス

言語聴覚療法における記憶障害の評価・介入

公開日:2023.10.27

pixta_53945472_S-2.jpg

文:近藤 晴彦
東京都言語聴覚士会 理事 広報局局長

本記事の概要

今回取り上げる過去問のテーマは、記憶障害の評価・介入についてです。記憶障害はアルツハイマー病などの認知症の中核症状でも見られますが、今回は脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患によって生じた記憶障害を取り上げます。
記憶は、「エピソード記憶」「意味記憶」「手続き記憶」などに分類されます。本記事では「エピソード記憶」の障害を中心に解説していきます。

《問題》損傷によってエピソード記憶の障害が起こらないのはどれか。

【言語聴覚士】第21回第161問

損傷によってエピソード記憶の障害が起こらないのはどれか。

<選択肢>

  1. 1. 脳梁膨大後域
  2. 2. 前脳基底部
  3. 3. 視床
  4. 4. 海馬
  5. 5. 角回

解答と解説

正解:5

記憶障害を引き起こす原因疾患として、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血、脳外傷、脳腫瘍、脳炎、脳変性疾患が挙げられます。「エピソード記憶」との関連が深い回路・領域には、パペッツの経路、ヤコブレフの経路、前脳基底部があります。今回の設問では<5>角回はこれらの経路や領域のいずれにも含まれません。したがって正解は〈5〉角回となります。

実務での活かし方~言語聴覚療法における記憶障害の評価・介入~

それでは、言語聴覚療法における記憶障害への評価・介入について解説していきます。
「記憶障害の原因疾患と症状」「言語聴覚療法における評価・介入のポイント」の2つの観点から説明します。

(1)記憶障害の原因疾患と症状
記憶障害を引き起こすとされる脳部位として、内側側頭葉、間脳、前脳基底部があります。

●内側側頭葉
海馬および海馬傍回、扁桃体などが位置し、これらの損傷によって生じる記憶障害は内側側「頭葉性健忘」と分類されます。
内側側頭葉性健忘の原因疾患には、ヘルペス脳炎、一酸化炭素中毒など。
主な症状として、前向性健忘、逆行性健忘をともに認めますが、作話は少ないと言われています。

●間脳
視床、乳頭体、脳弓などがあり、これらの損傷によって生じる記憶障害は「間脳性健忘」と分類されます。
間脳性健忘の原因疾患には、ウェルニッケ脳症、視床梗塞、第3脳室腫瘍など。
主な症状として、前向性健忘、逆行性健忘をともに認め、特に顕著な逆行性健忘を認めることが特徴です。また、病識の欠如を認めることがあります。

●前脳基底部
前頭葉底部の後端、脳梁膝部下方にあり、マイトネルト基底核や嗅皮質など、前頭葉腹内側後方から大脳基底核の前方の領域です。この領域の損傷によって生じる記憶障害は「前脳基底部健忘」と分類されます。
前脳基底部健忘の原因疾患には、前交通動脈破裂によるくも膜下出血、頭部外傷など。
主な症状として、前向性健忘、逆行性健忘をともに認め、特に顕著な逆行性健忘を認めることが特徴です。また、作話を認めることや時間的順序の記憶の障害を認めることがあります。

(2)言語聴覚療法における評価・介入のポイント
記憶障害における実際の臨床の流れは、他の障害と同様に、「スクリーニング検査→鑑別診断検査→介入→再評価」となります。ただし、記憶障害は原因疾患や損傷部位によって分類をおこうため、実際に患者さんにお会いする前に医学的診断名や損傷部位などの情報収集をおこなうことが重要になります。

また、記憶障害以外の高次脳機能障害を合併することが多く、特に情動障害を合併することもあり、慎重な介入が必要です。

記憶障害の検査には、包括的な検査として「ウェクスラー記憶検査改訂版(WMS-R)」や「リバーミード行動性検査(RBMT)」が良く知られています。なかでも、リバーミード行動性検査(RBMT)は、日常生活に必要な記憶を総合的に評価できることが特徴であり、リハビリテーションの現場では広く活用されています。

まとめ

言語聴覚療法における記憶障害の評価・介入について解説しました。
記憶障害は損傷部位により、「内側側頭葉性健忘」「間脳性健忘」「前脳基底部健忘」に分類されます。
実際の臨床では、医学的情報などの情報収集をおこなうことや、記憶障害以外の高次脳機能障害の有無や重症度を明らかにすることが重要です。また、情動障害や病識の欠如などを合併していることがあり、慎重な介入が必要とされます。

[出典・参照]
藤田郁代ら.標準言語聴覚障害学 失語症学 第3版.医学書院,2021

近藤 晴彦

近藤 晴彦(こんどう はるひこ)

東京都言語聴覚士会 理事 広報局局長
国際医療福祉大学大学院 修士課程修了。
回復期リハビリテーション病院に勤務する言語聴覚士。
東京都言語聴覚士会ロゴ 東京都言語聴覚士会
http://st-toshikai.org/
東京都におけるすべての言語聴覚士が本会に入会され、自己研鑽に励み、地域社会に貢献することを目指し、活動中。

今よりさらに良い環境で働けるよう
キャリアドバイザーが全力でサポートします
\今すぐ1分で完了/

    <PR>マイナビコメディカル

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  •  LINEで送る

他の記事も読む

おすすめ

TOPへ