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言語聴覚療法における廃用症候群への対応について

公開日:2024.02.24

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文:近藤 晴彦
東京都言語聴覚士会 理事 広報局局長

本記事の概要

今回取り上げる過去問のテーマは、廃用症候群への対応についてです。
廃用症候群とは、疾患などのために活動性や運動量の低下した安静状態が続くことで、全身の臓器に生じる二次的障害の総称であります。

リハビリテーションでは、廃用症候群リハビリテーション料が設定されており、病院などの医療機関に勤務されている方にはなじみ深いことでそう。今回は言語聴覚療法における廃用症候群への対応について解説します。

廃用症候群の原因

廃用症候群を誘発する要因としては、
・人工呼吸器管理や集中治療室管理を要する重症疾患
・多発外傷
・急性感染症
・手術後
・熱傷など高度の侵襲を生じる疾患
などが挙げられます。
高齢者の場合では、軽度の侵襲や短期間の安静臥床でも廃用症候群を認めやすいと言われています。

廃用症候群の主な症状として、筋萎縮、骨粗鬆症、関節 拘縮など筋骨格系の障害。その他、心機能低下、起立性低血圧、深部静脈血栓症、摂食・嚥下障害、褥瘡、便秘、尿路感染症、抑うつ状態、高次脳機能障害など多様な症状が認められます。

《問題》廃用症候群でみられるのはどれか

【言語聴覚士】第25回 第11問
廃用症候群でみられるのはどれか。

<選択肢>

  1. 1. 肺活量の増加
  2. 2. 筋持久力の増加
  3. 3. 認知機能の向上
  4. 4. 循環血液量の増加
  5. 5. 安静時心拍数の増加

解答と解説

正解:5

[1]~[4]はいずれも誤った記述。廃用症候群になって肺活量や筋持久力が増加することはありませんし、認知機能は低下が懸念されます。[5]の安静時心拍数の増加は廃用症候群でみられる症状です。心機能の低下に伴って1回あたりの心拍出量が減少し、循環血流量の低下を補うため、安静時心拍数は増加します。したがって正解は[5]となります。

実務での活かし方~廃用症候群への評価・介入のポイント~

言語聴覚療法における廃用症候群への対応について解説していきます。「廃用症候群に認められる症状」「廃用症候群に認められる摂食・嚥下障害」「評価・介入のポイント」の3つの観点から説明します。

(1)廃用症候群に認められる症状
廃用症候群では、筋萎縮、骨粗鬆症、関節拘縮など筋骨格系の障害や、心機能低下、起立性低血圧、深部静脈血栓症、摂食・嚥下障害、褥瘡、便秘、尿路感染症、抑うつ状態、高次脳機能障害など多様な症状が認められます。
高齢者の廃用症候群には高頻度に栄養障害を認めることから、安静臥床と低栄養の両者による病態とも考えられています。そのため、早期離床や機能訓練だけをおこなうのではなく、適切な栄養管理をおこなうことが重要です。

(2)廃用症候群に認められる摂食・嚥下障害
廃用症候群に認められる症状のひとつに摂食・嚥下障害があり、臨床の場では言語聴覚士にその対応を求められることも多くあります。
廃用症候群には、筋萎縮、筋力低下、筋耐久力低下が認められ、これらの症状が顔面、口腔、咽頭、頸部の筋に生じると摂食嚥下障害を引き起こすことがあります。言語聴覚士は、嚥下関連筋群への筋力向上訓練や嚥下反射誘発のための刺激・介助、直接嚥下訓練などの介入をおこないます。
廃用症候群は活動性や運動量の低下した安静状態が続くことが原因で生じるため、座位、立位、歩行訓練を実施することも重要です。これらは、摂食嚥下障害との関連性も指摘されているため、PT・OTと協力して介入をおこなうチームアプローチが重要になります。

(3)評価・介入のポイント
廃用症候群で摂食嚥下障害を認めた場合、それらに対する評価・介入をおこなうことが言語聴覚士の重要な役割です。高齢者の廃用症候群には高頻度に栄養障害を認めることが知られており、適切な栄養管理をおこなうことが重要視されています。そのため、NST(栄養サポートチーム)と連携して栄養管理に参加することも言語聴覚士の重要な役割となります。

まとめ

言語聴覚療法における廃用症候群への対応について解説しました。廃用症候群は活動性や運動量の低下した安静状態が続くことにより多様な症状が認められます。言語聴覚士の役割としては、摂食嚥下障害への介入や栄養管理への評価・介入が重要な役割となります。そのため、PT・OTやNST(栄養サポートチーム)など多職種でのチームアプローチによる介入が極めて重要です。

[出典・参照]
半田理恵子ら.標準言語聴覚障害学 地域言語聴覚療法学.医学書院,2019
若林秀隆. 高齢者の廃用症候群の機能予後とリハビリテーション栄養管理.静脈経腸栄養 2013;28(5)
山本真由美. 廃用症候群患者の摂食嚥下障害に対する摂食嚥下訓練の効果とその効果に影響する因子. 音声言語医学2008;49(1)

近藤 晴彦

近藤 晴彦(こんどう はるひこ)

東京都言語聴覚士会 理事 広報局局長
国際医療福祉大学大学院 修士課程修了。
回復期リハビリテーション病院に勤務する言語聴覚士。
東京都言語聴覚士会ロゴ 東京都言語聴覚士会
http://st-toshikai.org/
東京都におけるすべての言語聴覚士が本会に入会され、自己研鑽に励み、地域社会に貢献することを目指し、活動中。

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