指先で触れる感覚作りに挑戦! アメリカが新型義手のテスト結果を発表
公開日:2016.05.06 更新日:2016.05.16
麻痺や欠損などにより、新たな四肢を必要としている人々のために、世界中で開発されている義肢。その技術もついに、脳と相互作用させようという段階まで進歩しつつあるようです。今回は、アメリカが開発中の「指先に感覚がある義手」についてご紹介します。
DARPAが最新の義手のテスト結果を発表
2015年秋にミズーリ州セントルイスで開かれた未来テクノロジーフォーラム「Wait, What?」で、自然に近い指先の感覚がある義手が発表されました。これを開発しているのは、ダーパ(DARPA)の通称で知られる、アメリカ国防高等研究計画局です。
メリーランド州ボルチモアのジョンズ・ホプキンス大学で作られたこの最新の義手を試したボランティアの男性(28)は、10年前に脊髄を損傷して以来麻痺が残っていました。しかしこの義手によって、自身の脳からの指令で義肢を制御できたほか、およそ100%の確率で触れる感覚(指先に感じる圧力)を識別できたそうです。
義手の指先の感覚を調べるテストでは、被験者に目隠しをして研究者がいずれかの指先に接触し、どの指に触れられているかを答えてもらうことで、その精度を確認。あるときは1本の指を押す代わりに2本の指を押してみたにもかかわらず、彼はその予期せぬ変化にも惑わされることなく指先の感覚を正しく察知したといいます。なお、被験者は、この義手の感覚を「まるで自分自身の手のようだ」と話していたそうです。
触る感覚がある義手のメカニズム
この義手の特筆すべき点である「触る」という感覚は、それぞれの指先に仕込まれたトルクセンサーの働きによって生まれています。刺激を検出する装置を義手に設置し、そこから得た情報を脳へ送ることで、人間の感覚に似たものを復元しようというのです。
そこで、まず義手を装着する被験者には大脳皮質に電極を移植します。電極を設置するのは、大脳皮質のうち「感覚を司る領域」と「運動を司る領域」です。さらに、それらの電極列と義手を、たくさんのコードでつなぎます。
これによって、指先のトルクセンサーが圧力を検出すると、電気信号が発信され脳まで伝わり、「指に何かが触れた」と認識できる仕組みです。また、装着者は自身の脳から出す命令によって、義手をある程度動かすこともできます。
義肢の自然な感覚作りと新しい技術への期待
本来の四肢を使えば簡単なことでも、義肢で行うとなると大変です。たとえば、水の入ったコップを手に取る場合、人は目でコップの場所を確認して手をそちらへ伸ばし、水がこぼれない角度や力加減でコップを持ち上げます。これが上手くいくのは、感覚器から得られる情報を脳が瞬時に処理して手の動きを微調整しているからです。
つまり、四肢のコントロール精度を高めるには、脳からの命令だけでなく、四肢からリアルタイムで得られる情報が重要なカギといえるでしょう。このロボットハンド(義手)開発のプログラムマネージャーを務めるジャスティン・サンチェス氏も、義手から脳へのフィードバックなしでは、正確な動作を行えるだけのコントロールの実現は難しいのではないかと述べています。
したがって、今回、義手を直接脳につなぎ自然に近い「感覚」というフィードバックを実現したことは、大きな前進です。義肢と身体のつなぎ目を感じさせず、より自由に動かせる「感覚がある義肢」という未来の可能性を示しました。
本来の四肢が持つ機能を完璧な状態で復元することは、非常に難しいことです。それでも、今回ついに脳へフィードバックするバイオテクノロジーの入口に立てたことで、今後の進歩に期待が高まります。
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