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脳性小児麻痺の早期発見に、自発運動評価は有効か

公開日:2016.04.25 更新日:2016.05.09

患者さんを観察することに大きな意味があることは、周知の事実です。特に新生児や乳児を観察することは、彼らが生まれ持った病気の発見につながる場合もあります。毎日多くの患者さんと接する理学療法士の鋭い目で、小さな患者さんのSOSを見逃さないようにしたいものです。
そこで今回は、米国理学療法協会(APTA:American Physical Therapy Assosiation)の学会誌『フィジカル・セラピー』より、ノルウェーのUiTノルウェー北極大学(旧トロムソ大学)のGunn Kristin Øberg博士らによる論文をご紹介します。乳児の自発的な全身の動きを観察して評価すること(GMA:General Movement Assessment)が、発達障害を予測するのにどれだけ役立つかを調べた研究です。

Predictive Value of General Movement Assessment for Cerebral Palsy in Routine Clinical Practice

自発的な全身運動の評価は、日常臨床で脳性小児麻痺の早期発見にどれだけ有用か

UiT The Arctic University of Norway
Gunn Kristin Øberg、Bjarne Koster Jacobsen、Lone Jørgensen

研究テーマ

脳性小児麻痺の子どもたちに然るべき療養を受けさせるために、将来的な神経の発達に問題が出る可能性が高い子ども(ハイリスク児)を早いうちに識別することはとても大切です。また、GMAによってその識別を試みるうえで、生後3ヵ月ごろから見られるようになるフィジェティ・ムーブメント(FM:Fidgety Movements、振幅は小さく、速度は中程度の円を描くような特定の運動)の観察評価は、自発的全身運動の評価(GMA)を補強し、GMAがその後の運動機能発達の予測に、とても有効であることを証明するのに役立っています。しかしながら、これについて日常臨床から行われた研究はほとんどありません。
この研究の目的は、病院での日常臨床において、脳性小児麻痺ハイリスク児の「フィジェティ・ムーブメント(FM)」と「ハイリスク児の満2歳までの神経の発達」との関係を臨床で調べることです。

研究方法

研究対象は脳性小児麻痺ハイリスク児87名で、脳性小児麻痺かどうか臨床的に評価するのは、いずれも2歳の時点となります。被験者たちには生後3ヵ月のときにGMAを行っており、その「感度」「特異度」「尤度比」そして「陰性または陽性の的中率」を分析しました。これにより、2歳までに運動技能発達に問題が出る危険度を、GMAでどれだけ推測できるかを調べます。

なお、ここでの定義は以下の通りです。

  • 感度:脳性小児麻痺と診断された被験者のうち、GMAで陽性と判断された被験者の割合
  • 特異度:脳性小児麻痺ではないと診断された被験者のうち、GMAで陰性と判断された被験者の割合
  • 尤度比:(感度と特異度から計算した)陽性または陰性の起こりやすさを示す値

研究結果

GMAでFMが活発に見られ、「正常」と評価された54名は、93%(50名)がその後も正常に成長し、2歳の時点で脳性小児麻痺と診断された子は1人もいませんでした。また、FMに「異常がある」「ときどきFMが見られる」(つまり十分な頻度の良いFMが見られなかった)と評価された被験者は16名おり、そのうち75%(12名)はその後正常に成長しました。
それに対し、GMAで「FMが見られない」と評価された17名のうち、53%(9名)は2歳の時点で脳性小児麻痺であると診断されました。
ここで、GMAを「脳性小児麻痺の検査」と考え、FMが見られないという評価を「陽性」とした場合、感度は90%、特異度は90%でした。また、陽性尤度比は8.7、陰性尤度比は0.1、陽性の的中率は53%、陰性の的中率は99%となりました。

  • 陽性尤度比:値が大きいほど陽性の的中率が高くなる
  • 陰性尤度比:値が0に近いほど陰性の的中率が高くなる

2歳までに運動障害が現れるリスクは、GMAの評価結果が悪いほど高くなりました。また、生後3ヵ月の時点で「FMが見られない」と評価された子は、そのとき「正常」と評価された子に比べると、10倍のリスクがあることがわかりました。

研究結果の限界

この研究はサンプル数が比較的少ないことが研究成果の限界であり、今後研究の母数が増えるに従って違う結果が出る可能性があります。

Reprinted from Phys Ther. 2015;95(11):1489-1495, with permission of the American Physical Therapy Association. ©2015 American Physical Therapy Association. APTA is not responsible for the translation from English.
(この記事は、米国理学療法協会(APTA)の学会誌『フィジカル・セラピー』95巻11号1489~1495頁に掲載された論文の概要を翻訳したものであり、セラピストプラスが同協会の許可を得て作成および掲載しています。論文概要の著作権はAPTAにあると同時に、同協会は翻訳文について一切の責任を負いません。)

参考URL

米国理学療法協会・学術誌 『Journal of the American Physical Therapy Association』

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