エスカレーターのマナーと正しい乗り方~上りも下りも「目下の人が下」に立つ理由~【第35回】
公開日:2019.08.02 更新日:2023.09.04
文:村尾 孝子
薬剤師/医療接遇コミュニケーションコンサルタント
前回までエレベーターの席次マナーについて考えてきましたが、エスカレーターにも席次のマナーがあります。エスカレーターのマナーはエレベーターほど複雑ではないので、しっかり押さえておきましょう。
エスカレーターにも上座と下座がある
エスカレーターの席次=上座と下座は、相手との目線の高さを基準に考えます。患者さんや上司と乗る場合、自分の目線が相手より低くなるように乗るのがマナーです。たとえば患者さんと一緒に乗る場合。
上りでは、基本的には患者さんに先に乗ってもらい、自分の目線が患者さんより下になるようにします。下りでは、自分が先に乗り、患者さんを上から見下ろさないようにするのが基本。先に乗るときは「お先に失礼します」とひと声かけることで、患者さんが戸惑うこともなくなります。
相手より低い位置に立つのは、上から見下ろさないようにすることに加えて、相手が段差を踏み外したりバランスを崩してふらついたり転倒したりといったアクシデントが起こった際に、下から支えて安全を守る配慮の意味もあります。
念のために、エスカレーターに3人で乗る場合の席次も覚えておきましょう。3人の場合は真ん中が上座と言われています。たとえば、患者さんを上司と一緒に案内するときは、上りであれば、上司、患者さん、自分。下りでは、自分、患者さん、上司、の順です。
例外もあります。たとえば、不慣れな場所で不安を感じている患者さんであれば、上りでも自分が先に上がり、患者さんはその後に続くと安心でしょう。女性の患者さんがスカートをはいている場合も、ちょっとした気遣いがほしいところ。
案内人が男性の場合、特に女性のお尻を見ないように少しずれて立つ、あるいは、「お先に失礼します」とひと声かけて先に上がれば、マナー違反になりません。
転倒やケガのないよう、安心と安全の確保が第一
エスカレーターでの移動は、ちょっとしたミスも事故につながりかねませんから、基本的な注意事項をしっかり守ることが大切です。
まず、病院や施設のエスカレーターでの歩行は基本的にマナー違反。どんなに急いでいるときも、他に乗降客がいてもいなくても、エスカレーターを歩くのは危険ですから止めましょう。以前は片側を空けるのがマナーとされていましたが、他の人にぶつかって転倒させてしまったり、自らも転倒してケガをしてしまったりする恐れがあるため、公共機関等では2列に並んで乗るよう呼びかけられています。
エスカレーターの左右どちらに立つかが話題になることも度々ですが、これは地域や国によって変わります。院内のルールに従い、その時々の状況で機敏に判断することが肝心です。
次に、乗る際は必ず手すりにつかまり、前や足元に注意して乗りましょう。院内では、杖をついたり大きな荷物を持っていたりする患者さんも少なくありません。手すりにつかまることができないような状況では、遠回りになってもエレベーターを使用するなど安全第一で臨機応変な対応が求められます。
また、前後で話をしながら乗っているケースを見かけますが、話に気を取られて前後や足元への注意がおろそかになるため危険です。話はなるべくエスカレーターを降りた後にしましょう。指や足を挟まれないよう注意し、小さなお子さんがいる場合は必ず手を引いて乗るなどの心配りも欠かせません。
エスカレーターは便利である一方で、危険を伴う乗り物です。マナーを守ることはもちろんですが、転倒やケガをしない使い方が最優先。上座・下座を理解した上で、患者さんを大切にする思いやりの気持ちを行動にあらわし実践しましょう。
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村尾 孝子(むらお たかこ)
薬剤師、医療接遇コミュニケーションコンサルタント。
株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
マイナビ薬剤師・連載コラムが書籍化された、
「患者さん対応のプロをめざす! 『選ばれる薬剤師』の接遇・マナー」が
2017年7月19日 同文舘出版より発売。
株式会社スマイル・ガーデン : https://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling!」: https://smilegrdn.exblog.jp/
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