栄養士にとって「食育」とは?|食育に携われる職場も紹介

更新日 2024年03月29日 公開日 2024年03月29日

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2005年に策定された食育基本法によると、食育は「栄養の偏りや不規則な食事、肥満や生活習慣病予防を防ぐために欠かせないもの」とされています。

そのため、幼稚園や保育園、小中学校などで、食育に配慮した献立作りを行ったり、食育の基礎知識を伝えたりすることは、栄養士の重要な役割となっています。また、地域に向けてさまざまな食育推進活動を行い、人々の「健全な食習慣」の実現に貢献することも、栄養士の仕事の1つです。

この記事では、栄養士の大切な役割である食育を取り上げ、基本的な考え方や推進のための取り組み、食育に関係する栄養士の仕事内容、食育に携われる勤務先などを紹介します。

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栄養士にとって「食育」とは?|食育に携われる職場も紹介

栄養士にとって重要な「食育」とは

「食育」とは、人が生きる上での基本である「食」についての知識を教え、健康的な食生活を送る力をはぐくむための取り組みです。農林水産省が定める食育基本法では、食育を以下のように定義しています。

子どもたちに対する食育は、心身の成長及び人格の形成に大きな影響を及ぼし、生涯にわたって健全な心と身体を培い豊かな人間性をはぐくんでいく基礎となるものである。
国民一人一人が「食」について改めて意識を高め、自然の恩恵や「食」に関わる人々の様々な活動への感謝の念や理解を深めつつ、「食」に関して信頼できる情報に基づく適切な判断を行う能力を身に付けることによって、心身の健康を増進する健全な食生活を実践するために、今こそ、家庭、学校、保育所、地域等を中心に、国民運動として、食育の推進に取り組んでいくことが、我々に課せられている課題である。さらに、食育の推進に関する我が国の取組が、海外との交流等を通じて食育に関して国際的に貢献することにつながることも期待される。

(出典:e-gov法令検索「食育基本法 前文」/https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC1000000063

食育の目的は、1人ひとりが自分自身で健康を管理する力を養うとともに、地球環境や食文化を考慮した持続可能な食生活を送れるように指導することです。そうしたなか、栄養士は高い専門性を持つ者として、食育の啓発・実践・普及に貢献することを求められています。

食育の主な取り組み内容

食育は、主に家庭や学校、地域といった日常生活の場で行われます。以下は、食育活動における取り組みの一例です。

●食生活の指針や食事バランスガイドの普及活動
●栄養バランスを考慮した健康的な食事メニューの作り方や、表示の読み方を教える
●食材の特性を生かした調理法や、手軽に調理できるレシピの知識を教える
●食事を通じたコミュニケーションや食文化について教える
●選ぶ食品や取り扱い方によって生じる、食中毒やアレルギーの危険性について教える
●食材の生産から消費までを実際に経験してもらうため、農林漁業の仕事体験や工場・市場の見学を行う
●データベースやアプリを整備・提供し、効果的な食育事例やノウハウを共有する

(出典:農林水産省「第4次食育推進基本計画」/https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/plan/4_plan/attach/pdf/index-28.pdf

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食育における栄養士の仕事内容

文部科学省は、学校給食を食育のための「生きた教材」と位置付け、給食を通じて子どもたちに、地域の伝統的食文化や食に関わる人々への感謝、食料の生産・流通・消費の仕組みなどを学んでもらおうとしています。

それを踏まえるなら、食育においてもっとも重要な栄養士の業務は、給食の管理と提供だと言えるでしょう。

(出典:文部科学省「日本の学校教育と食育」/ https://www.mext.go.jp/content/20230920-mxt_kenshoku-000008678_1.pdf

なお、栄養士は給食以外の場面でも、食育に貢献しています。以下では、栄養士が携わる代表的な食育活動を紹介します。

食育の授業を行う

食育の授業において、栄養士は栄養教諭などとともに食材の選び方や調理方法、適切な栄養バランスなど、健康的な食生活を送るための基本的な知識・技術を子どもたちに伝えます。

(出典:文部科学省「日本の学校教育と食育」/https://www.mext.go.jp/content/20230920-mxt_kenshoku-000008678_1.pdf

また、実際に生産や調理を体験させることで、生産者に対する感謝の気持ちや食材への理解を育成する機会も設けます。調理実習として実施したり、他の学科と組み合わせたりするなど、授業の形はさまざまです。

ただし、栄養士が単独で食育の授業を行うケースは少なく、基本的には栄養教諭や管理栄養士、調理スタッフ、担任の先生などと協力しながら、計画を立てて実施します。

(出典:大分県教育委員会「平成26年度 栄養教諭を活用した食育推進事業 報告書」/https://www.pref.oita.jp/uploaded/attachment/2006049.pdf

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家庭や地域と協力して食育を推進する

食育を推進するには、幼稚園・保育園や学校だけでなく、家庭、地域との連携も重要です。例えば、保護者会などを通じた食に関する指導、給食だよりやパンフレットを通じた情報提供なども食育の一環といえるでしょう。つまり、栄養士はそうした活動を通じて、子どもたちの家庭における食習慣の改善にも寄与しているわけです。

(出典:農林水産省「第2節 学校における食に関する指導内容の充実」/https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/wpaper/r2/r2_h/book/part2/chap2/b2_c2_2_00.html

地域との連携の例としては、料理教室や給食試食会の開催、農業体験活動、食育に関する発表会への参加などが挙げられます。地域が一体となって食育に取り組むことで、子どもたちが健全な食習慣を身に付けるための環境が、さらに整うでしょう。そのため、地域に住まう方たちに食の重要性を理解してもらうのも、栄養士の使命となります。

(出典:文部科学省「第2章 学校・家庭・地域が連携した食育の推進」/https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/04/19/1293002_5_1.pdf

(出典:農林水産省「食育の推進」/https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/index.html

食育の計画を策定する

食育の計画策定をサポートするのも、栄養士の大切な仕事です。計画を策定する際は、主に栄養教諭が中心となり、各学年の食に関する指導目標の明確化や学習教材の選択、日常の給食指導方法などを定めます。

(出典:農林水産省「第2節 学校における食に関する指導内容の充実」/https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/wpaper/r2/r2_h/book/part2/chap2/b2_c2_2_00.html

学校や施設での食育活動は、計画的かつ組織的に行われなければ高い効果が望めません。食育の計画策定においては、施設の職員や各家庭、地域の人々が共通の理解を持って参画し、協力しあえるような内容が求められるでしょう。

(出典:文部科学省「第3章 食に関する指導に係る全体計画の作成」/https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/04/19/1293002_6_1.pdf

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栄養士が食育を行う主な勤務先

食育を推進するため、栄養士にはそれぞれの勤務先での活躍が期待されています。ここでは、食育を行う代表的な勤務先である「幼稚園・保育園」「学校」「行政機関」での仕事内容を紹介しましょう。

幼稚園・保育園

幼稚園や保育園における栄養士の基本的な役割は、子どもたちに栄養バランスの取れた食事を提供することです。毎日の献立作りから食物アレルギーなどへの配慮、食材発注、予算管理まで、仕事は多岐にわたります。園の方針や規模によっては、配ぜんや片付けまで行うケースも珍しくありません。

幼児期は食習慣が形成される重要な時期であり、栄養士はその基盤を作る役割を担っています。具体的には、旬の食材を使って季節感のある献立を作成したり、食事マナーや食器の扱い方を教えたりします。

(出典:農林水産省「1 保育所における食育の推進」/https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/wpaper/r2/r2_h/book/part2/chap2/b2_c2_4_01.html

(出典:厚生労働省「楽しく食べる子どもに~保育所における食育に関する指針~」/https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/06/dl/s0604-2k.pdf#page=2

学校

学校で働く栄養士は、給食の献立作成や調理、配ぜん、給食室の衛生管理、給食だよりの作成などを担当します。栄養教諭がいない学校では、食育の授業に参加するケースもありますが、そうでない場合は給食を通じて子どもたちの健康的な成長を支えるのが、栄養士の役割です。

一方、子どもたちに直接食育の指導を行う職業として、栄養教諭が存在します。栄養教諭とは、栄養士資格に加えて栄養教諭普通免許状を持つ教員のことです。栄養教諭は学校給食全体の管理・運営を担当しつつ、食育の授業や個別相談による食育指導、保護者への食育情報提供なども行います。

(出典:文部科学省「栄養教諭制度の概要」/https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/eiyou/04111101/003.htm

(出典:文部科学省「食育・栄養教諭に関してよくあるご質問Q&A」/https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/06121505/001.htm

行政機関

行政機関で働く栄養士は「行政栄養士」と呼ばれ、担当地域における健康政策の立案や実施に携わります。行政栄養士は、地域住民の健康教育の推進や栄養相談、食環境の整備などを通じて、健康寿命の延伸や健康格差の縮小を目指すのが主な役割です。そのため、栄養教育講習会の開催や食に関する施設の衛生指導なども、行政栄養士の仕事となります

なお、行政栄養士になるには管理栄養士の資格が必要です。

(出典:厚生労働省「新たな行政栄養士業務指針のねらいと健康・栄養施策の推進」/https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000036h01-att/2r98520000036h3k.pdf#page=10

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まとめ

食育の主な目的は、子どもたちに食に関する知識を教え、健康を管理する力を養うとともに、持続可能な食生活を送れる大人に育てることです。食の専門家である栄養士は、食育の啓発・実践・普及において重要な役割を担っています。

幼稚園・保育園や学校で働く栄養士は、給食の提供を通じて食育に貢献するほか、食育に関する授業に参加することもあります。また、家庭や地域と協力して食育を推進するのも栄養士の大事な業務です。

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※当記事は2023年7月時点の情報をもとに作成しています

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