栄養士の仕事内容を職場別に紹介|資格の取得方法や将来性も
栄養士は、健康な方への食事提供や栄養指導を専門に行う国家資格です。栄養士が活躍できる職場は学校や病院、給食センター、一般企業など幅広く、それぞれで仕事内容が異なります。
そのため、実際の仕事内容をよく知らずに就職してしまうと、思い描いていた働き方とのギャップに悩んでしまう可能性もあります。栄養士として活躍するためにも、就職・転職の前に職場ごとの仕事内容をきちんと把握しておきましょう。
今回は、栄養士の仕事内容を職場別に紹介します。資格の取得方法や将来性もあわせて解説するため、これから栄養士を目指そうと考えている方は参考にしてください。
年齢や施設ごとに総まとめ!
目次
栄養士とは
栄養士とは、栄養に関する専門的な知識を持ったプロフェッショナルとして活躍する専門職です。
食に関する資格は多くありますが、栄養士は都道府県知事が認定する国家資格であるため、高い専門性と社会的評価を得ることができます。
主な業務としては、学校や病院で提供される集団給食のメニュー作成や調理サポート、食生活へのアドバイスなどが挙げられます。
食や健康への関心が高い現代において、栄養士は多方面から求められており、将来性の高い職業といえるでしょう。
栄養士の資格取得方法
栄養士の資格は、厚生労働省が指定した栄養士養成施設で必要なカリキュラムを学び、卒業することで取得できます。ほかの多くの国家資格と違って、国家試験に合格する必要はありません。
栄養士養成施設としては、以下のような教育機関が挙げられます。
・2〜3年制短期大学
・2〜3年制専門学校
いずれの養成施設でも、卒業すれば栄養士の資格を取得できます。ただし、栄養士の上位資格である管理栄養士の取得を考えている場合は、管理栄養士向けの養成施設を選択するのがよいでしょう。
なぜなら、栄養士の養成施設を卒業するだけでは、管理栄養士国家試験の受験資格を得られず、栄養士として1~3年の実務経験年数を求められるからです。一方、管理栄養士の養成施設を卒業した場合は実務経験が免除され、すぐに国家試験を受験できます。
管理栄養士との違い
栄養士と管理栄養士では業務の対象や内容が異なりますが、名前が似ているため混同されがちです。栄養士と管理栄養士の相違点を以下の表にまとめました。
栄養士 | 管理栄養士 | |
---|---|---|
資格取得条件 | 養成施設を卒業する | 受験要件を満たして 国家試験に合格する |
認定元 | 都道府県知事 | 厚生労働大臣 |
業務の対象 | 健康な方が対象 | 健康な方および 高齢者、傷病者が対象 |
職域 | 栄養管理・栄養指導・ 食事提供・食事管理 |
栄養管理・栄養指導・ 食事提供・食事管理 |
栄養士と管理栄養士の大きな違いは、業務の対象が健康な方のみであるか、傷病者や高齢者も含まれるかという点です。管理栄養士の業務では、栄養士が行う栄養管理や指導よりも高度で専門的な知識が求められるため、資格取得条件も厳しく設定されています。
栄養士や管理栄養士が活躍できる場所と仕事内容
栄養士は、食と栄養のプロフェッショナルとしてさまざまなフィールドで活躍できます。ただし、それぞれの職場で求められる役割は異なるため、事前に仕事内容を把握しておきましょう。
なお、病院や介護施設、行政機関では上位資格である管理栄養士資格が必要となるケースも少なくありません。これらの職場で活躍したい方は、管理栄養士資格の取得を目指すとよいでしょう。
以下では、栄養士が活躍できる職場と、各職場における栄養士の役割を解説します。
学校
栄養士が活躍する職場として、学校や児童福祉施設をイメージする方は多いでしょう。その場合、保育園・幼稚園・小学校・中学校と活躍のフィールドはさまざまです。
学校で働く栄養士には、主に学校給食の献立作成や調理に携わる「学校栄養職員」と、生徒に食育指導や栄養教育まで行う「栄養教諭」の2種類があります。栄養教諭として教育にも携わる場合は、栄養士・管理栄養士の資格に加えて栄養教諭の資格が必要です。
学校に勤務する栄養士の仕事は、成長期の子どもたちの成長や健康づくりをサポートし、食に貢献することです。責任もやりがいも大きな仕事と言えるでしょう。
学校栄養職員の1日の勤務スケジュール例は、以下の通りです。
08:00 | 勤務開始 食材の検収作業 |
---|---|
08:50 | メールチェック |
09:00 | 事務処理 給食委員会の放送用原稿作成 食事指導の資料作成 |
10:00 | 給食室での調理作業 |
12:00 | 配ぜん指導 |
12:40 | 片付け指導 給食委員会への指導 |
13:00 | 献立作成 事務処理 教員との打ち合わせ |
16:00 | 翌日の給食について給食調理員との打ち合わせ |
17:00 | 勤務終了 |
幼稚園・保育園
幼稚園や保育園に勤務する栄養士の主な仕事は、子どもたちが食べる食事の準備と献立作成です。
子どもたちの食事準備は、昼食に追加しておやつ・夕食を時間通りに行います。献立通りの食事を提供するため、給食室で働いている調理員の方との連携は不可欠でしょう。
献立は子どもたちの栄養バランスを考えながら作成します。加えて、離乳食の必要性や食物アレルギーにも配慮する必要があるでしょう。
幼稚園・保育園の栄養士には、子ども向けの献立を考えるスキルと、栄養学やアレルギーに対する専門知識が求められます。また、保護者さまや保育士の方、園の職員などと円滑に連携するコミュニケーションスキルも必要です。
幼稚園・保育園で働く栄養士の1日のスケジュールは、以下の通りです。
08:30 | 出勤 |
---|---|
08:50 | 朝おやつの提供 |
09:00 | 調理業務 |
10:45 | 離乳食・幼児食の提供 |
11:00 | 子どもたちが食べている様子を見回り |
11:30 | 調理の片付け |
12:00 | 休憩 |
13:00 | 食器の片付け |
14:00 | 午後おやつの提供 |
15:00 | 事務作業(給食日誌の作成など) |
17:00 | 掃除 |
17:30 | 退勤 |
都道府県別での比較も
一般企業(給食会社など)
栄養士が働く一般企業として、「給食会社」が挙げられます。給食会社とは、企業や施設などから委託を受け、大量の食事を提供する会社です。
給食会社は委託元の厨房で調理や管理を行うため、給食会社に勤める栄養士の実際の職場は、社員食堂や小・中学校、大学、高齢者施設、病院など多岐にわたります。どの職場にも共通する仕事内容は「献立作成」と「食事の調理・盛り付け」です。
献立作成では、利用する方の傾向に合わせてメニューや栄養バランスなどを考える必要があります。学校給食であれば学生に合わせた内容を、社員食堂であれば20代〜50代に合わせた内容を考えなくてはなりません。
「食事の調理・盛り付け」は給食調理員の方がメインで行いますが、栄養士が一緒に調理するケースも多く見られます。
給食会社で働く栄養士の1日のスケジュールは、以下の通りです。
08:00 | 出勤 |
---|---|
08:30 | 食器などの準備 |
09:00 | 調理開始 |
10:00 | 食事(小鉢類・メイン料理)の盛り付け |
11:00 | サンプルの盛り付け |
11:30 | 食堂内の準備 |
12:00 | 食事提供 |
13:00 | 食堂内の片付け |
13:30 | 食材の発注 |
14:00 | 休憩 |
15:00 | 事務作業(日報作成、メニュー作成など) |
16:00 | 清掃、片付け |
17:00 | 退勤 |
必要なスキルとホワイト企業の見つけ方
行政機関
行政機関で働く栄養士は、地域住民の健康管理・向上の役割を担います。職場は「都道府県庁」「市区町村の役所」「保健所」「保健センター」などさまざまです。行政機関に勤める栄養士は「公務員」に該当するので、就業したい場合は公務員試験に合格しなくてはなりません。
行政機関における主な仕事内容は、「地域住民の栄養サポート」「生活習慣病の予防・改善」などです。このほか「乳幼児の栄養相談」「生活習慣病の予防教室」「高齢者の健康づくり」などの業務を担う場合もあり、活躍の場面は多岐にわたります。
行政機関はすべての地域住民にサービスを提供します。行政機関で働く栄養士には、幅広い年代の方についての健康・栄養の知識が求められるでしょう。
行政栄養士の給料相場も
病院
病院で働く栄養士は、給食部門で入院患者さまの食事の調理や提供などを担当します。傷病者や高齢者に向けた特別な食事を用意する必要があるため、栄養士にも医療の知識と対応力が求められます。
ただし、病院で調理以外の栄養管理・栄養指導が求められる場合は、管理栄養士の資格が必須となります。病院でより幅広い業務に携わりたい場合は、管理栄養士の資格取得を目指しましょう。
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介護施設
高齢化の加速に伴い、介護施設における栄養士の需要は増えている傾向です。介護施設で働く栄養士は、利用者さまへの食事提供を担当します。
利用者さまのほとんどは高齢で、生活習慣病や嚥下(えんげ)・咀嚼(そしゃく)機能の低下など、食事面で特別な配慮を必要としている方が多くいます。そのため、それぞれの利用者の身体状況に合わせた調理方法を考えて、ソフト食やきざみ食など、食べやすい形態にして提供するのも、栄養士の大事な役割と言えるでしょう。
また、献立の作成では、栄養バランスや食べやすさだけでなく、食事の楽しさを感じてもらう工夫も求められます。
なお、病気を患っている方や高齢で食事がとりづらくなっている方への栄養管理・栄養指導を行う場合は、管理栄養士の資格が必須です。
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スポーツ現場
栄養士は、学生の部活動からプロアスリートまで、スポーツ選手の体力やコンディションを考慮した栄養管理を担当します。
スポーツの現場で行う栄養管理や栄養指導では、スポーツ選手の生活習慣や競技特性に合わせた知識、信頼関係を構築するための円滑なコミュニケーションなどが求められます。
スポーツ関連における栄養士の働き方はさまざまです。フィットネスクラブやジムなどのスポーツ施設に雇用されるだけではなく、フリーランスとしてスポーツ選手を専属サポートする方もいます。
スポーツ栄養学についての専門知識がある公認スポーツ栄養士に認定された方は、スポーツ現場において特に需要が高いでしょう。スポーツに関係した職場で働きたい場合は、まず公認スポーツ栄養士の要件である管理栄養士資格を取得し、その上で公認スポーツ栄養士を目指すのがおすすめです。
スポーツ現場で働く栄養士の1日のスケジュールは、職場により大きく異なります。食事指導も行えるパーソナルトレーナーとしてジムなどで働く場合、1人当たり1時間ほどのレッスンを5〜10本行うケースが多いでしょう。スポーツ選手の予定に合わせて夜間にレッスンを行うこともあります。
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【勤務先別】栄養士の給料
厚生労働省の調査によると、栄養士および管理栄養士の平均年収は約379万円となっています。次の表は、企業規模ごとに平均年収をまとめたものです。
企業規模 | 10~99人 | 100~999人 | 1,000人~ | 平均 (10人以上) |
---|---|---|---|---|
年収額 | 約366万円 | 約375万円 | 約399万円 | 約379万円 |
(出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」/https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040029185)
栄養士・管理栄養士の年収は、職場の規模が大きいほど年収が上がる傾向が見て取れます。大企業では福利厚生なども充実しており、手当も増えるため年収額にも反映されています。
また、マイナビコメディカルを含む複数の求人サイトを調査したところ、栄養士の代表的職場での初任給はおおむね以下の通りです。
勤務先 | 年収(初任給) |
---|---|
病院 | 220万~310万円 |
介護福祉施設 | 240万~320万円 |
保育園 | 230万~310万円 |
一般企業(給食会社) | 210万~310万円 |
いずれの施設でも、年収の差はそれほど大きくはありません。ただし、上記の年収は初任給の平均であり、勤務年数が増えれば、各種手当や昇給などで年収がアップする可能性が高いでしょう。
ちなみに、管理栄養士向けの求人は、栄養士向けのものより30~50万円ほど年収が高い傾向にあります。高収入を得たい場合は、栄養士だけでなく管理栄養士の資格も取得しておくのがおすすめです。
転職で年収200万アップ事例も!
栄養士に将来性はある?
近年、健康ブームの高まりや健康増進法の施行に伴い、栄養指導や栄養管理ができる栄養士の重要性は年々増しています。さらに、文部科学省などが食育を推進している背景もあり、食の面から人々の健康をサポートする栄養士は、今後も高い需要が期待できるでしょう。
栄養士の上位資格である管理栄養士の資格を取得すれば、携われる業務の幅がさらに広がり、キャリアアップにつなげることが可能です。
栄養士は活躍できる職場が多く、人々の食や健康に対する関心が薄れる心配もないため、将来性が高い職業といえます。
まとめ
今回は、職場別における栄養士の仕事内容や、資格の取得方法と将来性を解説しました。
栄養士の業務は、人々の健康に直結するため、学ぶことが多く責任も大きな仕事です。その反面、活躍のフィールドは幅広く、食事と栄養を通じて人々の生活の質を向上させることが、大きなやりがいと充実感につながるでしょう。
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※当記事は2023年9月時点の情報をもとに作成しています
監修者プロフィール
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