理学療法士を辞めたいと感じる7つの理由|辞めたいときにすべきこともご紹介

文:内藤 かいせい(理学療法士)
理学療法士として仕事をしているなかで、「辞めたい」と感じる方もいるのではないでしょうか。理学療法士はやりがいのある仕事である一方で、大変な点やつらい点も多くあります。
この記事では、理学療法士を辞めたいと感じる理由や、その際にすべきことをご紹介します。どのような行動をすべきかを知ることで、今後の将来をしっかりと決めるきっかけとなるでしょう。
目次
理学療法士が辞めたいと感じる7つの理由

理学療法士が辞めたいと感じる理由として、おもに以下の7つが考えられます。
2.リハビリの効果が出ない
3.給料が低い
4.体力的にきつい
5.人間関係に疲れる
6.仕事が忙しく残業が多い
7.常に勉強する必要がある
ここでは、それぞれの理由について詳しく解説します。
1. 自分の希望通りのリハビリができない
1つ目は、自分の希望通りのリハビリができない点です。実際の現場では、さまざまな制約によって思い描いていたリハビリができないケースが多くみられます。たとえば、希望分野の症例が多いと思って入職したのに、実際は担当する機会が少ないことがあげられます。そのほかにも、多くの方にリハビリを提供する関係上、患者さん一人ひとりに十分な時間をかけられないこともあるでしょう。
このような施設の方針や制度の制約により、理想的なリハビリを提供できないジレンマを抱える方は少なくありません。理想と現実のギャップが生まれた結果、理学療法士を辞めたいと感じる要因となるのです。
2. リハビリの効果が出ない
2つ目は、リハビリの効果が思うように出ない点です。すべての方がリハビリで改善につながるわけではなく、患者さんの状態や疾患によってはなかなか効果が出ないケースも多く存在します。とくに高齢者や重篤な疾患を抱える患者さんの場合、現状維持が精一杯で明確な改善効果を実感できないことがあります。
また、患者さん自身のモチベーションが低い場合、どれだけ専門的な技術を提供してもリハビリの効果が上がりにくいです。このような状況が続くことで、理学療法士としてのやりがいや達成感を得にくくなり、辞めたいと感じるようになります。
3. 給料が低い
3つ目は、給料が低い点です。令和6年度の調査によると、理学療法士の平均年収は「約444万円」とされています。理学療法士と同じ医療従事者の職種の平均年収は、以下の表のとおりです。
| 職種 | 平均年収 |
|---|---|
| 医師 | 約1,338万円 |
| 薬剤師 | 約599万円 |
| 看護師 | 約520万円 |
| 准看護師 | 約417万円 |
| 放射線技師 | 約550万円 |
| 臨床検査技師 | 約504万円 |
| 理学療法士 | 約444万円 |
このように、理学療法士はほかの医療職と比較すると年収水準が低めであることがわかるでしょう。さらに、日本全体の給与所得者の平均年収は「460万円」とされているため、理学療法士は全体的に給料が低いことになります。このような収入面での不満が積み重なることで、理学療法士としてのキャリアを見直すきっかけとなります。
4. 体力的にきつい
4つ目は、体力的にきつい点です。理学療法士の業務では以下のように、体力を必要とする作業が頻繁にあります。
・歩行練習の介助
・起き上がりの介助
・立ち座りの介助
とくに全介助を要す患者さんや移動が困難な患者さんは介助量が多い傾向にあり、大変に感じる方も多いでしょう。これらの介助は体力的に消耗するだけでなく、膝や腰を痛める原因にもなります。筆者が働いていた職場でも、先輩の理学療法士が慢性腰痛になってしまい、コルセットを着用しながらリハビリを行っていました。
このような体力的な負担が日々積み重なると、長期的に理学療法士として働き続けることへの不安を抱えやすくなります。
5. 人間関係に疲れる
5つ目は、人間関係に疲れる点です。理学療法士は患者さんやその家族とのやり取りだけでなく、医師や看護師などの他職種ともコミュニケーションをとる必要があります。他職種と話し合うときにお互いの専門的な視点から考えがあわず、意見がすれ違うことも珍しくありません。
患者さんとの関係においても、リハビリの効果が思うように出ない場合に不満をぶつけられたり、家族から過度な期待をかけられたりすることもあるでしょう。このような複雑な人間関係に日々向き合っていると精神的な疲労が蓄積し、理学療法士を辞めたいと感じやすくなります。
6. 仕事が忙しく残業が多い
6つ目は、仕事が忙しく残業が多くなりやすい点です。理学療法士の仕事は患者さんへのリハビリが中心ですが、それ以外にも以下のようなさまざまな業務があります。
・リハビリプログラムの作成
・カンファレンス書類の作成
・科内の委員会の仕事
業務中はリハビリで手が離せないため、これらの仕事は昼休みや終業後に行うことも多いでしょう。さらに、学会発表や勉強会の準備なども求められることが多く、休日返上で作業に追われる理学療法士も少なくありません。仕事の忙しさと残業の多さによりプライベートの時間が確保できず、理学療法士としての働き方に疑問を感じるようになります。
7. 常に勉強する必要がある
7つ目は、常に勉強する必要がある点です。理学療法士の多くが登録する「日本理学療法士協会」では生涯学習制度があり、定期的な研修受講や学会参加が推奨されています。さらに、職場によっては院内研修や勉強会が積極的に行われており、業務時間外や休日を使って参加することもあります。
理学療法士として研鑽を積み、日々進歩することは大切ですが、それが苦に感じる理学療法士も少なくないでしょう。このような継続的な学習への義務感とプレッシャーが、理学療法士を辞めたいと感じる原因となります。
理学療法士が辞めたいと感じたときにすべきこと

理学療法士が辞めたいと感じたとき、どのような行動をすればよいのでしょうか。ここでは、辞めたいと感じたときにすべきことについて解説します。
なぜ辞めたいのかを明確にする
理学療法士を辞めたいと感じたとき、まずはその理由を明確にすることが大切です。辞めたい理由が曖昧なままだと、転職しても同じような悩みを抱える可能性があります。また、本当は職場を変えるだけで解決できる問題なのに、理学療法士という仕事自体を諦めてしまうかもしれません。
辞めたい理由を明確にするには、「給料が安くて将来が不安」「人間関係がつらい」など、つらいと感じる原因を書き出してみましょう。これにより、本当に辞めるべきなのか、それともほかの方法で問題を解決できるのかを冷静に判断できるでしょう。
友人や同僚に相談してみる
信頼できる友人や同僚に相談してみるのもおすすめです。1人で悩んでいると視野が狭くなりがちですが、ほかの人の意見を聞くことで新たな視点や解決策が見つかる可能性があります。同じような経験をした方であれば、そのアドバイスはとくに参考になるでしょう。また、気持ちを話すだけでも心の負担が軽くなり、冷静に状況を判断しやすくなります。
ただし、相談する際は愚痴だけで終わらないように注意しましょう。具体的な悩みを整理して話し、相手からの建設的なアドバイスを求めることが大切です。
現在の悩みを解決できるか考える
現在抱えている悩みが解決可能な問題なのかを考えてみましょう。悩みによっては、職場内での相談や改善提案によって解決できる場合があります。たとえば残業が多い場合は、業務の効率化や人員配置の見直しを上司に提案できるかもしれません。
人間関係の問題であれば、部署異動や配属先の変更が可能な職場もあるでしょう。理学療法士の職場では別サービスを併設していたり、チームに分かれて仕事をしていたりすることもあります。大切なのは、感情的にならずに問題を整理し、解決の可能性を客観的に判断することです。
休職して心身を休めてみる
理学療法士を辞めたいと強く感じている場合は、休職制度を利用して一時的に仕事から離れることも選択肢の一つです。休職による大きなメリットは、仕事のストレスから解放されて心身をリフレッシュできることです。毎日の業務に追われていると、見えなかった問題の本質や自分が求めているものが明確になる可能性があります。
また、十分な睡眠や休息をとることで精神的な余裕も生まれるでしょう。休職中は心身を休めつつ、時間をかけて将来の方向性を決めることが大切です。休職制度は職場の規定や条件があるため、利用したい場合は上司や人事担当者に相談してみましょう。
理学療法士を辞めるべき?メリットもおさえておこう
理学療法士を辞めるか決める前に、この資格にはどのようなメリットがあるのかを知っておきましょう。ここでは、理学療法士のメリットについて解説します。
患者さんに感謝されやすい
理学療法士は、患者さんから感謝されやすい職業の一つです。リハビリは、患者さんの身体機能が改善する方向に進むことが多いといえます。そのため、目に見える成果として患者さんに喜んでもらいやすいのです。
リハビリを通じて患者さんの身体機能が改善すれば、理学療法士にとっても達成感を得られるでしょう。患者さんからの感謝の気持ちは、理学療法士として働く上での大きなやりがいとなります。
国家資格なのでどこでも働きやすい
理学療法士は国家資格のため、全国で求人を探しやすいメリットがあります。理学療法士の需要は高齢化とともに高まっており、病院やクリニックなどのさまざまな働き口があります。引っ越しや転職を考える際も、資格があることで新しい土地での就職活動がスムーズに進められるでしょう。
また、理学療法士の資格は一度取得すれば更新の必要がないため、ブランクがあっても復職しやすい点も魅力的です。このような安定性は、長期的なキャリア形成を考えるうえで大きな安心材料となるでしょう。
一定の給料を担保できる
理学療法士は国家資格であるため、一定水準の給料が担保されやすい職業です。前述したように、理学療法士の平均年収は決して高いわけではありませんが、安定した収入を得られるという点では大きなメリットといえます。
さらに以下のように、理学療法士の平均年収は年々増加傾向にあるため、今後も給料アップが見込まれるでしょう。
| 年度 | 平均年収 |
|---|---|
| 令和6年度 | 約444万円 |
| 令和5年度 | 約433万円 |
| 令和4年度 | 約430万円 |
| 令和3年度 | 約427万円 |
| 令和2年度 | 約419万円 |
理学療法士を辞めたいと感じたときの次の行動
理学療法士を辞めたいと感じたとき、どのような行動をとるべきなのでしょうか。ここでは、辞めたい理由に応じた次の行動先についてみていきましょう。
別の職場に転職をする
現在の勤務先が原因で理学療法士を辞めたいと感じているなら、別の職場への転職を検討してみましょう。理学療法士としての経験やスキルは新しい職場でも十分に活かしやすく、環境が変わることで今抱えている悩みが解消される可能性があります。たとえば、給料に不満があるなら待遇の良い職場を選ぶことで問題解決につながります。
転職活動では、現在の悩みを明確にして、それを解決できる職場の条件を整理することが大切です。働く環境を変えることで、理学療法士としてのやりがいを再び感じられるようになるでしょう。
理学療法士以外の仕事に就く
理学療法士そのものを辞めたいと考えている場合は、まったく異なる分野の仕事に就くという選択肢もあります。理学療法士とは異なる職種に就くことで、以下のようなメリットが期待できます。
・ワークライフバランスが改善する
・新しいスキルを身につけられる
このように、理学療法士では得られなかった働き方を実現できる可能性があるのです。ただし、新しい分野では1からスキルを身につける必要があり、転職活動も長期化することがある点を理解しておきましょう。
理学療法士を辞める前にすべきこと
理学療法士を辞めると決めた際、やっておきたいことがいくつかあります。ここでは、理学療法士を辞める前にすべきことを解説します。
自分のしたいことを決めておく
理学療法士を辞める前に、自分が将来何をしたいのかを明確に決めておくことが大切です。目標が曖昧なまま辞めてしまうと、転職活動で迷いが生じたり、新しい職場で後悔したりする可能性があります。
理学療法士を辞めて転職した場合、どのような働き方をしたいかを考えてみましょう。たとえば、ワークライフバランスを重視したいのか、収入アップを目指したいのかなど、優先順位をつけることが重要です。自分のしたいことを決めておけば、その後の転職活動もスムーズに進められるでしょう。
転職活動の準備を進める
理学療法士として働いている間に、転職活動の準備を進めておきましょう。退職してから慌てて準備をはじめると、収入が途絶えた状態で焦って転職先を決めてしまい、条件の悪い職場を選んでしまう可能性があります。なるべく早めに希望の転職先を探して、納得のいく職場を決めておくことが大切です。
必要に応じて、転職サイトへの登録や転職エージェントを利用するのもおすすめです。在職中から準備を進めることで、余裕を持って理想の転職先を見つけられるでしょう。
転職後の業種の勉強をしておく
理学療法士から異なる業種への転職を考えている場合、事前にその領域に関する勉強をしておきましょう。どのような勉強をすべきかは、業種によって大きく異なります。たとえば、営業職を希望するなら、その会社の商品やサービスなどの情報を調べておくことが重要です。
資格取得が有利になる業種であれば、転職前に挑戦しておくのもよいでしょう。業界特有のビジネスマナーや文化について事前に把握しておけば、スムーズに新しい職場に馴染みやすくなります。
理学療法士を辞めたいと感じたら
理学療法士を辞めたい理由は給料の低さや人間関係の問題など、さまざまなものがあげられます。理学療法士を辞めたいと感じたら、まずその原因を明確にしつつ、友人や同僚に相談してみることが大切です。
辞める方向で進む場合は、自分のしたいことを明確にして、その目標に適した職場探しをしてみましょう。ぜひ今回の記事を参考にして、理学療法士を辞めたいと感じたときにすべき行動をとってみてください。
参考
政府統計の総合窓口|令和6年賃金構造基本統計調査
政府統計の総合窓口|令和5年賃金構造基本統計調査
政府統計の総合窓口|令和4年賃金構造基本統計調査
政府統計の総合窓口|令和3年賃金構造基本統計調査
政府統計の総合窓口|令和2年賃金構造基本統計調査
国税庁|令和5年分 民間給与実態統計調査
理学療法士として「辞めたい」と感じる背景は、人手不足による業務過多、目標未達の連続、人間関係の軋轢、そして将来不安など、複数要因が絡み合うのが一般的です。重要なのは、原因を分解して「環境要因」と「自分の価値観・強み」を整理すること。環境が主因なら、配置転換や業務設計の見直し、領域変更や転職で改善できる余地が大いにあります。いっぽうで、専門職としてのやりがいを再確認するには、目標設定の質(合意形成、アウトカムの可視化)と、身体負担を減らす具体策(補助具・人数・動作)を同時に見直すことが近道です。辞める・続けるは二者択一ではありません。休職や非常勤、学び直しの期間を挟むなど、選択肢を広く取って構いません。自分の健康と生活を守りつつ、納得感のあるキャリアを設計していきましょう。
著者プロフィール

内藤 かいせい
理学療法士
理学療法士として回復期病院と訪問看護サービスに従事し、脳血管疾患や運動器疾患などの幅広い症例を経験する。リハビリで患者をサポートするとともに、全国規模の学会発表にも参加。 新しい業界にチャレンジしたいと決意し、2021年に独立する。現在はWebライターとして活動中。これまでの理学療法士の経験を活かして、医療や健康分野で多くの執筆・監修に携わっている。
監修者プロフィール

関 勇宇大
理学療法士
2014年、理学療法士免許を取得。回復期リハビリテーション病院にて、脳血管障害患者を中心にリハビリテーション計画を立案し、早期社会復帰を支援。訪問リハビリでは、在宅療養者とその家族に対し、生活環境に即した個別支援を提供。臨床経験で培った専門的知見をもとに、現在は医療ライターとして活動。運動療法クラウドサービス『リハサク』では、運動メニューの解説・動画制作も担当し、医療と表現の両面から、実用性と信頼性の高い情報発信を行っている。












