保健所で働く管理栄養士の仕事内容|行政栄養士の給料相場も

更新日 2023年04月19日 公開日 2023年04月22日

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保健所で働く管理栄養士の役割は、地域住民の健康増進や疾病予防などです。栄養や食事の面から地域住民の健康づくりをサポートすることが求められるため、病院や給食施設の管理栄養士業務とは、仕事内容が大きく異なります。

保健所での具体的な仕事内容として挙げられるのは、健康や食・栄養に関する指導、給食センターなどの衛生管理指導、栄養士免許の申請受付、飲食店の営業許可などです。加えて、自治体の関係機関に向けた研修会や講習会を実施することもあるでしょう。

本記事では、保健所で働く管理栄養士の詳しい仕事内容や、給料相場について紹介します。保健所で働く管理栄養士は、公務員にあたるため、非常に人気の高い働き方となっています。公務員としての仕事に興味のある方は、この記事で保健所の具体的な業務や給料をイメージし、就職・転職に備えましょう!

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保健所で働く管理栄養士の仕事内容|行政栄養士の給料相場も

そもそも保健所とはどんな施設?

保健所は、地域住民の健康づくりと公衆衛生に関わるサービスや保健指導を行う行政機関であり、地域保険法にもとづいて都道府県・政令指定都市・中核都市などに設置されています。

保健所では、疾病予防や健康増進、精神保健対策、母子保健対策、生活衛生、各種検査といった幅広い分野で、広域的・専門的なサービスを提供しています。そのため、保健所には医師、保健師、管理栄養士、精神保健福祉相談員など、専門性の高い職種が配置されており、保健所所長は原則的に医師が務めることになっています。

(出典:厚生労働省「保健所について」/https://www.chisou.go.jp/tiiki/kouzou2/hyouka/chousa/iryoubukai06/siryou2.pdf

名称や役割が似た機関に、市区町村が運営する「保健センター」がありますが、こちらは、乳幼児健診や健康相談、特定検診、がん検診、訪問指導など、地域住民が直接受けるサービスを提供する機関となります。

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保健所で働く管理栄養士の主な仕事内容

保健所で働く管理栄養士は、一般的に「行政栄養士」と呼ばれます。行政栄養士の仕事は、法律や根拠に基づいて、食事と栄養の面から地域住民の健康づくりを支援することで、健康教育や食環境整備、栄養調査、生活習慣病の予防啓発、給食センターなどの衛生管理、栄養士免許の申請受付、飲食店の業務許可などが主な業務となります。

行政栄養士は、それらの仕事を通じて、幅広い世代・立場の方と接することになるため、高い専門性と広い視野が求められるでしょう。

なお、厚生労働省では「行政栄養士業務指針の構造」を定めることで、行政栄養士の業務指針や、行政栄養士に求められる職責を明らかにしています。

(出典:厚生労働省「新たな行政栄養士業務指針のねらいと健康・栄養施策の推進」/https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000036h01-att/2r98520000036h3k.pdf

ここからは、厚生労働省の資料にもとづいて、保健所における行政栄養士の詳しい仕事内容を紹介していきます。

食を通じた社会環境の整備

保健所は、「広域的な保健サービスを提供する」という特性から、食を通じた社会環境の整備を推進しており、行政栄養士は以下の3つの側面から環境整備に貢献しています。

・地域の食に関する施設を管理指導する
給食施設や食品営業店の管理指導に関して、行政栄養士は重要な役割を果たしています。例えば、給食施設において栄養報告書を評価したり、管理栄養士・栄養士の配置を促したりするのも、行政栄養士の仕事です。また、食品営業店に営業許可を出すのも業務の1つ。飲食店に栄養表示を活用してもらえるように働きかけ、健康的なメニューの提供を促すなどの役割も担っています。

・食を通じた地域の健康づくり施策を推進する
地域における栄養ケアの拠点づくりは、保健所の重要な業務。そのため、保健所は大学などと連携し、地域の技術力を生かした栄養ケアの拠点を整備します。そうした活動において、在宅療養者の栄養・食生活の支援などを担うのが、行政栄養士の役割となります。

・食を取り巻く地域システムの最適化
食事と栄養に関する専門家を育成し、地域ネットワークを構築するのも保健所の役割です。具体的には、保健、教育、医療、福祉領域で活躍する管理栄養士・栄養士の育成や、多分野をまたぐネットワークの構築、栄養施策の推進といった活動を行いますが、そうしたなかで行政栄養士は、実習生の受け入れや新人教育、地域の関連機関とのネットワーク構築などの業務を担います。

給食施設の指導

保健所の行政栄養士には、給食施設の栄養管理状況を把握し、必要に応じて指導する役割が求められます。給食は、子どもたちの健康に深く関わっているため、給食施設を指導することが、地域住民の健康増進につながるわけです。

保健所は、年度ごとに給食施設から提出される栄養報告書をもとに、施設の課題を把握し、各施設を個別に指導する「個別巡回指導」、あるいは施設全体に向けて研修を企画・実施する「集団指導」を実施します。

行政栄養士は、給食施設の管理栄養士に対して指導を行うことになるため、高度な知識と円滑なコミュニケーション力が求められるでしょう。

栄養調査の実施

栄養調査は、地域住民の健康課題を把握することを目的に実施されます。行政栄養士は、食事と栄養の専門知識を生かして調査の企画・実施に携わり、地域が抱える健康問題の把握に努めます。

栄養調査によって把握された健康課題は、行政の施策立案における基礎資料となりますが、「健康課題を施策にどう反映するか」などについて、専門職の目線で考えていくことも行政栄養士の大事な役割です。

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生活習慣病の発症予防と重症化予防に関する施策推進

生活習慣病の発症・進行を防ぐためには、食生活の改善が必要です。生活習慣病は、国民の健康の維持・促進において、大きな課題となっていますが、そうした疾病の予防施策にも行政栄養士の食事と栄養に関する専門知識が役立ちます。

施策における具体的な業務として挙げられるのは、集団検診の結果、健康保険のレセプトデータ、介護保険のデータなどにもとづいて健康課題を分析することです。また、明らかになった課題に対して改善目標を設定し、効率的で効果的な栄養指導を行うのも行政栄養士の役割。そうした場合は、生活習慣病の予防教室を開催したり、個別の栄養相談の機会を設けたりすることで、対象者の行動変容を促します。

なお、上記のような活動においては、目標の達成度や食習慣の変化などを評価し、より効率的で効果的な栄養指導になるように、常にPDCAを回していく必要があります。

子ども・高齢者の健康に関する施策推進

地域における子どもや高齢者の健康状態を把握し、健康課題に対してアプローチすることも、保健所における行政栄養士の仕事です。

子どもに対しては、乳幼児健診や集団の年次推移の評価を通して、発育状況や肥満・栄養不良といった課題を把握するほか、食生活の改善が必要な場合は個別に支援を行います。

高齢者の健康増進については、栄養と食生活を支援する体制づくりを行うとともに、低栄養状態の高齢者を把握・分析し、改善に向けての計画を立案・実施します。

また、子どもや高齢者の健康増進のためには、他機関との連携が欠かせません。そのため行政栄養士には、保育園・学校・教育委員会・介護保険課・地域包括支援センターといった機関と連携を取り、対象者を包括的に支援できるように調整する役割も求められます。

地区組織や組織体制の整備

行政栄養士は、地域住民の健康増進を目的とした地区組織を構築・運営するケースもあります。ここでいう地区組織とは、住民や民間企業が参加する官民協同の組織であり、地域の健康づくりを進めるためには、地域の人材を生かす取り組みが欠かせません。

行政栄養士は、そうした活動において、住民参加型の健康増進に関わるボランティアの育成業務を担います。

教育委員会や高齢者と子どもの福祉に関わる部署、地域の保健センターといった行政の関係部署と情報を共有し、同じ方向性で健康づくりの施策を進められるように調整したり、組織体制を整備したりするのも、行政栄養士の仕事となります。

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【栄養士の全体相場と比較】保健所で働く管理栄養士の給料相場

保健所で働く行政栄養士の年収相場は、約450万~600万円になります。下記は厚生労働省の資料やマイナビコメディカルの求人情報をもとに、管理栄養士・栄養士が働く施設の平均年収を算出した表です。

【施設別】管理栄養士・栄養士の平均年収
栄養士全体(※) 約368万円
病院・診療所 約300万~400万円
福祉施設(介護施設・児童福祉施設など) 約260万~310万円
保育施設 約300万~350万円
行政機関(公務員) 約450万~600万円
給食施設 約330万~400万円
その他事業所(美容業界・食品業界など) 約250万~330万円

(※出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2021/index.html

その他はマイナビコメディカルの求人情報を参考

行政栄養士の給料は、地方自治体ごとの給料表にもとづいて支給されますが、ほとんどの場合は毎年昇給し、定期的に賞与も支給されるため、ほかの施設に比べて平均年収が高くなります。住居手当や扶養手当、超過勤務手当といった各種手当が充実していることも、給料が高くなる理由でしょう。

加えて、土日祝休み、夏季や忌引といった特別休暇、病気休暇などの制度が整備されているのも、行政栄養士の特徴です。ワークライフバランスの取れた働き方を目指す人にとっては、魅力的な働き方と言えるでしょう。

なお、保健所の行政栄養士になるためには、管理栄養士免許を取得後(あるいは取得見込みの年)に、地方自治体の職員採用試験に合格する必要があります。

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まとめ

保健所は、地域住民の健康づくりと公衆衛生に関わるサービスや、保健指導を行う行政機関です。保健所で働く管理栄養士は、健康増進や疾病予防を目的とした公益性・専門性の高い業務を担うため、食事・栄養に関する高度な知識はもちろん、他分野と連携するためのコミュニケーション力も求められるでしょう。

保健所で働く管理栄養士は「行政栄養士」とも呼ばれます。行政栄養士は、地域全体の健康増進を図る責任の重い役割ですが、一方で収入・福利厚生といった待遇が手厚いため、ワークライフバランスを重視する方には、魅力的な職種と言えるでしょう。

マイナビコメディカルは、栄養士・管理栄養士の業界に精通した転職サイトです。求人のご紹介はもちろん、書類の書き方や面接まで、経験豊富なキャリアアドバイザーがサポートいたします。行政栄養士に興味のある方や、高収入の職場を探したい方、初めて転職を考えている方は、ぜひ一度マイナビコメディカルにご相談ください!

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