老健における管理栄養士の役割|1日のスケジュールや待遇も解説
介護老人保健施設(老健)とは、要介護1以上の認定を受けた65歳以上の高齢者に対して、リハビリテーションや医療ケアを提供し、自宅復帰を支援する施設です。老健で働く管理栄養士は医師や看護師、ケアマネジャーなどと協力しながら、栄養ケア・マネジメントや食事の提供などの業務を担います。
利用者さま1人ひとりに合わせた適切な食事を提供し、健康を支える管理栄養士は、自宅復帰を目指す高齢者にとって、非常に心強い存在と言えるでしょう。
この記事では老健における管理栄養士の役割や1日のスケジュール、給料・福利厚生、老健勤務に向いている方の特徴などを解説します。
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目次
介護老人保健施設(老健)とは
老健は「介護老人保健施設」の略称であり、介護を必要とする高齢者に介護サービスやリハビリなどを提供し、自宅復帰に向けた支援を行う施設です。そのため、長期入院が明けてから自宅へ戻るまでの期間に利用されるケースが多く見られます。
厚生労働省では老健を次のように定義しており、「リハビリテーションを提供することで心身機能の維持回復の役割を担う施設」と位置づけられている点に、大きな特徴があります。
老健では、食事、入浴、排泄などの介助や栄養管理、作業療法士・理学療法士によるリハビリテーションといった日常サービスに加えて、常勤の医師による医療ケアを受けることも可能です。
夜間の対応体制が整っている点も老健の特徴の1つで、なかには看護師が24時間常駐しているケースもあります。専門スタッフが連携してサービスの提供にあたるため、利用者さまは安心して生活を送ることができるでしょう。
なお、老健は介護保険が適用される公的な施設あり、入所して一定期間生活する活用方法のほか、短期間だけ過ごすショートステイや定期的に通所するデイケアの形で利用することもできます。
(出典:全国老人保健施設協会「老健施設とは」/https://www.roken.or.jp/about_roken)
老健の管理栄養士配置基準
以前の配置基準は、「定員100名以上の施設に栄養士を1名以上配置する」となっており、老健に管理栄養士の配置義務はありませんでした。しかし、介護老人保健施設における栄養ケア・マネジメントの重要性が見直されたことで、2021年度からは「栄養士又は管理栄養士を1名以上配置する」との内容に改定されています。
六 栄養士又は管理栄養士 入所定員百以上の介護老人保健施設にあっては、一以上
第十七条の二 介護老人保健施設は、入所者の栄養状態の維持及び改善を図り、自立した日常生活を営むことができるよう、各入所者の状態に応じた栄養管理を計画的に行わなければならない。
(引用:厚生労働省「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」/https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82999407&dataType=0&pageNo=1)
利用者さまが健康で質の高い生活を送るには、高齢者に起こりがちな低栄養状態を防ぎ、適切に栄養を摂取できるよう支援することが大事です。そのため、老健を含む介護施設では、利用者さまそれぞれの状態に応じた栄養ケア・マネジメントが強く求められています。
老健での管理栄養士の主な役割・仕事内容
老健における管理栄養士の業務は、次の2つに大別されます。
・食事の提供
栄養ケア・マネジメントとは、利用者さまのそれぞれの状況に応じた栄養ケア計画を立案、実施することです。
栄養ケア・マネジメント業務においては、まず栄養状態や食事の摂取状況、一日の運動量、体重や持病といったさまざまな要素を把握した上で、適切な栄養ケア計画を作成します。アレルギーの有無も必ず確かめるべき要素です。
立案できたら利用者さまやご家族の了承を得て食事を提供し、適切な食事形態になっているか、食べ残しはないか、水分は摂取できているかなどを観察・記録します。この段階で体重が減っている、食べ残しが多いなどの問題がある場合は、ケア計画を見直す必要があるでしょう。
なお、食事を提供するにあたっては、管理栄養士が献立作成から食材の発注・管理、調理のサポートまでを担います。その際、利用者さま1人ひとりの身体機能(摂食嚥下機能や咀嚼機能など)や状態にあわせて、細かく刻んだりとろみをつけたりと、調理方法を工夫するのも管理栄養士の役割です。
また、旬の食材や行事食を取り入れるなどして、利用者さまが楽しく食べられるように配慮することも大切です。
老健で働く管理栄養士の1日のスケジュール例
老健で働く管理栄養士は、具体的にどのような業務をこなしているのか、気になる方も多いでしょう。そこで、以下では管理栄養士の1日のスケジュール例を紹介します。
ただし、スケジュールや業務内容は施設によって違うため、あくまで参考としてお考えください。
時刻 | 業務 |
---|---|
8:30 | 出勤 職員シフトの確認、連絡事項の確認 |
9:00 | 食数の調整や食札の管理、食材の発注、納品物の検収、在庫管理など |
11:00 | 食事提供の準備、食事点検 |
12:00 | ミールラウンド |
13:00 | 休憩 |
14:00 | ケアカンファレンス |
15:00 | 資料作成業務など |
16:00 | 夕食点検 |
17:30 | 退勤 |
ミールラウンドとは、利用者さまの実際の食べ方を観察し、咀嚼・嚥下機能に問題はないか、しっかり摂取できているかなどを評価することです。
ケアカンファレンスには、管理栄養士のほか介護士や看護師、理学療法士、作業療法士などが参加し、利用者さまの情報を共有した上で課題やケア内容について話し合います。
老健で働く管理栄養士の給料
厚生労働省の調査によると、介護施設で常勤職員として働く栄養士と職員、老健職員の平均給与は以下の通りでした。
【介護施設で働く職員の給与】
職種 | 平均月給 |
---|---|
介護施設で働く栄養士・管理栄養士 | 316,820円 |
介護職員 | 318,230円 |
老健で働く職員 | 338,280円 |
※金額は、常勤で「介護職員等ベースアップ等支援加算」を取得している事業所の場合
(出典:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/22/dl/r04kekka.pdf)
介護施設で働く栄養士・管理栄養士と介護職員全体の平均月給を比較すると、栄養士・管理栄養士の平均月給のほうが、わずかに低くなっています。ただし、老健で働く職員の給料は全体平均よりも高いため、栄養士・管理栄養士が老健に勤務する場合は、ほかの介護施設で働く栄養士・管理栄養士よりも高い収入が期待できるでしょう。
老健で働く管理栄養士の福利厚生
マイナビコメディカルを含む複数の求人サイトを調査したところ、老健で働く管理栄養士の休日休暇や福利厚生、諸手当の状況は以下のようになっていました。
休日休暇 | 福利厚生 | 諸手当 | |
---|---|---|---|
老健施設A |
・年間休日 104日 ・初年度有給 10日 ・最大有給 20日 ・月8~9日休み ・育児休暇制度 |
・各種保険完備 ・財形貯蓄 ・退職金 ・駐車場 |
・通勤手当は実費支給、上限なし ・早出手当1000円/1回 ・遅出手当500円/1回 |
老健施設B |
・年間休日 107日 ・初年度有給 10日 ・最大有給 20日 ・週休2日制 ・育児休暇制度 ・介護休職制度 |
・各種保健完備 ・駐車場 ・社員旅行 ・24時間対応託児所 ・社員寮(独身寮) |
・通勤手当支給、上限45,000円/月 ・調整手当12,368~18,032円 ・職務手当5,000~10,000円 ・特殊業務手当6,184~9,016円 |
老健施設C |
・年間休日 111日 ・初年度有給 10日 ・最大有給 20日 ・週休2日制 ・育児休暇制度 |
・各種保健完備 ・退職金 ・駐車場 |
・通勤手当支給、上限50,000円/月 ・調整手当 23,100~35,000円 |
老健施設D |
・年間休日 121日 ・初年度有給 10日 ・最大有給 20日 ・4週8休制 ・育児休暇制度 ・介護休職制度 |
・各種保健完備 ・財形貯蓄 ・退職金 ・駐車場 |
・通勤手当は実費支給、上限なし ・技能手当 10,000円 |
管理栄養士に限ったことではありませんが、休日数や福利厚生は仕事のモチベーションを左右する大事な要素です。求人に応募するときは月給だけでなく、そうした諸条件もきちんと比較検討しましょう。
老健勤務に向いている管理栄養士の特徴
最後に、老健で働くのに向いている管理栄養士の特徴を紹介します。
高いコミュニケーション能力がある |
---|
老健では、利用者さまの身体機能や状態、性格、食の好みなどを細かく把握し、栄養ケア計画に反映させる必要があります。利用者さまとの信頼関係を構築し、食事に対する悩みや要望を率直に伝えてもらうには、コミュニケーション能力が非常に大事になるでしょう。また、老健で働く管理栄養士は、介護士や看護師、ケアマネジャーといった他職種との連携が欠かせません。スムーズかつ密接に連携できる方は、老健で十分に活躍できるはずです。 |
事務処理能力が優れている |
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管理栄養士は、献立作成、食材発注、食数管理、検食簿記入、衛生管理など、日々多くの事務作業を行う必要があります。そのため、事務処理能力が高くてきぱきとこなせる方は、老健で働くことに向いています。 |
責任感がある |
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老健の場合、1つの施設につき管理栄養士が1名しかいない体制が一般的です。そうした状況では、衛生面から安全面に至るまで、提供する食事全般に責任を持つ必要があります。加えて、利用者さまの健康やQOLの向上にも配慮しなくてはならないため、真摯に栄養士業務に取り組める、責任感のある方が適しています。 |
先に紹介したように、利用者さまが食べやすい食事を作る、日々の食事に飽きないように工夫をこらすなどの工夫も必要なため、食に対して強い興味を持っていることも大切な資質と言えるでしょう。
まとめ
介護老人保健施設(老健)では、栄養ケア・マネジメントのために栄養士あるいは管理栄養士を1名以上配置することが義務づけられており、管理栄養士の需要が高い職場だと言えます。老健の管理栄養士は、利用者さま1人ひとりの状態に応じた栄養ケア計画を実施するとともに、献立作成から食材の発注・管理、調理のサポートまでを担います。ちなみに、老健で働く職員の平均月給は、ほかの介護施設に勤務する栄養士・管理栄養士の平均月給よりも高く、好待遇が期待できるでしょう。
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※当記事は2023年9月時点の情報をもとに作成しています
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