体幹トレーニングは意味ない?効果的なメニューと鍛えるメリットについて解説
公開日:2024.11.16
文:加藤 小百合(自律神経専門パーソナルトレーナー)
「体幹トレーニング」とは、ジムに通わず自宅で手軽にできるトレーニングの1つです。しかし、「体幹を鍛えると、どんな効果があるの?」「そもそも体幹とは?」などの疑問をもっている方も多いのではないでしょうか。
サッカーやラグビーなどアスリートのトレーニングと思っている方もいるかもしれませんが、実は姿勢が良くなったり疲れにくくなったりと、日常生活にも多くのメリットをもたらしてくれます。
そこで今回は、体幹を鍛える意味や効果とともに、初心者でも簡単にできるメニューから中・上級者向けのおすすめ体幹トレーニングを紹介します。
体幹とは?
体幹とは、頭部・四肢(両腕・両脚)を除いたすべての部分のことです。体幹には脊柱(脊椎)、肋骨、骨盤があり、肋骨と骨盤の間にある腹腔(腹部の内臓スペース)は筋肉によって支えられています。
体幹の筋肉は、表層の筋肉(アウターマッスル)と深層の筋肉(インナーマッスル)に分けられます。体幹を効果的に鍛えるためには、両方をバランス良く鍛えることが大切です。アウターマッスルは大きな力を発揮するときに使用する筋肉で、腹筋を割ったり、胸板を厚くしたり、見た目を大きくするにはアウターマッスルのトレーニングが必要です。
体幹にあるアウターマッスルの例
大胸筋(だいきょうきん)
胸部を覆う大きな筋肉で、腕を前方に動かしたり、呼吸を補助したりする役割がある。
腹直筋(ふくちょくきん)
おなかの中央にある筋肉で、体を前に曲げたり起き上がったりするのに役立つ。
腹斜筋(ふくしゃきん)
腹部を斜めに走る筋肉で、体を横にねじったり、姿勢を調整する役割がある。
インナーマッスルは体の奥深くにあり軽視されがちですが、呼吸のほか関節や内臓を安定させ、姿勢を維持する重要な役割を担っています。
体幹にあるインナーマッスル
腹横筋(ふくおうきん)
腹筋群のもっとも深層で腹腔をコルセットのように覆い、体幹を安定させている。排泄を助ける作用もある。
多裂筋(たれつきん)
脊柱起立筋の深層で筋肉や関節の位置センサーとしても働き、脊柱を安定させている。
横隔膜(おうかくまく)
肋骨の内側下部にある半ドーム型の筋肉で、腹腔の天井にあたる。息を吸うと横隔膜が下がり内臓が押し下げられ、腹圧が高まると同時に胸腔(肺のあるスペース)の内圧を下げることで肺に空気が入る。
骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)
骨盤の底で内臓を支えている筋肉の総称。ゆるんだり、固くなりすぎると尿もれ、便もれ、内臓下垂、骨盤臓器脱を引き起こす。
体幹トレーニングは意味ない?
「体幹トレーニング」は「意味がない」と聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。しかし、体幹トレーニングは多くのアスリートが実践しているように、体を基礎から強化するためにとても効果的なトレーニングです。
トレーニングというと、筋肉を強くしたり肥大させる筋トレを思い浮かべる方がほとんどです。しかし、体幹トレーニングの目的は筋肉を大きくしたり強くしたりすることではなく、効率的でスムーズに動ける能力を高めることです。
たとえば、体幹トレーニングによって動作の軸が安定すると、ゴルフスイングなどの動きが良くなることがあります。私自身も体幹が鍛えられるピラティスを継続しているうちにバドミントンのパフォーマンスが向上し、けがが激減しました。このように、体幹を鍛えて安定できると運動のパフォーマンスを高めることにつながります。
ただし、体幹を「固定すること」と「安定させて動くこと」はまったく別です。運動のパフォーマンスを高めるには、インナーマッスルからアウターマッスルへ、さまざまな方向に力を伝える必要があります。
肘や手をついて体を長時間固定するフロントプランク・サイドプランク・バックプランクなどのトレーニングは、運動のパフォーマンスを高めるには不向きです。体幹を安定させてよりスムーズに動けるようになるためには、プランクの姿勢から腕立て伏せをしたり、ツイストしたり、脚を動かしたりするような動きをともなうトレーニングのほうが効果的と言えるでしょう。
また、ドローインやプランクよりも、スクワットなどのダイナミックな動作のほうが腹圧が高まり、より効率的に体幹を鍛えられることがわかっています。つまり、「体幹トレーニングは意味がない」わけではなく、目的に応じて適切なメニューを選択する必要があるのです。
体幹を鍛えるメリット
体幹トレーニングはアスリートだけのものではなく、運動不足で不調に悩まされている方にも有効です。体幹トレーニングには具体的に次のような効果が期待できます。
・ぽっこりお腹が引き締まる
・呼吸が深くなり疲れにくくなる
・猫背や反り腰などの姿勢が改善する
・肩こりや腰痛の予防、改善につながる
・運動のパフォーマンス向上、けが予防になる
ピラティスを通して体幹トレーニングを指導させていただいた方からは「姿勢が良くなったと褒められた」というご報告も多く、身長が伸びた方も少なくありません。ぽっこりお腹が気になる方はもちろん、肩や腰に痛みのある方もぜひ実践してみてください。
【初心者におすすめ】体幹トレーニングメニュー5選
はじめに、初心者や高齢者でも自宅でできる簡単な体幹トレーニングを5つ紹介します。まずは呼吸を深くすることからはじめましょう。
①腹式呼吸
1.あおむけになりひざを立てます。両手をおへその下あたりに置き、息を吐いてお腹を凹ませます。このとき、肛門を締める、またはおしっこを途中で止めるようなイメージで骨盤底筋群を引き上げます。5~10秒間キープします。
2.次に、息を吸ってお腹をふくらませます。
3.再び息を吐きながらお腹を凹ませます。これを5~10回くり返します。
②胸式呼吸
1.あおむけになりひざを立てます。両手で肋骨に触れた状態で息を吐いてお腹を凹ませます。
2.お腹を凹ませたまま息を吸い、胸をふくらませます。
3.息を吐くときもお腹を凹ませ、肋骨が収縮するのを確認できたらOKです。5~10回くり返します。
※①と②の呼吸法は体勢を変えると負荷が変わります。感覚がつかめたらうつぶせ・四つんばい・座位・立位といろいろな体勢で試してみてください。
③デッドバグ
1.あおむけで両手を天井方向へ伸ばし、股関節とひざが90°になるように曲げます。腰が反りやすい方は左脚のみ上げてください。
2.下腹部に力を入れたまま骨盤を安定させ、右手と左脚をゆっくり遠くに伸ばします。
※腰が反ってしまう場合は、片手または片脚だけを小さく動かすことからはじめてください。
3.ゆっくり戻して、左右それぞれ5回ずつ行います。
④ヒップリフト
1.あおむけで両ひざを立て、両手を体の横に置きます。
2.お腹に力を入れ、肛門を締めるようにして、おしりをもち上げます。
3.肩・腰・ひざが一直線になるところで数秒間キープし、ゆっくり元に戻します。この動作を5~10回くり返します。
⑤スパインツイスト
1.両ひざを立てて脚を腰幅に広げて座ります。両手は肩の力を抜いて胸の前で組み、両足が床から浮かない程度に上体をゆっくり後ろに倒します。
2.背筋を伸ばしたまま上体を左にひねり、右手を前方、左手を後方へ伸ばし左手を見ます。
3.ゆっくり1の姿勢に戻ります。左右それぞれ3~5回ずつ行います。
※きつい場合は椅子に座って上体を起こしたまま行ってもOKです。
【中・上級者におすすめ】体幹トレーニングメニュー5選
次に【中・上級者向け】ぽっこりお腹改善と姿勢改善におすすめの体幹トレーニングを紹介します。体幹トレーニングは呼吸と連動させて動くことが大切です。難しい動きは呼吸を止めがちになりますが、迷われたら息を吐くようにしてください。
①四つんばいエクササイズ
1.手を肩幅、ひざを腰幅に開き四つんばいになります。息を吐きながら背中を丸め、吸いながら反らせる動きを3~5回行います。
2.吐く息で体を真横に曲げし、吸う息で戻します。左右それぞれ3~5回行います。
3.右腕と左脚を床と平行になるまで上げ、ゆっくり元に戻します。左右それぞれ3~5回行います。
※腰が反ってしまう場合、片手または片脚だけからはじめてください。
4.四つんばいから左脚を伸ばし胸を開いて左手を天井方向へ伸ばします。バランスをとりながら左脚が床と平行になるまで上げ、ゆっくり戻します。左右それぞれ3~5回ずつ行います。
5.もう一度1の動きを3~5回くり返します。
②バックアーチ
1.うつぶせで脚を肩幅くらいに開き、両腕を前に伸ばします。
2.お腹の力を抜かずに、脚と上半身を浮かせて数秒間キープします。
3.ゆっくり下ろして脱力します。5~10回くり返します。
※腰を反りすぎないようにしてください。
③ローリングライクアボール
1.ひざを曲げて座った姿勢から脚を浮かせてバランスをとり、手は脚の横に軽く添えます。
2.背中を丸めながら骨盤を後ろに傾むけてゆっくり後ろに転がります。
3.息を吐きながら元の状態に戻ります。5~10回くり返します。
④スクワット
1.脚を肩幅より広めに開き、つま先とひざをやや外側に向け、両手を脚のつけ根に置きます。
2.両手をはさみ込むように股関節を曲げておしりを後ろに引き、ひざが90度くらいになるまで腰を落とします。
3.元の姿勢に戻ります。5~15回くり返します。
⑤片脚バランス
1.まっすぐに立った姿勢で両手をバンザイし、右脚を後ろに引きます。
2.そのまま左の股関節を曲げ、右脚を後ろに伸ばし、手からかかとまで床と平行になるところで数秒間キープします。
3.ゆっくりと戻し、反対側も同様に行います。難しい場合は手を腰に当てて行ってみましょう。
体幹トレーニングの注意点
体幹トレーニングを行う際の注意点は以下の3つです。
フォームを意識する
自宅で簡単にできる体幹トレーニングですが、誤ったフォームで行うと歪みや痛みを引き起こしてしまいます。効果を感じられない場合は鏡を見たり、トレーナーや専門家に見てもらったりするのもおすすめです。フォームを意識するためにも、呼吸を感じながらゆっくり動きましょう。
日常生活で積極的に動く
体幹トレーニングは、痩せるためにカロリーを消費する運動ではありません。日常生活動作やスポーツ動作に結びつける「くせづけ」となるものです。何気なく立っているときや座っているときに「呼吸を深くする」だけでも体幹を鍛えられます。
また、腸腰筋(大腰筋・腸骨筋)を使うことでぽっこりおなかが引き締まります。日常で座る時間を減らして立ったり、歩いたり、ときには階段を1段飛ばしで上るなど積極的に動きましょう。
少しずつ続ける
体幹トレーニングは、がんばるよりも継続が大切です。最初から回数やセット数を重ねる必要はありません。つらい・きつい・難しいというイメージをもったままでは挫折してしまいます。筋肉痛がなければ毎日行えます。1日3分でも5分でもよいので、無理のない範囲で続けていきましょう。
※安静時に痛みや痺れ、麻痺のある方、産後や術後などで腹圧をかけることを禁止されている方は、医師の指示に従ってください。
まとめ
今回は、初心者でも自宅で簡単にできるメニューから、中・上級者におすすめの体幹トレーニングを紹介しました。体幹トレーニングは、決して「意味がない」わけではありません。姿勢が良くなり、ぽっこりお腹が改善し、疲れにくくなり、けがを予防するなどさまざまなメリットがあります。
続けるためにもがんばりすぎず、楽しみながら動いていきましょう。
<参考文献>
体幹トレーニングの流行の背景と効果に関する考察
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ptcse/27/1/27_27-003/_pdf
健康長寿ネット インナーマッスルとは
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shintai-training/innermuscle.html
加藤 小百合
フィットネスクラブ、カルチャーセンター、医療機関などでピラティス、ヨガ、気功、ウォーキング指導など運動指導歴20年以上。鍼灸整骨院と産前産後の整体施術もあわせ、のべ3万人以上をサポート。パーソナル指導のほか企業研修講師として目の疲れ、首・肩こり、腰痛改善セミナーも行う。体も心も整うセルフケアを中心にWebライターとしても活動中。
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