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作業療法士になるには?必要な資格や学費、学校の種類について解説

公開日:2021.06.11 更新日:2023.06.01

作業療法士になるには

文:平岡 泰志(作業療法士)

作業療法士(OT)は病院や介護施設などでリハビリをおこなう専門職で、「理学療法士及び作業療法士法」により定められた国家資格です。病気や障がいを持つ方に対し、さまざまなリハビリをおこない、生活の不自由さを改善するのが主な役割となります。

作業療法士になるには、養成校の卒業と国家資格を取得が条件であり、その後、自分が行いたいリハビリの内容や対象に合った就職先を探すことになります。今回は作業療法士を目指す人に向けて、資格の取得方法を説明するとともに、作業療法士の平均給料や就職先についてお伝えします。

作業療法士になるには?養成校の卒業と国家資格の取得が条件

”作業療法士になるには?養成校の卒業と国家資格の取得が条件

作業療法士になるには、文部科学大臣または厚生労働大臣が指定した養成校のカリキュラムを修了し、作業療法士国家試験に合格しなければなりません。養成校では、次のような内容を学習します。

専門基礎 解剖学・運動学・臨床医学など
専門 作業療法評価学・中枢神経疾患作業療法学・臨床実習など

講義や実習を通じて、卒業に必要な単位を取得することで、国家試験の受験資格を得ることができます。作業療法士国家試験を受験し合格基準点に達すると、免許取得となり、作業療法士としての就職が可能です。

国家試験の合格率

作業療法士国家試験は、毎年2月におこなわれます。過去5年間の作業療法士国家試験の合格率は、70~80%台で推移しています。

2023年「第58回作業療法士国家試験」合格発表と合格率

作業療法士国家試験は、養成校のカリキュラムに沿った内容で出題されます。また、各養成校では国家試験の受験対策として過去問題の復習や特別授業などもおこなっていることもあり、在学中にしっかりと勉強すれば比較的合格しやすい資格と言えるでしょう。

■参考
>>2021年「第56回作業療法士国家試験」合格発表と合格率
>>2022年「第57回作業療法士国家試験」合格発表と合格率
>>2023年「作業療法士国家試験」合格発表と合格率(58回)

国家試験合格より、養成校卒業が大変

作業療法士になるには国家試験に合格することよりも、養成校のカリキュラムを修了し卒業するほうが大変とも言えます。というのも作業療法士の養成校を卒業するには、臨床実習に合格しなければならないからです。

作業療法士の臨床実習は、養成校が指定する病院や介護施設などでおこないます。学生は現場の作業療法士と同じように患者さんを受け持ち、身体の状態を評価しながら、患者さん個々に合わせたリハビリを計画・実行しなければなりません。

学生のなかには適切なリハビリの評価や訓練がおこなえず、残念ながら実習で不合格になったり、卒業を断念したりする人もいます。作業療法士になるには、国家試験に加え、養成校を卒業する大変さも理解しておくことが大切です。

専門学校・大学の大きな違いは学費とカリキュラム

”専門学校・大学の大きな違いは学費とカリキュラム“/

作業療法士の養成校は、専門学校と大学があります。学費は、各養成校で大きく異なりますが、一般的に専門学校よりも大学のほうが高い傾向にあります。

平均的な学費
専門学校 約440万円
大学 約620万円

各地方の専門学校・大学を一箇所抽出し、その平均を「平均的な学費」として算出。

作業療法士になるための学費負担で悩んでいる人は、奨学金プランのある養成校を選ぶのもひとつの方法です。

養成校のなかには連携病院や介護施設などへの就職を条件に、奨学金を貸付・付与する学校もあります。こうした奨学金プランを利用すれば、作業療法士の資格取得に必要な学費負担を減らしたり、就職先を確保できたりします。

また、専門学校と大学では、作業療法士になるための基本的な知識・技術を学べる点は同じですが、主にカリキュラムの構成が異なります。

専門学校と大学のどちらを選べばよいのか悩んだ時には、次の違いをひとつの基準として、進学先を選ぶとよいでしょう。

養成校卒業までにリハビリの実践的なスキルを集中的に身につけたい→専門学校
将来的にリハビリの研究や後進の育成などにも携わっていきたい→大学

専門学校では学外での臨床実習に加え、学内でもリハビリの実技練習を積極的におこなっています。一方、大学ではリハビリの理論や研究・管理運営法などを学ぶカリキュラムがあるのが特徴です。

作業療法士の仕事内容

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そもそも作業療法士はどのような仕事なのでしょうか。作業療法士の概要や仕事内容について詳しく解説します。

作業療法士とは

作業療法士は、心身に障がいのある方に対し、さまざまな作業活動を通して治療やアドバイスを行い、対象者の健康と幸せをサポートするセラピストです。

日本作業療法士協会によると、作業療法とは 「作業療法は、人々の健康と幸福を促進するために、医療、保健、福祉、教育、職業などの領域で行われる、作業に焦点を当てた治療、指導、援助である。

作業とは、対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す。」と定義されています。作業療法の「作業」には、あらゆる日常生活動作や趣味活動、職業技術的な活動など幅広い意味合いがあります。

作業療法士の職場とそれぞれの仕事内容

作業療法士は主に医療施設や福祉施設に勤務し、患者さんの治療や支援にあたります。作業療法士が活躍する職場別に、それぞれの仕事内容を解説します。

一般病院

一般病院では主に、脳卒中や整形外科疾患、心疾患を持つ患者さんを対象に、機能そのものの回復を図る機能訓練や、日常生活動作訓練、家事動作訓練を行います。

具体的には、脳卒中により片麻痺が出現した患者さんに対して、麻痺そのものを軽減する機能訓練を実施したり、心疾患がある患者さんに対し、心臓に負担がかかりにくい入浴方法をアドバイスしたりします。

患者さんが障がいを受ける前と同じような生活が送れるように医師や看護師、理学療法士や言語聴覚士、介護士など多くの他職種と連携した総合的なサポートを行います。

精神科病院

精神科の病院では、統合失調症やそううつ病、アルコール・薬物依存症の患者さんを対象に創作活動やレクリエーション活動を通したリハビリを実施します。さまざまな症状を抱える患者さんの治療を進めるには信頼関係の構築が必要であり、セラピストには繊細なコミュニケーション能力が求められます。患者さんが社会復帰できるよう医師や看護師、ソーシャルワーカーと連携することはもちろんのこと、患者さんが安心して地域で生活できるように地域への働きかけも、作業療法士の重要な役割といえます。

入所系介護施設

入所系介護施設は、主に高齢者を対象にリハビリを行います。ただし、施設の種類によって治療内容が異なります。介護老人保健施設では在宅復帰を目標に、自宅環境を想定した生活リハビリや集団リハビリ、家族への介護に関するアドバイスを行います。一方、有料法人ホームや特別養護老人ホームでは、生活機能の維持や認知症予防が主となります。入所者と離れて暮らす家族に向けて、最近の様子やリハビリの状況などを報告することも作業療法士の大切な仕事です。

通所リハビリ・通所介護

通所系事業所では、介護施設等に通所する利用者を対象に、生活の質の向上や自立支援を目的にリハビリを行います。具体的には、自宅環境を想定した個別機能訓練や、認知症予防を目的としたレクリエーション活動などが挙げられます。高齢者は社会的に孤立しがちな傾向にあるため、利用者さん同士のつながりや地域とのつながりを調整するのも作業療法士の役割といえるでしょう。

訪問リハビリ

訪問リハビリは、利用者の生活に寄り添ったリハビリができるのが特徴です。セラピストが対象者の自宅に訪問し、日常生活動作訓練や家事動作訓練をはじめ、住環境の整備や福祉用具の選定も支援します。そのため、福祉用具の業者やケアマネジャー、家族と密に連携しながらリハビリを進める必要があります。

作業療法士の給料はいくら?就職先やキャリアによって異なる

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厚生労働省が発表する「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、作業療法士(理学療法士、言語聴覚士、視能訓練士を含む)の平均年収は約427万円(平均年齢35.1歳)です。

ただ上記はあくまで平均であり、作業療法士の給料は勤務先で大きく異なります。就職先によっては昇給額やボーナスなど、キャリアに伴い年収アップが期待できるでしょう。

作業療法士のおもな就職先
日本作業療法士協会の「日本作業療法士協会会員統計資料(2019年度)」によると、作業療法士の勤務先でもっとも多いのは病院(リハビリ専門病院・精神病院など)で、次いで介護老人保健施設・老人福祉施設・診療所となっています。

日本作業療法士協会の「作業療法白書2021」によると、作業療法士の就職先分布は以下のようになっています。

・一般病院53.2%
・精神科病院10.1%
・介護老人保健施設6.1%
・訪問リハビリ5.3%
・通所リハビリ3.8%
・通所介護1.8%

ほかにも、児童福祉施設や特別支援学校・身体障害・精神障害者福祉センター・保健所など、作業療法士には多岐にわたって活躍の場があります。

しかし給料が高い職場だからといって、必ずしも納得のいく臨床経験が積めるとは限りません。特に新人作業療法士のうちは、リハビリの基礎を築く大切な時期です。作業療法士として就職先を考える際には、将来的に自分が理想とするリハビリができるかどうかも見極めながら考えることが大切です。

作業療法士と理学療法士の違い

”作業療法士と理学療法士の違い“/

作業療法士と似た職業として、理学療法士があります。いずれも医療系の国家資格であり、共通する必須科目も多いため、明確な違いが分かりにくいかもしれません。

作業療法士も理学療法士も「対象者の日常生活や社会への復帰」を目的としているのは同じです。ただし、目的を達成するための目標やリハビリ内容、就職先などが異なります。

リハビリの目標および内容の違い

目的を達成するための目標として、理学療法士は「歩く」「座る」「立つ」などの基本動作能力の維持および改善を主な目標としています。主に歩行訓練や基本動作訓練、物理療法を利用した治療を行います。

一方で、作業療法士は「服を着る」「洗濯物を干す」「手を洗う」など、応用動作能力の維持や改善を目標とし、作業活動を通じて、日常生活の動作訓練や認知機能の改善、職業訓練、レクリエーション活動などのリハビリを実施します。

作業療法士・理学療法士の就職先の違い

理学療法士の主な勤務先は、一般病院や介護施設、通所リハビリや訪問リハビリなどが挙げられます。病院では、ケガや病気により入院している患者さんの身体機能の回復を任されることが多いでしょう。最近ではスポーツ・フィットネス関連施設 で活躍する人も増えています。
一方、作業療法士は一般病院や介護施設、通所事業所、訪問リハビリに加えて、精神科病院、就労支援事業所、障がい者支援施設、発達障がい分野にも活躍の場があります。

作業療法士に向いている人の5つの特徴

作業療法士に向いている人
「リハビリの仕事をしたい」と考えていても、自分に作業療法士の適性がなければ、長く働き続けるのは難しいものです。ここからは作業療法士に向いている人の特徴について紹介します。

①コミュニケーションが得意

患者さんの求めるリハビリを提供するには、まず患者さん本人の要望をしっかり聞き取るためのコミュニケーション能力が必要です。時には患者さんの悩みを聞きながら、不安を解消する助言をしたり、訓練プログラムを工夫したりするのも作業療法士の大切な役割です。

そのため、コミュニケーションが得意な人は作業療法士に向いていると言えるでしょう。

②探究心がある

リハビリ医療は日進月歩であり、日々新しい治療法が研究・開発されています。作業療法士として常に新しい知識・技術を学ばなければ、患者さんに対して最良のリハビリがおこなえません。

自分がわからないことを本で調べたり、先輩や養成校の先生に聞いたりするといった積極的な姿勢と学び続ける探究心が必要です。

③フットワークが軽い

リハビリの現場では、数多くの医療・介護従事者と協力しながら働きます。例えば、患者さんの健康状態について医師や看護師と情報交換したり、リハビリの方針について理学療法士やケアマネジャーと情報共有したりする機会が多くあります。

作業療法士はほかの専門職と連携することで、安全に円滑にリハビリがおこなえるものです。フットワークが軽い人であれば、作業療法士として医療・介護従事者と積極的に連携しながら働けるでしょう。

④ストレス発散方法を知っている

作業療法士は医療職として、患者さんの深い悩みに寄り添う必要があります。多くの患者さんとやり取りをするうちに、ストレスが溜まってしまうこともあるでしょう。翌日のリハビリに影響しないよう、ストレス発散することが大切です。ストレス発散方法がある人は、適度な充足感を得ながら仕事ができるでしょう。

⑤接客経験がある

作業療法士は医療職であると同時にサービス業でもあります。作業療法士は患者さんと相互的な関係性を保ちながら治療を進めるには、患者さんや家族に対して適切な接遇が求められます。接客や電話対応、苦情処理などの経験が豊富な人は、作業療法士に向いているでしょう。

リハビリの現場で自分の力を発揮する作業療法士になるために

作業療法士になるには、養成校の教育カリキュラムを修了し、国家試験に合格しなければいけません。そのため、資格取得までに時間や費用がかかります。しかし作業療法士の資格を取得できれば、専門職として病院や介護施設など、さまざまな場所での活躍が期待できます。

リハビリの仕事に興味があるのであれば、作業療法士を目指してみてはいかがでしょうか。

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参考

理学療法士及び作業療法士法
日本作業療法士協会|作業療法の定義|一般社団法人日本作業療法士協会
令和3年賃金構造基本統計調査(職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計))

平岡 泰志

平岡 泰志

作業療法士/医療介護分野専門ライター

地方の二次救急指定病院にて5年間勤務。その後、多職種と共にデイサービスの立ち上げに携わり、現在は主任として現場を統括。「高齢者の尊厳を守る」を念頭に、利用者と家族の生活をサポート。プライベートでは4人の子どものパパ。仕事と子育ての両立をするべく、日々奮闘中。

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