作業療法士は将来性がない?飽和の真実とこれから求められるスキル
公開日:2021.06.07 更新日:2021.10.07
文:田口 昇平
(作業療法士、福祉住環境コーディネーター2級)
近年、高齢化に伴い、病院や介護施設などにおけるリハビリのニーズが高まっています。日本では、1970年に65歳以上の人口が「高齢化社会」の基準となる7%を超えており、医療資格者の需要が増加しました。
一方で作業療法士の有資格者は毎年、6,000~6,500人のペースで増えています。もし今後、市場が飽和した場合「作業療法士として活躍できるのか」「将来性がないのでは」と、不安に感じている人もいるのではないでしょうか。
リハビリの仕事を続けたくても、働き口がなければ生活できません。今回は作業療法士の現状を説明しながら、知っておきたい将来性や今後の働き方について解説します。
作業療法士の現状は?人数・平均年齢・就職先を解説
日本作業療法士協会の「日本作業療法士協会会員統計資料(2019年度)」によると、作業療法士の人数は62,294人、平均年齢は35.07歳です。
作業療法士は、社会のさまざまな場所で活躍しています。以下は、作業療法士が働く代表的な職場と人数の内訳です。
作業療法士のおもな就職先・活躍する場所
代表的な職場 | 人数(人) | 割合 |
---|---|---|
医療法関連施設 (一般病院や診療所など) |
36,693 | 73.2% |
介護保険法関連施設 (老人保健施設など) |
6,147 | 12.3% |
老人福祉法関連施設 (特別養護老人ホームなど) |
2,274 | 4.5% |
児童福祉法関連施設 (児童福祉施設など) |
1,241 | 2.5% |
このよう作業療法士の勤務先として最も多いのは、病院や診療所といった医療施設です。また、割合は少ないものの、介護施設や児童福祉施設などでも活躍しています。
作業療法士が飽和状態だと言われる理由と実情
上述したように、現状では作業療法士の70%以上が医療機関で働いています。近年、作業療法士有資格者の増加により、「作業療法士は将来性がない」と言われることもありますが、これは一般病院で働く作業療法士が増えすぎ、飽和状態となっているからだと推測できます。
別の視点で見てみると、介護施設や精神病院・児童福祉施設などでは、作業療法士の人材が不足しているのが現状です。
-
<介護老人保健施設や訪問看護ステーションなどの介護施設の例>
作業療法士や理学療法士の人数が少なく、すべての利用者に対し、必要なリハビリが提供できない場合があります。
- <精神病院や児童発達支援センターなどの児童福祉施設の例>
作業療法士のマンパワー不足から、患者さんや障がい児への生活支援が十分に行き渡っていないケースもあります。
作業療法士の将来性が不安視されてといっても、実は人材が不足している分野も多いのです。
作業療法士の就職率は100%
日本作業療法士協会によれば、作業療法士の就職率は100%となっています。
転職サイトの「マイナビコメディカル」でも作業療法士の求人掲載数は1万件を超えており、資格を所持していれば就職先に困ることはありません。
ただし、人気の職場は応募者も多く競争率が激しくなります。作業療法士として、就職や転職を有利に進めたいのであれば、将来を見越したキャリア形成を考えることが大切です。
求められる作業療法士になるための2つのポイント
では、求められる作業療法士として、活躍しつづけるにはどのような点を意識すればよいのでしょうか。取り入れたい2つのポイントを紹介します。
①専門分野をつくる
ひとつは作業療法士として、自分の専門分野をつくることです。一口に「リハビリ」と言っても、色々な分野があります。
例えば「福祉用具に関する専門資格がある」「認知症や高次脳機能障害に対する研究に力を入れている」「就労支援の実績が多数ある」など、基本的なリハビリスキルに加え、特定の専門分野があると重宝されます。
他の作業療法士と差別化を図るには、自分の強みとなる専門分野への特化を考えてみましょう。
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②需要が高い領域で働く
もうひとつは、需要が高い領域で働くことです。先にも紹介したとおり、一般病院や診療所では、作業療法士の人数が飽和状態にあります。
一方で精神病院や介護施設・児童福祉施設などは作業療法士の人数が少なく、依然として十分なリハビリがおこなえていない事業所も多く見られます。
こうした事業所では、患者さんや利用者さんに充実したリハビリを提供するため、ひとりでも多くの作業療法士を求めています。求められる作業療法士になるには、将来的に需要がある領域で働くことも念頭に入れながら、キャリアを積むとよいでしょう。
作業療法士にはまだまだ将来性がある
作業療法士は、一般病院や診療所ではマンパワーが充実し、飽和状態にあります。しかしながら、精神病院や介護施設・児童福祉施設などでは、人材が不足している事業所が多く、今後も作業療法士の需要が見込まれます。
ただし、需要があってもスキルや経験が十分でないと、採用競争に負けてしまうかもしれません。作業療法士として求められる人材を目指すなら、専門分野をつくったり、需要が高い領域で働いたりして、活躍できる場所を積極的に探してみてはいかがでしょうか。
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参考
令和2年版高齢社会白書 第一章 高齢化の状況(内閣府)
我が国作業療法の現状と今後の展望(宮前珠子ほか)
障害児通所支援事業所従事者実態調査(厚生労働省)
2008年に作業療法士免許取得後、東京都内のリハビリ専門病院や特別養護老人ホームなどの施設で医療や介護業務に従事。2018年より、フリーライターに転身。医療介護職の働き方や働きやすい労働環境づくりなど、幅広いテーマで執筆。心理学・脳科学分野の書籍を愛読し、学んだ内容をブログやSNSで情報発信している。
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