NHISSとは?評価方法や点数、注意点などについて解説
公開日:2024.05.03
文:rana(理学療法士)
「NHISS」とは、脳卒中疾患における評価スケールで、セラピストだけではなく医師や看護師なども広く活用される評価方法です。特に脳血管障害の患者さんに携わるセラピストは、現場で活用する機会も多いため、しっかりと内容を抑えておかなければなりません。今回はNHISSの概要や評価方法、注意点などについて、現役理学療法士が詳しく解説します。
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NHISSとは?
NHISSとは、National Institutes of Health Stroke Scaleの頭文字をとった略語で、アメリカ国立衛生研究所が開発した脳卒中疾患を有する患者さんに対する評価スケールです。世界的にも広く利用されるもので、脳卒中患者さんの症状や重症度を数値化し、治療効果の判定や予後を評価するために用いられています。
NHISSの評価方法
NHISSは15項目からなる神経学的検査を点数化し、その合計点で判定を下します。点数が多いほど重症度が高いことを示しており、患者さん1人の評価に必要な時間は10分未満です。NHISSそれぞれの評価項目についての概要と、判定の算出方法についてまとめました。
NHISSの評価項目
NHISSそれぞれの評価項目の概要は以下の通りです。
意識水準
患者さんを観察して判定をします。覚醒していなければ声かけや痛み刺激を与えて反応を診ます。
0点:完全覚醒
1点:簡単な刺激で覚醒
2点:繰り返し刺激、強い刺激で覚醒
3点:完全に無反応
意識障害₋質問
今月の月名および年齢を質問します。
0点:両方正解
1点:片方正解
2点:両方不正解
意識障害₋従命
最初は開閉眼を行い、次に手を握る・開く、を指示します。
0点:両方可
1点:片方可
2点:両方不可
最良の注視
検者の指を左右に動かし、患者さんに目で追いかけてもらいます。
0点:正常
1点:部分的注視麻痺
2点:完全注視麻痺
視野
患者さんの片方の目を隠し、検者の指を動かして視野の欠損がないかを評価します。評価する視野は右上・右下・左上・左下の4点です。
0点:視野欠損なし
1点:部分的半盲
2点:完全半盲
3点:両側性半盲(全盲)
顔面神経麻痺
歯を見せる・額に皺をよせる・目を大きく開けるなど、顔面神経の動作を評価します。
0点:正常
1点:軽度の麻痺
2点:部分的麻痺
3点:完全麻痺
左右上下肢運動
【上肢】
上肢を挙上してもらいます。(座位なら90度、背臥位なら45度挙上)
0点:90度を10秒保持可能(下垂なし)
1点:90度を保持できるが10秒以内に下垂
2点:90度の挙上または保持ができない
3点:重力に抗して動かない
4点:全く動きがみられない
N:切断、関節癒合
【下肢】
背臥位で30度下肢を挙上してもらいます。
0点:30度を5秒保持可能(下垂なし)
1点:30度を保持できるが5秒以内に下垂
2点:重力に抗して動きがみられる
3点:重力に抗して動かない
4点:全く動きがみられない
N:切断、関節癒合
運動失調
鼻指検査、膝踵検査(対側の踵を膝から足首、続けて足首から膝まで脛に添わせる)を行います。
0点:失調なし
1点:1肢のみに失調あり
2点:2肢以上に失調あり
N:切断、関節癒合
感覚
知覚または痛みに対する表情の変化などで評価をします。意識障害や失語症の場合は、痛み刺激の逃避反応により検査します。
0点:障害なし
1点:軽度から中等度
2点:重度から完全
言語(失語)
絵カード・呼称カード・文章カードを用いてそれぞれ言語にて答えてもらいます。
0点:失語なし
1点:軽度から中等度
2点:重度の失語
3点:無言、全失語
構音障害
失語で用いたカードや単語カードの音読により評価します。
0点:正常
1点:軽度から中等度
2点:重度から完全
N:挿管または身体的障壁
消去現象と注意障害(無視)
視覚・触覚・聴覚・視空間・自己身体不注意などで評価します。
0点:異常なし
1点:視覚、触覚、視空間、または自己身体に対する不注意が認められる。あるいは1つの感覚様式で2点同時刺激に対する消去現象
2点:重度の半側不注意あるいは2つ以上の感覚症式に対する消去現象。自分の手を認識できない、あるいは空間の一側しか注意を向けない。
NHISSの算出方法
NHISSでは、各項目で患者さんを評価し、患者さんの状態に最も適した点数を項目ごとにつけていきます。合計点は0〜45点の範囲で、0点は正常、45点は最も重症度が高いと判定されます。
重症度の判定は以下の通りです。
●最重度>25
●重度:15~24
●軽度~中程度の重度:5~14
●軽度:1~5
NHISS評価における注意点
NHISS評価を行う際は、必ずリストにある項目の順番に沿って実施しなければなりません。
順番を入れ替えたり、評点を変更したりしないようにしましょう。
また指示がある以外、患者さんを誘導して特別な努力を課さないように注意しなければいけません。あくまで患者さんが持っている能力で、判定をすることが重要です。
NHISS以外の脳卒中評価スケール
NHISS以外の脳卒中評価スケールとして、JCS(ジャパン・コーマ・スケール;Japan Coma Scale)やGCS(グラスゴー・コーマ・スケール;Glasgow Coma Scale)があります。
JCSは刺激に対する覚醒の有無・程度などによって評価する方法で、主に日本で用いられています。簡便に意識レベルの評価を実施できるため、間脳・中脳・延髄への侵襲の目安として判定しやすく、緊急時に用いられます。
GCSは開眼・言語・運動の3つの要素を用いている国際的に広く用いられている意識レベル評価法です。
どちらも意識障害の評価に重きを置いているのが特徴であり、麻痺や失調、失語などの判定はできませんが、患者さんの意識レベルが低下している際に広く用いられています。
脳血管障害のリハビリに携わるならNHISSをしっかりと覚えよう
病院で働くセラピストなら、脳血管障害のリハビリでNHISSを活用する機会は多いでしょう。NHISSはセラピストだけでなく、医師や看護師などの医療職も用いる、共通の評価スケールです。多職種との連携を図る際にも重要になるため、今後、脳血管障害のリハビリに携わるならNHISSの評価方法や注意点をしっかりと押さえながら、実施しましょう。
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rana(理学療法士)
総合病院やクリニックを中心に患者さんのリハビリに携わる。現在は整形外科に加え、訪問看護ステーションでも勤務。 腰痛や肩痛、歩行障害などを有する患者さんのリハビリに日々奮闘中。 業務をこなす傍らライターとしても活動し、健康、医療分野を中心に執筆実績多数。
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